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マイクロソフトがマルチクラウドへ?「Azure」が導くITインフラの新たな次元
「Azureを活用したハイブリッド・マルチクラウドの全貌」セミナー(1)米国で年に一度開催されるテクニカルカンファレンス「Microsoft Ignite」。今年11月のカンファレンスでは、マイクロソフト製品の172種に及ぶ新機能が発表された。と同時にマイクロソフトではマルチクラウド戦略を発表している。登壇した日本マイクロソフトの高添 修氏は、今世界がクラウドを求め、さらにマルチクラウドとエッジデバイスがキーとなることを語った。
日本マイクロソフト株式会社
パートナー技術統括本部
クラウド ソリューション アーキテクト(Hybrid)
高添 修 氏
ビジネス変革を目指したデジタル技術の活用が進む中、企業の間でクラウドインフラの採用が進んでいる。ただ、IoTの仕組みなどで収集した膨大なデータをクラウド側のAIで処理するといった仕組みでは、どうしてもレイテンシにかかわる課題が生じる。また、企業が重要資産として保持するデータをクラウドで処理したり、蓄積するという運用には、データ主権の問題などもついてまわる。
「そこで必要とされるのが、オンプレミス側にエッジコンピューティングを採用したハイブリッドなシステム環境です」と高添氏は語る。例えば、即座にレスポンスが求められる処理や、社外に出したくないデータの処理を、データが発生する場所の近く、つまりエッジ側で実施する運用が求められているのだ。
エッジの重要性とマルチクラウドへの取り組み
マイクロソフトでは、3つのエッジプラットフォームを提供。その1つが「Azure Stack Edge」だ。これは、企業の工場や店舗などビジネスの現場で収集されたデータを「Microsoft Azure」のパブリッククラウド上に転送する機能を備えたデバイスで、サービス型のサブスクリプションモデルにより提供される。
「Azure Stack Edgeは、10コアのIntel XeonのCPUを2個、メモリ128GB、NVMe(Non-Volatile Memory Express)の高速フラッシュストレージ12TB、そして25Gbpsのネットワークインターフェース4つ、さらにFPGAなどを搭載。その活用により、エッジ側でAIやディープラーニングなどの技術を使ってデータの加工やフィルタリングの処理を高速に行うといったこともできます」(高添氏)。
2つ目は、「Azure Stack Hub」。こちらは、ユーザー側のデータセンターにて、Azureと同様のポータルやAPIを備えたプライベートクラウド利用できるアプライアンスのようなもの。Microsoft Azureの管理からは完全に独立したディスコネクテッドな形でも管理・運用できることが特徴となる。
「Azure Stack HubはHCI(Hyper Converged Infrastructure)やSDN(Software-Defined Networking)をベースに構築され、導入するとすぐにAzureと一貫性のあるIaaS環境が手に入ります。PaaSの一部とKubernetes環境の展開も容易で、Azure IoT Edgeなどの展開も可能なので、お客様が自力で開発するのが難しいハイレベルのプライベートクラウド環境を実現できます」と高添氏は強調した。
3つ目は、「Azure Stack HCI」になる。これは文字通り、仮想化マシンの稼働を支えるHCIの環境を提供するもの。「クラウドベンダーであるマイクロソフトにとって、仮想化基盤の刷新で得られる価値向上は限定的に見えています。だからこそ、Azure Stack HCIにおいては、特に低コスト、高速性、ハイブリッドといった独自の価値を提供していこうとしています」と言う。Azure Stack HCIによって企業は、既存の仮想環境と比較し、ライセンスコストを劇的に低減できるほか、1380万IOPSという現在世界最高レベルの圧倒的性能を享受することができ、余った予算がクラウドへのチャレンジを支援する。
以上が、今日要請の高まるハイブリッドクラウド環境を支えるマイクロソフトのエッジプラットフォームだ。さらに同社では、オンプレミス、エッジ、そしてMicrosoft Azure以外のパブリッククラウドを含めた様々なプラットフォームの乱立を見据え、マルチクラウドを含む、「Hybrid 2.0」というべき世界の実現にも動き出している。それが「Azure Arc」の発表である。
「『Azure』という言葉が、単にパブリッククラウドサービスを指すものではなく、そうした新たな世界を語るためのキーワードとなり始めていること」を高添氏はセミナーの終わりに強調した。