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カーボンナノチューブ
NECの最先端技術2017年9月1日(改 2024年9月24日)
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NECの飯島特別主席研究員(当時:主席研究員)が1991年に発見した“カーボンナノチューブ”は、今世紀、開花が期待されるナノテクノロジーを支えるキー材料の一つといわれており、全世界でこの材料を使った研究開発、製品開発が積極的に進められています。NECではカーボンナノチューブを使った次世代トランジスタの研究開発を行っています。
カーボンナノチューブとは?
“カーボンナノチューブ”とは、「カーボン(炭素)」でできた、直径が「ナノ」メートル (1ナノメートルは、10億分の1メートル、人間の髪の毛の1万分の1くらい)の「チューブ(筒)」状の物質です。網目が六角形の金網を丸めたように、六角形の頂点に炭素原子が位置したグラファイト層が、継目なく繋がり、その六角形がらせん状に並ぶ場合もあり、ちょうど、日本の伝統工芸品である竹篭の形状に似ています。
固体状炭素物質には、「ダイヤモンド構造」、「グラファイト構造」、炭のような「非結晶質構造」のもの、そして、1985年に発見された、サッカーボールのように炭素原子60個が結合したC60に代表される一連のフラーレン分子の4種類が従来知られていました。したがって、カーボンナノチューブは、5番目の固体状炭素物質ということになります。
1991年に見つけたカーボンナノチューブは、多層でしたが、その後、1993年には、太さ1ナノメートル、長さ数10ナノメートルの単層カーボンナノチューブを発見しました。(IBMでもほぼ同時期に別々に発見されました。) その後、私たちのグループは、計算物理による物性研究や製造方法の研究を進め、カーボンナノチュ-ブ研究のさきがけとなりました。1996年には、NEC北米研究所のエブソンらが、カーボンナノチューブ一本の電気的性質の測定に成功しています。
また、1998年には、科学技術振興事業団(JST)・国際共同研究事業“ナノチューブ状物質プロジェクト”で、後にカーボンナノホーンと命名した、チューブの先が閉じた単層のグラファイトを発見しました。まるで、牛の角(つの)のような単層グラファイトが、いが栗のように集まっている物質です。カーボンナノホーンは、その形態から、カーボンナノホーン集合体とも言われています。さらに、2015年には飯島の後輩である研究員が繊維状カーボンナノホーンの集合体である「カーボンナノブラシ」を発見しました。
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カーボンナノチューブには、長さ、太さ、らせんの状態、層の数などによって、多様な構造が存在し、同じグラファイトシートからできていても、これらのバリエーションに応じて、電気的性質が金属にも、また、半導体にもなります。
カーボンナノチューブがもたらす未来とは?夢とは?
今では、カーボンナノチューブの電気的性質は、理論的にも実験的にも明らかになっています。
また、製造方法の研究も進んでいますが、これまで、六員環を基本として形成されているカーボンナノチューブは、その生成過程で五員環や七員環ができてしまい、チューブの先が閉じたり、広がったりするため、長いチューブを作ることは難しいと言われていました。しかしながら、2003年4月に、米国の研究者が、「長さ6ミリのカーボンナノチューブを生成した」と発表するなど、長いチューブを生成する技術も進歩しています。NECでも、カーボンナノホーンの大量合成に目処をつけて、その多様な応用の可能性を追及しています。
しかし、今なお課題はあります。例えば、電気特性に影響を与えるチューブの螺旋の巻き方を自由に制御することはまだできていません。また、水素吸蔵材料に使えないだろうかという話もありましたが、メタンはよく吸うものの、水素は難しいことがわかってきています。
私たちはカーボンナノチューブ・トランジスタの他に、半導体型のカーボンナノチューブを高純度に抽出する技術を開発し、赤外線の検出部に適用した高感度非冷却型赤外線イメージセンサの開発に世界で初めて成功しました。2026年の実用化を目指して取り組んでいます。
世界では、カーボンナノチューブの大量合成法の確立とともに、カーボンナノチューブの半導体型と金属型を高精度に分離する技術や、分散具合や配向状態を制御する技術といった産業拡大に必要な技術の開発が継続して加速しており、電子部品、電子機器、電池部材及び機能性複合材に加え、さらなる適用拡大が期待されています。
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