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顔と虹彩をワンアクションで認証できる高精度な生体認証技術

NECの最先端技術

2020年5月14日

顔と虹彩をワンアクションで認証できる高精度な生体認証技術

生体認証技術で世界をリードするNECでは、顔認証と虹彩認証をワンアクションで行える独自認証端末のプロトタイプを開発しました。認証完了までに必要な時間はわずか2秒。高精度な認証をスピーディに実現することができます。このデバイスと技術の詳細について、研究者に話を聞きました。

より大規模な展開のために必要となる高精度な生体認証

バイオメトリクス研究所 プリンシパルクリエーター 大網 亮磨
バイオメトリクス研究所
プリンシパルクリエーター
大網 亮磨

― 顔認証と虹彩認証の二つを同時に行う目的やメリットは何でしょうか?

まず前提として、NECの顔認証や虹彩認証は単独の認証技術としても、すでに非常に高い精度を有しています。米国政府機関による評価で世界No.1を獲得(※)するなど、99%を超える高い精度を実現しています。しかし、それでもなお顔と虹彩の認証を同時に行うことには大きな意義があります。
1つは、より多様なシーンやニーズに対応できるようになるということです。たとえば顔認証単独では、夜間や暗がりでの認証の他、医療現場や食品工場などで顔の大半を覆っているケースでの認証は難しくなってしまいます。また、さまざまな理由から顔を露出することに心理的な抵抗がある方もいらっしゃいます。そのようなケースでは顔認証だけで認証サービスを提供するのは難しい場合もあります。一方、虹彩認証単独ではメガネをかけている方の認証は難しくなりますし、目の不自由な方には認証サービスをご提供することができない場合もあります。こうしたさまざまなケースであっても、顔認証と虹彩認証を両方用いれば、より確実に認証サービスを提供できるようになります。多様なシーンで活用できるユニバーサルな認証を実現するためにも、2つの認証を組み合わせることには大きなメリットがあるのです。
もう1つのメリットは、精度です。もちろん、先ほども述べたように顔認証も虹彩認証もすでに十分な精度を実現しています。しかし、利用者の規模が数千万や億単位となった場合はどうでしょうか。わずか0.01%のエラー率であっても、誤認証してしまう人が発生します。2つの認証を組み合わせることは、例えるなら家の玄関の鍵を2つにしたり、パスワードの文字列を二倍の長さにしたりするようなものです。国や大規模展開する企業などでより安心して活用していただくためには、本技術のようにさらに精度を上げた認証サービスの存在が重要になると考えています。本技術を使えば、理論上は数億人規模でも問題なく運用することが可能になります。NECでは、すでにインドなどで顔認証・虹彩認証・指紋認証を組み合わせた国民IDシステムを納入してきました。今回、顔と虹彩という相性の良い二つの認証をワンアクションで実現できるような認証端末設計できたことで、さらに新しい価値や使い方を提供できるようになったと考えています。

姿勢を変えずに、カメラの前に立つだけでスピーディに認証可能

バイオメトリクス研究所 主任研究員 大網 亮磨

― どのような技術が使われているのでしょうか?

世界No.1の精度の顔認証エンジンや虹彩認証エンジンはそのまま活用しています。そのため、精度については非常に高いものが実現可能です。本認証装置の開発時に課題となったのは、むしろこれらのエンジンの性能が十分に発揮できる画像をいかに適切かつスピーディに撮影できるかということでした。
顔認証では広角レンズを搭載したカメラで比較的簡単に利用者の顔をとらえることができるのですが、難しいのは虹彩です。虹彩認証を行うためには、両目部分を高解像度で撮像しなければなりません。正確に認証を行うためにはそれだけの情報量が必要となるからです。そのためにも専用のカメラが必要となるのですが、望遠でとらえるため画角もピントが合う範囲も非常に狭くなります。よって、虹彩をいかに自然に撮像できるかが今回の認証端末の開発プロジェクトにおける最大の技術課題となりました。
利用者に背を屈めてもらい、認証端末に近づけたり遠ざかったりしてもらえれば簡単なのですが、それでは利用者に負担をかけることになりますし、時間もかかってしまいます。たとえば決済のときに、そのような動作が必要になるのでは、かえって面倒だと感じてしまうのではないでしょうか?本当の意味で生体認証技術を用いた認証サービスの利便性を感じていただくには、あくまでも自然な動作のなかで、無意識のうちに認証が完了していく必要があるはずだというのが私たちの考え方でした。
その結果たどり着いたのが、この円筒状の認証装置です。円筒部にはモータを搭載し、カメラが上下に駆動するように設計しました。これにより、カメラ側が利用者の目をとらえて自動で追いかけられる仕組みになっています。ここで活かされているのは、NECがこれまで遠隔視線推定技術などへ活用してきた独自の目の検出技術です。顔認証用のカメラで目を検出後、カメラをふさわしい位置へ移動させるのと同時に、虹彩認証用のカメラでも目を検出して被写体との距離を推定することで、適切なピントと照明を瞬時に調整できるように設計しています。これにより2秒程度でのスムーズな認証を実現しました。
カメラからだいたい40㎝~70㎝の距離に顔があれば自動的に認証できるので、一般的な高さの台などに認証装置を置いておけば身長110㎝~190㎝の方は認証装置の前に立って顔を向けるだけで認証が可能です。背を屈めたりするなどの面倒な動作は、ほとんど必要ありません。車いすの方も立ち上がることなく認証できるように設計しました。
最終的に、顔認証と虹彩認証を組み合わせてどのように結果をアウトプットするかという点については、さまざまなアプローチがあると考えています。より多様でユニバーサルな認証を求めるのであれば、顔認証と虹彩認証のどちらかが認証すればOKとすることもできますし、より高精度な認証を追求するのであれば双方を掛け合わせて計算していくこともできるでしょう。これらの処理方法は、利用シーンやニーズによって変わるため、これから実証実験を重ねるなかで、最適な方法を見極めていきたいと考えています。

バイオメトリクス研究所 主任研究員 大網 亮磨

2021年度をめどに、店舗決済等への提供開始をめざす

― これからの展望を教えてください。

まずは2020年度にかけて、実証を重ねていき、2021年度から決済や入退室用途での提供を開始していくのが一つのターゲットです。
現時点での展開先としては、リテールの店舗を考えています。大規模に全国で店舗を展開しているような小売企業様では常に数千万人単位のお客様を抱えていらっしゃいますから、顔と虹彩を利用したより高精度な決済には大きな価値があるのではないかと考えています。買い物に来たお客様は、両手に荷物を抱えていたり子供を抱きかかえていたりする場合も多いでしょうから、手がふさがっていても認証できる顔と虹彩の組み合わせは、このような利用シーンとの親和性も高いと考えています。たとえ財布もスマートフォンも持っていなくても、スムーズに手ぶらでお買い物ができる。そんな未来が実現できればうれしいですね。
また、この他にも入退場管理や玄関ドアのセキュアなロックなど、幅広い活用先があると考えています。
一方で、NECでは歩きながらの顔認証や虹彩認証技術も実現(※)してきました。こうした方向からの顔と虹彩を組み合わせたマルチモーダル認証の可能性も研究しつづけていきたいと考えています。

顔と虹彩により本人認証OKシーン
顔と虹彩により本人認証OKシーン

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