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AIを活用した故障予測・異常検知とは?手法や成功に導くポイントを紹介

「設備や機器が故障する前に、その予兆を知りたい」というニーズはさまざまなシーンで見られます。これまでは、ベテランの経験や勘に依存しがちでしたが、現在ではAIによる故障予測・異常検知が注目されています。センサーなどさまざまなデータから故障の予兆を検知する方法で、AIを活用することで客観的なデータをもとに精度の高い故障予測・異常検知を実現すると期待されています。「故障予測は気になるけれど、どうやって予測できるのか」「具体的にどのように導入するのか、課題はあるのか」などの疑問を解消しながら、基本から詳しく解説します。
故障予測・異常検知とは
「故障予測(異常検知)」は、設備や機器などの異常の予兆をとらえ、故障する前に対処できるようにすることです。異常が発生してからではなく、前もって予兆を検知することで、「製造ラインが停止する時間を最小限に抑える」「機器を使えない時間を減少させる」などが実現できます。
経験のあるベテラン社員の「なんとなくおかしい」「そろそろ故障しそうだ」と感じたタイミングでしか故障の予兆を気づけない時もあります。しかし、この方法では判断基準が不明確で主観的であり、ノウハウを引き継ぐとしても一筋縄ではいきません。こういった問題の解決策として、データ分析を用いた故障予測・異常検知を行う方法が登場しました。属人性を排除し、一定の基準に基づいて異常を予測できようになり、活用が進んでいます。
故障予測・異常検知の手法
故障予測・異常検知で多く用いられるデータ分析の手法として、下記の3つがよく使われています。
外れ値検出:ほかのデータから著しく乖離する“外れ値”を検出する
変化点検出:時系列データにおいて、急激にパターンが変化するタイミングを検出する
異常部位検出:時系列データから外れ値を検出する
いずれも「いつもと違うデータ」を検出する手法ですが、どの状態が「正常」で、どうなったら「外れた・変化した」とするのかなどを人が分析するとなると限界があります。そこでAIデータ分析が活用されるようになりました。
AIによる故障予測・異常検知
AIでは、さまざまなデータを分析し、故障につながるパターンなどを導き出し、それをもとに故障予測・異常検知を行います。AIを活用するには大量のデータが必要ですが、IoTが普及し、データを詳細に取得することが可能になりました。温度、湿度、振動、音などさまざまなセンサーから収集される膨大なデータを分析することで、より高精度な故障予測・異常検知を実現できるようになりました。
「教師なし学習」を用いた故障予測の主な手法
AIの機械学習の手法 は「教師あり学習」「教師なし学習」の2つがあります。教師あり学習では、事前に「正解」となる教師データを用意し、それを学習することで予測を行います。故障予測の場合は、「正常時」「故障時」のデータをそれぞれ正解データとして用意する必要がありますが、「故障発生の頻度が低く、AIが学習できるほど故障時のデータを用意できない」というケースも少なくありません。そういった場合には、教師データを用意しない「教師なし学習」を利用します。教師なし学習の手法が3つほどご紹介します。
SVDD(Support Vector Data Description)
正常なデータだけを用いてモデルを作成する「1クラス分類」を行う手法です。通常は「正常」と「異常」の2つをそれぞれ定義しますが、SVDDでは2つのデータ間の類似度を表すカーネル関数により、「正常な状態」の領域のみを定義し、その領域から外れたものを異常値とします。異常データ(故障時のデータ)が少ない場合でも活用できることが特長です。
PCA(Principal Component Analysis)
PCAも、正常なデータの領域を決めた上で、そこから外れたデータを異常値として検出しますが、こちらは「主成分分析」というデータ解析手法で、様々な要素を持つデータがどのような特長を持つのか「主成分」を作成して、データの全体像を把握し、「正常なデータの領域」を導きます。こちらも異常データが少なくても故障予測を実現できることが特長ではありますが、元のデータから情報量を減らして判断していることを踏まえて活用する必要があります。
RPCA(Robust Principal Component Analysis)
PCA同様、「主成分分析」の手法の1つであり、PCAの統計的基準に修正を加えたものです。ほかと大きく数値が乖離するデータがあっても対応でき、PCAよりも異常値の影響を受けにくいことが特長です。異常検知のほか画像処理などにも広く利用されます。
教師なし学習における課題
異常値を検知したい場合は、どのようなデータが異常値であるかのラベル付けが難しいため、一般的に教師なし学習の手法が用いられます。一方で上述の3つの手法は「何を根拠に故障があると予測しているのかが不透明」という課題も存在します。AIによる故障予測・異常検知の信頼性を確保するために、実際に故障を起こして検証する方法もありますが、「故意に故障を引き起こすとなるとコストがかかる」という高いハードルも考えられます。また、これらの手法では大量のセンサーデータが必要とされ、すでに多くのデータを取得しているプラントや工場などに適していると言えます。
「仮説探索型分析」を実現するAI自動化ソリューション「dotData」
新たな方法としてご紹介したいのが、AI自動化ソリューション「dotData」です。dotDataは教師あり学習を行うツールですが、一般的な教師あり学習で必要な「特徴量」を自動で生成することが特長です。特徴量とは、膨大なデータから影響を与えそうな「要因」をまとめて整理したもののことです。従来、人が考えた仮説をもとに考案する必要があり、故障予測の場合、この仮説を立てることが難しいプロセスでした。
dotDataでは、対象のデータから特徴量を自動で抽出します。さらに、抽出した特徴量は、人が理解しやすい形で提示されるため、「なぜそのデータが重要なのか」といった根拠も明確です。この特徴量を活用して、仮説を探しながら故障予測・異常検知を行う「仮説探索型」の分析が可能になります。実業務に適用しやすく、これまでの手法では故障予測・異常検知が難しいとされていたケースでも活用できると期待されます。
<事例>JALエンジニアリング
航空機の整備などを手がけるJALエンジニアリングでは、故障予測に取り組む際にdotDataを活用しています。仮説を立てるのが難しいトラブルについて、dotDataを用いて仮説探索型の分析を実施しました。整備士の知見に基づいて生成された特徴量と組み合わせて活用し、より多くの予兆を検知することができました。

故障予測の導入の流れとポイント
故障予測を行う際も、一般的なAIと同様に、「要件整理」「PoC」「実装」「運用」といったプロセスを順次進めます。また、運用開始後も、精度などを定期的に確認し、必要に応じて再学習などのメンテナンスを行い、改善を継続的に行う点も同じです。
故障予測において重要なポイントになるのは、最初に「現状どのようなデータが取得できているのか」と「どのように活用したいのか(目的)」を明確にすることです。データの取得状況はもちろん、「原因が不明確でも、とにかく故障を予測できれば、あとは現場社員が詳細を確認するので大丈夫」という運用なのか、「なぜ故障するのかが明確でなければ、対処ができない」のかによって取るべき手法は異なります。
そのなかで、dotDataは教師有り学習で故障予測を行う場合にお勧めのツールです。既存のデータを分析しながら、新たに取得するデータを検討するなどの試行錯誤も容易です。AIによる故障予測というと難しいと思われるかもしれませんが、dotDataを使用すればそのハードルは大幅に低減します。dotDataを活用し、「まず試してみる」ことが有効なアプローチと言えるでしょう。
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