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「データサイエンスの民主化」を目指すために、企業がすべきこと

様々な業種・企業においてデータの利活用やDXの必要性が叫ばれているなか、データサイエンスの専門知識を持つ「データサイエンティスト」の需要は高まる一方で、人材確保に悩む企業は少なくありません。この解決策として、「データサイエンスの民主化」というキーワードが注目されています。その背景と、解決策の鍵を握る「市民データサイエンティスト」について、さらにデータサイエンスの民主化に取り組む事例まで、詳しく解説します。
データサイエンスの民主化とは
企業でのAI・機械学習の活用が進んでいると言われますが、一般的にこれらを活用するにはデータサイエンスの専門知識が必要不可欠とされていました。しかしながら、データ活用人材の需要に対して供給は依然として乏しく、データ活用人材と分析結果を実際に活用するビジネス現場部門とのギャップが大きな課題になるケースもありました。
そのなかで登場したのが、専門知識がなくても機械学習を活用できるツールの存在です。機械学習のなかでも特に専門知識が必要なプロセスを自動化するツールの登場により、現場部門の担当者でも、機械学習を用いたデータの利活用ができるようになりました。このように、専門知識がなくても、誰でもデータサイエンスを活用し、取り組める体制を「データサイエンスの民主化」と言います。
もう1つ鍵となるのが「データの民主化」です。データサイエンスに欠かせないデータを蓄積し、分析環境を整備することで、だれでもデータを活用できる環境を構築する「データの民主化」が進められてきました。
機械学習のプロセスを自動化するツールとデータの民主化という2つの要素により、専門知識をもたない事業部門の社員でもデータを活用し、ビジネス成果へとつなげられるデータサイエンスの民主化が大きく進みはじめているのです。
市民データサイエンティストとは?
データサイエンスの民主化において、重要な役割を担うのが「市民データサイエンティスト」です。統計学や分析手法などデータサイエンスの専門知識を持たないものの、適切にデータを扱える人材を指します。現場部門の担当者がデータ活用に必要となる知識やツールの利用方法などを身につけ、市民データサイエンティストとしての役割を担うケースが一般的です。市民データサイエンティストの強みとしては、比較的短期間で育成でき、人数を増やしやすいこと、また現場業務に精通していることなどが挙げられます。
市民データサイエンティストが重要な理由
データサイエンスによるデータ活用を目指す先にあるのが「DX」です。しかしながら、いまだDX推進時の課題として人材不足が最大の課題として挙げられています。
特に専門知識を持つデータサイエンティストを社内で育成するには、相当な時間・コストがかかります。また、獲得競争がし烈さを極めるなかで、外部から採用するのも難しい上、データサイエンスの知識さえあればよいかというと、そうではありません。ビジネス成果につなげるには、自社のビジネスや現場の状況を理解している必要があり、データサイエンティストが精度の高い分析モデルを作ったものの、現場のニーズとあわず実用化できなかった、などのケースも決して少なくありません。
どのデータが関連しているのかなどデータの背景とともに、現場でのニーズも深く理解する市民データサイエンティストは、データサイエンスの領域と現場業務をつなぐ重要な存在と言えるのです。
市民データサイエンティスト活用のメリット
データサイエンス民主化の目的である「データサイエンスによりビジネス成果を出すこと」への近道となるのが、市民データサイエンティストと言ってよいでしょう。
市民データサイエンティストの登場により、各事業部でAI・機械学習ツールを活用しながらデータの整形や分析をおこなうことが可能になり、高度なスキルと専門知識を持つデータサイエンティストなどの限られたデータ活用人材を創造的で変革的な価値創造に集中させることができます。
データサイエンティストはデータの専門家ですが、現場の業務に精通しているわけではないため、事業部門との間にギャップが生じ、導き出した仮説が現場業務の課題解決につながらないこともあります。
これに対し、市民データサイエンティストは事業部門のビジネスに携わり業務知識を持っているため、このギャップを埋めながらデータ活用の推進が可能となることが期待されます。
データサイエンスの民主化の進め方
「データサイエンスの民主化」といっても、目指すべきレベルは企業によって異なります。市民データサイエンティストとしてデータ分析を担う人材、データに関する一定のリテラシーを持ち、現場業務に活かせる人材など、まずは社内にどのレベルの人材がいるのか、どのレベルの人材が必要かなどを企業の戦略に沿って明確にした上で、教育・研修が必要なスキルを定義してはじめて、行うべき教育プログラムが見えてきます。
データサイエンスの民主化は目的ではなく、あくまでも手段の1つにすぎません。経営方針として目指す姿をきちんと定めた上で、自社にあわせた形で進めることがポイントとなるのです。

市民データサイエンティストの育成事例
ここで、いくつか市民データサイエンティストの育成に取り組んでいる事例を業界します。
三菱電機ビルソリューションズ株式会社
データの積極的な利活用を見据えて、基幹システムの全面リニューアルとともに、データ利活用スキルの習得、データ利活用文化醸成への取り組みを進めた三菱電機ビルソリューションズ。これまで各部門で蓄積してきた膨大なデータは、各業務のプロフェッショナルである現場を中心に活用することで、データから継続的に付加価値を生み出せると考えました。
そこで、NECの「DX人材育成サービス」を利用し、総務・人事・建物管理など8チームが参加。OJTで実務課題を解決する演習を中心に進め、例えば空調の設定温度と室温の相関を分析し、より効果的な建物管理が行えることを目指す取り組みなどを行っています。なかにはすでに業務への適用が見えているものもあるなど、データ利活用が成果に結びつきつつあります。
センコーグループホールディングス
物流の課題を解決し、新たな価値を創出するには、データ活用、そしてデジタル人材が鍵を握ると考えていたセンコーグループホールディングス。データ人材の育成にはこれまでも取り組んでいましたが、社内の多様なデータ活用ニーズに対応するのは難しく、データサイエンスの高度な専門性を持つ人材育成には非常に長い時間がかかっていました。そこで、スペシャリストではない現場の従業員が市民データサイエンティストとしてデータ活用できる環境づくりと人材育成のため、NECの「DX人材育成サービス」を採用しました。
約20人が参加し、配車最適化、需要予測、物量予測、シフト最適化など実務に基づいた課題に取り組みました。「データを使ってどんな打ち手が可能になるか」「どう精度を改善すればよいのか」を学び、社内にデータ活用文化を定着させる重要な一歩として大きな手ごたえを感じています。
NECのDX人材育成サービス
「データサイエンスの民主化」に取り組む企業は増えており、今後ますます重要になることは間違いないでしょう。
NECの「DX人材育成サービス」は、まさにこの取り組みを担う市民データサイエンティスト育成を支援するものです。「業務部門の担当者が、ビジネスに活用できるデータ分析能力を獲得すること」を主軸に据え、データサイエンスの専門知識が必要な領域をカバーするツールである「dotData」と、実際にデータ分析を行う際に必要となる知識を身につける研修で構成され、短期間での人材育成を実現します。

また、NECのDX人材育成サービスは実際のビジネス課題に対してOJTを行うので、ビジネス成果につながりやすく、企業のデータサイエンス民主化を後押しします。