社長メッセージ

社会価値創造型企業として価値を提供し続けていく

NECは1899年に創業し、2019年7月17日に120周年を迎えました。この120年を振り返ると、お客さまや社会が私たちに期待する価値は常に変化し続けてきました。その中で私たちが存続し続けてこられたのは、創業時に掲げた「ベタープロダクツ・ベターサービス」の精神に基づき、強い技術力を活かしてより良い価値を提供し、お客さまや社会の課題解決に取り組んできたからだと考えています。そして、1977年に提唱した「C&C(コンピュータと通信の融合:the integration of computers and communications)」、2014年に打ち出した「Orchestrating a brighter world」と、NECはそれぞれの時代ごとに自らの在り方を示してきましたが、これらに共通しているのはNECが一貫して社会により大きな価値を提供することを目指してきたということです。

当社は2005年に社会と企業のサステナブルな成長を目指す世界的な取り組み(イニシアチブ)である「国連グローバル・コンパクト」に署名し、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野における10原則を遵守した企業活動を推進しています。さらに、環境分野では2018年7月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しました。世の中の環境問題は年々深刻さを増しており、それらの解決には莫大なコストがかかりますが、当社はリスクと機会双方の観点で、積極的に課題解決に取り組んでいきます。

また、私たちが生み出す経済価値と社会価値を最大化するため、当社は2018年にESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」を特定しました。これは創業当初から私たちが実践してきた社会価値創造の考え方を整理し、事業戦略とESGの取り組みを結びつけることで、NECと社会、双方の成長を実現していくことをあらためて宣言したものです。社会とNECのサステナブルな成長に向け、このマテリアリティで掲げたテーマを中心に、お客さまをはじめとした多様なステークホルダーの皆さまと対話し、ともに取り組みを進めることで、持続可能な開発目標「SDGs」の達成にも貢献できると考えています。

Sustainable Development Goals 世界を変えるための17の目標

2020中期経営計画の達成に向けて

さて、ここからはNECが2020年度までの目標として2018年1月に策定した2020中期経営計画について、「収益構造の改革」「成長の実現」「実行力の改革」の3つのテーマそれぞれの進捗をご説明します。

2020中期経営計画目標値

表:2020中期経営計画目標値

収益構造の改革

まず、「収益構造の改革」の進捗についてご説明します。NECが社会の変化を先取りし、時代をリードしていく企業であるためには、自らが率先して変革し続ける必要があります。収益構造の改革では、SGA削減と事業構造の改革という2つの観点で取り組みを進めました。

SGA削減では、当年度に特別転進支援施策と生産拠点の再編を実施しましたが、これはNECのSGA水準が他社と比較して高く、このままでは市場環境の変化に乗り遅れ、淘汰されてしまうという危機感によるものです。変革のための投資を継続できるだけの強い収益体質を築き上げるため、引き続き固定費の削減に取り組み、グローバルで勝てる体質への改善を進めていきます。

事業構造の改革では、ワイヤレスソリューション事業、エネルギー事業、電極事業の変革を進めています。まずワイヤレスソリューション事業ですが、黒字化を最優先事項とし、構造改革や選別受注・機種の絞り込みに加えて、Ceragon社との協業による開発費の削減に取り組んでいます。これらの取り組みによって次年度の黒字化にめどが立ったことから、当社は同事業の継続を決定しました。また、エネルギー事業は当年度の受注がグローバルでもトップ規模となりましたが、依然として収益性に課題を抱えており、次年度にはパートナリングも視野に入れて収益改善施策を実行します。電極事業については、計画通り当年度中に売却を完了しました。

表:SGA削減・事業構造の改革

成長の実現

次は、「成長の実現」についてご説明します。「NEC Safer Cities」では、政府のデジタル化が最も進んでいるデンマークにおいて、中央・地方政府向けソリューションでトップシェアを占めるデンマーク最大手のIT企業であるKMD Holding社(以下、KMD社)を買収しました。KMD社の優れたリカーリング型ビジネス(継続的に収益を生み出すビジネス)と世界に先行する政府のデジタル化のノウハウを取り込み、前年度に買収したNorthgate Public Services社(以下、NPS社)も含めたシナジーと、NPS社、 KMD社を通じたさらなるM&Aによって提供価値を拡大し、2020年度の目標である海外売上高2,000億円、営業利益率5%の達成に向けて成長を加速させていきます。

一方、国内でも当社の大きな強みである顔認証技術を活用して、空港においてチェックインから搭乗までを"顔パス"で通過できるソリューションや、国際的なスポーツイベント会場でのスムーズな本人確認など、象徴的な事例が増えており、次年度以降の成長につなげていきます。

