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カーボンナノチューブの歴史

NECの最先端技術

2024年9月24日

カーボンナノチューブの発見

きっかけは、1971年、飯島が米国アリゾナ州立大学で高分解能電子顕微鏡を世界に先駆けて開発したことに始まります。1970年代はいろいろなタイプの炭素物質を調べる機会がありました。そのとき見た、球状グラファイト*については、1980年、炭素物質に関する論文に発表しました。グラファイトの中に、タマネギのような形をした、直径0.8~1ナノメートルほどの粒があることに気づき、「タマネギのような球形グラファイトを説明するには、炭素六員環**のほかに、五員環が12個必要」とまとめたのですが、このタマネギ構造は、1985年に、クロトー、スモーリー、カールらが発見するフラーレン(C60)だったのです。あのときは、その事実を見過ごしてしまいました。
  • *
    グラファイトとは、炭素原子が六角形に並んだ平面結晶層で、鉛筆の芯や繊維としてゴルフクラブやテニスラケットに使われています。
  • **
    六員環とは、原子が正六角形の各頂点に並んだ状態です。

電子顕微鏡に向かう飯島
電子顕微鏡に向かう飯島

そんな経緯もあったので、1985年にC60の発見が伝えられたとき、「あのタマネギ構造だったのか!」と残念に思ったと同時に、「C60のようにきれいな対称性を持つ分子構造がどのように作られるのか」に新たな興味が生まれました。
1987年にNECの基礎研究所に移ってからは、5年前の研究を再確認するために、もう一度そのタマネギを調べてみようと考えました。

ところが、タマネギ構造の研究を始めて間もなく飯島の目をひきつけたのは、タマネギ構造のC60ではなく、そのそばに写っていた針状の物質でした。1990年に発表されたC60の大量合成法では、2本の炭素棒電極間の放電(アーク放電)でC60が発生するのですが、飯島は陰極の炭素棒の上に堆積したススの中に、それまで見たことのない針状の物質を見つけたのです。その針状の物質こそが、後に飯島が”カーボンナノチューブ”と命名した物質でした。

C60電子顕微鏡写真とそのタマネギの構造モデルzoom拡大する
C60電子顕微鏡写真とそのタマネギの構造モデル

当時、この発見は”偶然の産物”と言われたりもしましたが、偶然というよりむしろ必然であると思います。針状の物質を見てピンと来たのは、飯島の博士論文のテーマの一部が「銀の針状結晶」であったこと、また、当時同じ研究室の助教授が電子顕微鏡で研究していたアスベストが、チューブ型結晶構造であることを知っていたことが発想につながったのだと思います。すなわち、あの発見は単なる偶然ではなく、「セレンディピティ(serendipity)」の力だったのです。

「セレンディピティ(serendipity)」とは、「うまくものを見つけ出す能力」、「掘り出し上手」といった意味をもちます。飯島が長年培ってきた電子顕微鏡の技術や、炭素物質を見続けてきた経験、米国では鉱物学についても関わっていたこと、そして何より、「まだ構造が明らかになっていない未知の材料について追究したい」という強い思いから、この能力が自然に身についたのだと思っています。
カーボンナノチューブは、一連の真理追究の過程で見つけたひとつなのです。

命名秘話

発見後、しばらくは、生物の中の微小管をさすことばである「マイクロチューブル」という言葉を使い、Natureにも2回、“micro- tubules”、 “ microtubule”という表現で掲載されたのですが、当時基礎研究所所長だった覧具博義氏(現、東京農工大学教授)から、「世界的に注目される名 前をつけておいたほうがいいのではないか?命名は大切だよ。」と言われ、「それもそうだ」といきついた名前が「カーボンナノチューブ」です。
「フラーレン」は人の名前をとってつけられた名前ですが、「カーボンナノチューブ」の命名にあたっては、いろいろな候補名がでたものです。 最初の論文で書いた「マイクロチューブル」以外にも、タンパクの名前をとった「チューブリン」、「NECチューブ」、「飯島チューブ」などなどです。 「ナノのサイズなのに“マイクロ”とはおかしい」という意見があり、「マイクロチューブル」はやめ、「飯島チューブ」というのも、恥ずかしいのでやめました。
「カーボン」の一種で、「ナノ」サイズ。そして「チューブ状」であることで、“カーボン・ナノ・チューブ”に落ち着いたのです。

セレンディピティの語源

セイロンの王子たちが偶然にも予期せぬ宝を見つける、というストーリーの「セレンティップの三人の王子(Three Princes of Serendip)」という古代スリランカの寓話を読んだ、イギリスのホーレス・ウォルポール(Horace Walpole、1717-1797)が、1754年に友人向けの手紙に、思わぬ掘り出し物を指す言葉として用いた造語といわれています。

カーボンナノチューブの応用例

ユニークな電気的性質、ナノメートルスケールというレベルの微細構造をもつこと、軽量で、機械的強度も極めて高いこと(鉄より高い引っ張り強度をもつ)、酸素がなければ2000℃という超高温にも耐えうること、電圧をかけると効率よく電子を放出することなど優れた性質があるので、カーボンナノチューブは将来の超微細デバイスを構成する材料としての期待が寄せられています。今日では、私たちが取り組んでいるトランジスタや燃料電池に加えて、大型テレビ画面、超高感度分子センサー、高分解能STMプローブ、スーパーキャパシタ、透明導電膜、薬物搬送、触媒、複合材料として、実用を目指し、世界中で研究が盛んに行われています。

