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PLMコラム ~PLM導入の進め方~
<執筆者>
NEC エンタープライズコンサルティング統括部
PLMグループ ディレクター 杢田竜太
2002年より、20年以上に渡って、製造業:特に設計を主体としたエンジニアリングチェーン領域におけるデジタル技術を活用した業務革新(PLM/BOM/コンカレントエンジニアリング/原価企画等)支援に従事。製造業を中心とするお客様に対して、設計開発プロセスにおける業務コンサルティングを手がけている。
4.「なぜ」 PLMを導入するのか?
PLMの定義、PLMの歴史に加えて、PLMの位置付けについて説明をしてきましたが、いよいよPLM導入の本質に近づいてきました。
本コラムを読んでいただいている方々に、ひとつの問いかけをしたいと思います。
「 なぜ、PLMを導入するのか? 」
前回お話ししたように、PLM導入PJはクロスファンクショナルチームで行われています。
もし、既にPLM導入PJを推進されている読者の方がおられましたら、明日、チームメンバーに聞いてみてください。
「我々は、何のために、PLMを導入するのか?? 」
残念ながら、恐らく全員が同じ回答をしてくれるケースは、ほぼ無いでしょう。それが現実です。
それどころか、「何のためでしたっけ?」と、目的を見失って、日々の作業に追われている人もいるのではないでしょうか。
この状態の危なさを更に理解するために、ここで私が若いころに受けたリーダーシップの研修を紹介してみます。
先生が、受講者全員に、
「目を瞑ってください。」と仰った後、
「右手を挙げて、北を指さしてください」
と仰ったのです。
当然、目をあけてみると、皆の指さす方向はバラバラです。
そこで、先生が、
「北はこちらです。」と指差し、
「もう一度、右手を挙げて、北を指さしてください」
「これが、目的を合わせるということです。」
と仰ったのです。
PLM導入に関しても、これと同じことが起こっているのが現実なのです。
プロジェクトオーナーの方、マネージャーやリーダーの方は、「北を指させているか?(目的・目標やゴールは明確に示せているか?)」ということと、「メンバー全員が北を指させているか?(トップが示した目的・目標やゴールに腹落ちし、そちらに向かおうとしているか)」の2点を再度チェックしてみてください。
さて、目的・目標やゴールの重要性について理解した上で、PLM導入プロジェクトとは、どういう特徴があるものなのかを更に深く見ていきましょう。
一番大きな特徴として、PLMが他のシステム導入と大きく異なるのは、それが技術情報と言うマスターデータの管理だということです。
例えば、販売管理システムの場合の施策と目的の関係ははどうなっているでしょうか?
・EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)の導入あるいは販売品目と価格マスターの最適化により、オーダーエントリーを効率化する
・顧客マスターの整備により、与信評価をスムーズにする
・一括請求・分割計上等の機能により、請求・入金業務を効率化する
などが挙げられますが、これらは、販売部門の業務を効率化することが目的となります。
生産管理システムの場合はどうでしょうか?
・需要予測に基づく最適な生産計画立案により、欠品や過剰在庫を減らす
・製造進捗をリアルタイムで把握し、納期遅れの防止や、納期回答の迅速化を実現する
・製造履歴を追跡可能にし、製品の安全性を確保するとともに、不良品の流出防止に備える
など、これらも、生産部門の業務効率化や精度向上を狙っています。
一方で、PLMはどうでしょうか?
一昔前のPDMにおいては、完全に技術部門の効率化やデータ管理精度向上を狙った導入でした。
しかし、前回までにも見てきたように、もはや技術部門のメリットはその一部であり、他の部門の業務効率化やデータ管理精度のため、が目的になってしまっているのです。
具体的には、どのような構造になっているのでしょうか?
前回提示した、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの関係図を再掲します。
この図で示されたように、技術情報はエンジニアリングチェーンで生成されます。
エンジニアリングチェーンで生成された技術情報は、サプライチェーンで消費されます。
つまり、技術情報は、サプライチェーンで消費されるために生成されるのです。
図7:広義のものづくりの考え方と、エンジニアリングチェーン/サプライチェーンとの関係
PLM導入推進者は、この構造に着目し、その目的を明確化する必要があります。
そして、改革初期には、それを社内の技術部門を中心とした各部署に説いて回り、納得と共感を得ていく活動が不可欠となります。
NECのPLMコンサルティングサービスでは、この改革初期段階における社内オーサライズ活動からご支援し、皆が「北を指さし」てPLM導入を進めて行けるご支援が可能です。
図8:NECが考えるグランドデザイン(改革構想企画)段階でのポイント
では、各企業が具体的にはどのような目的やゴールを持ってPLM導入を進めているのか、については、次回「PLM導入の効果について」の中で考察していくことにします。
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