飯島のグループでは、1999年、JSTと共同で、固体化学反応を利用して異物質材料にカーボンナノチューブを接合することに成功し、カーボンナノチューブをナノメートルレベルの電子デバイスに応用する道を拓いています。 2001年には、JSTと財団法人産業創造研究所とともに、カーボンナノチューブを電極に用いた携帯機器用の小型燃料電池の開発に世界で初めて成功しました。また、2002年には、集積回路にも適用できる高性能カーボンナノチューブ・トランジスタの開発にも成功し、2003年9月には、シリコンMOSトランジスタの10倍以上の相互コンダクタンス(高速動作の可能性を示す指標)のカーボンナノチューブ・トランジスタを試作しました。

2004年9月には、カーボンナノチューブの位置と直径をナノメートルレベルで制御して成長させる技術を開発しました。これまで位置と直径をともに制御することが困難でしたが、今回の技術を用いると、意図した場所に、デバイス特性の揃ったトランジスタを形成できるようになります。2008年2月には、塗布プロセスを用いたカーボンナノチューブトランジスタを作製。2009年には、カーボンナノチューブトランジスタの全ての構成要素を印刷により形成する技術を開発したことを発表しました。そして、2013年には、印刷CNTトランジスタで世界最高の動作速度を実証したことを発表しました。

今後引き続き、カーボンナノチューブの高品質化、インク技術、印刷回路製造プロセス技術を高度化させることで、2015年頃にカーボンナノチューブ・トランジスタを実用化したいと考えています。

なお、2005年には、JST、財団法人癌研究会癌研究所との共同研究により、バイオテクノロジー分野において、カーボンナノホーンの薬物搬送担体への応用の可能性を実証し、現在、独立行政法人産業技術総合研究所にて実用化に向けた研究が進められています。

カーボンナノチューブ発見から応用への歩み

1991年6月25日

多様ならせん構造をもつカーボンナノチューブの発見

1991年11月
Nature, Vol.354 No.6348 p.56
“Helical microtubules of graphitic carbon”
1993年1月
カーボンナノチューブに鉛の化合物を入れることに成功
Nature, Vol.361 No.6410 p.28
"Capillarity-induced filling of carbon nanotubes"
1993年6月
単層カーボンナノチューブの発見
Nature, Vol.363 No.6430 p.17
"Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter"
1996年7月

個別カーボンナノチューブの導電性測定(NECとNEC北米研究所)
Nature, Vol.382 No.6586 p.54
“Electrical conductivity of individual carbon nanotubes”

1998年3月

カーボンナノホーンの発見
(JST*・国際共同研究事業“ナノチューブ状物質プロジェクト”)
*JST:科学技術振興事業団(現、独立行政法人科学技術振興機構)

1999年8月
Chem. Phys. Lett., 309, p.165
"Nano-aggregates of single-walled graphitic carbon nano-horns"
1999年9月
カーボンナノチューブの電子デバイス応用技術の開発
固体化学反応を利用して、異物質材料にカーボンナノチューブを接合(NECとJST)
2001年8月
世界初カーボンナノチューブを電極に用いた携帯機器用の小型燃料電池の開発
(NEC、JST、(財)産業創造研究所)
2001年9月
カーボンナノチューブ発見10周年記念シンポジウム開催
2002年11月
LSI化が可能なカーボンナノチューブ・トランジスタの動作に成功
2003年2月
燃料電池によるノートパソコン動作(“nano tech 2003”で展示)
2003年6月
燃料電池内蔵型ノートパソコンの開発
2003年9月
発電効率を従来比で2割向上させた燃料電池搭載ノートPCを試作
(“WPC EXPO 2003”で展示)
超高速動作を可能とするカーボンナノチューブ・トランジスタの開発
2004年9月
カーボンナノチューブの位置と直径を制御・成長させる技術の開発
2004年10月
燃料電池一体型ノートパソコンの開発(“WPC EXPO 2004”で展示)
2005年11月
カーボンナノホーン薬物搬送システムの可能性実証
2008年2月
塗布プロセスを用いたカーボンナノチューブ・トランジスタの作製に成功
2009年2月
全ての構成要素を印刷で形成できるカーボンナノチューブ・トランジスタの作製に成功
2012年4月
出力電流の均一性を高めたCNTトランジスタをプラスチックフィルム上に印刷形成する技術を開発
2013年9月
印刷CNTトランジスタで世界最高の動作速度を実証
2016年6月
繊維状カーボンナノホーン集合体「カーボンナノブラシ」の発見
Advanced materials 33/2016
“Preparation and Characterization of Newly Discovered Fibrous Aggregates of Single-Walled Carbon Nanohorns“
2018年2月
印刷エレクトロニクスに最適な半導体型CNTの高純度製造技術を開発

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