5Gでは、商用サービスの実現に向けてサムスン電子社と協業し基地局装置の開発を推進していますが、国内だけではなくグローバルへの拡大も視野に入れて協議を進めています。今後はグローバル通信業者への共同提案などを通じて事業拡大をはかっていきます。

表:2020中期経営計画目標値

実行力の改革

最後に、「実行力の改革」についてご説明します。実行力の改革は、事業開発力の強化とNECのカルチャーの変革という2つの軸で取り組みを進めています。

事業開発力の強化では、従来の課題であった自前主義からの脱却を進め、既存の枠組みを超えた新たな価値を創造することで、最新技術のマネタイズを加速させます。その第1弾として設立したdotData社は、熟練のデータサイエンティストでさえも膨大な時間がかかるビッグデータのデータ分析プロセスを、AIにより自動化するソフトウェアを開発・販売しており、すでに20社以上への商用・トライアル展開を行うなど、着実に実績を積み上げています。加えて、当社は新たに創薬関連事業への参入を決定しました。最新技術を活用した医療システム事業とともに、ヘルスケア領域での価値創造を推進していきます。

カルチャー変革については、当社の2020中期経営計画において、社員の力を最大限に引き出し、やり抜く組織を実現するために「経営の結果を厳しく問う」「イノベーティブな行動や挑戦を促す」「市場の変化・複雑化にスピーディーに対応する」ことを掲げました。

これらの変革への取り組みとして、まず執行役員の評価制度を刷新するとともに、責任と権限をあらためて明確化し、1年任期の委任契約とすることで執行役員の結果責任を厳格化しています。これは従業員への新評価制度導入にあたり、役員が率先して変革の姿勢を示すためでもあります。

NECのような企業が文化を変えていくためには、社員一人ひとりが変革に納得して実際の行動に移すことが必須だと考えています。一人ひとりに納得してもらうため、変革に対する私自身の思いを社員と共有し、そして現場の声を聞くため、各事業所を訪問し従業員との対話会(タウンホールミーティング)を実施しています。今後もこの活動は継続していきますが、当年度はこの対話会を数十回にわたって国内・海外で実施し、参加者は延べ1万人以上となりました。そこで感じたのは、国内外の事業の現場ではまだまだ多くの内向き工数や、不明瞭な責任分担、スピードの欠如など、私が想定した以上に多くの問題を抱えており、何かを変えようとしてもそれを阻害する要素があるということです。そして、多くの人は問題意識を持ちながらも、周囲が変化するのを待っているというのが現状であり、自ら率先して行動していく文化へと変革しなければならないと考えています。

一方で勇気を貰ったのは、若手をはじめとして前向きな意欲をもった社員もたくさんいるということです。社員一人ひとりから「もっとこうした方が良いのでは」という意見を多く引き出し、NECの成長、そして社員の成長にもつながる企業文化の変革を推し進めていきます。

表:実行力の改革 事業開発力の強化、社員の力を最大限に引き出す改革(カルチャー変革)

NECが生き抜くためには変革が必要

従業員との対話の様子

NECが創業してから120年間の社会の変化を振り返ると、創業からの100年間では社会の変化の波に乗ることでNECが成長してこられたのに対して、直近の20年間においては、逆にNEC自身が大きな変化を迫られる時代になったといえます。もしかすると次の10年間には、これまでの120年間よりも大きな変化が待っているかもしれません。NECの強みは、AIや生体認証、セキュリティ、ネットワーク・無線など、ITとネットワーク両方の技術をもっていることです。これらの技術を掛け合わせることで、「NEC Safer Cities」や「NEC Value Chain Innovation」などをとおして、NECならではの安全、安心、効率、公平といった価値を創出することができます。しかし、大きく変化する時代において、NECがこれからの50年間、100年間をサステナブルに生き抜いていくためには、変化に対応する力を身につけなければなりません。また、社会の変化に対応しながら、NECが世界で戦っていくための新たな事業の柱を築いていく必要があります。

その新たな柱を生み出すため、AIや生体認証、セキュリティなどNECが持つ強い技術を集約し、新たなビジネスとして市場へと展開するミッションを担う組織として、デジタルビジネスプラットフォームユニットを新設しました。組織名に敢えて「デジタル」とつけたのは、社会の隅々までデジタルシフトが浸透し世の中が確実に変化していくこと、そしてそのスピードがますます加速していくことに対し、「NEC自身も変わっていくのだ」という意志を込めています。

市場で価値のあるものをタイムリーに作り出すためには、サービス・ソリューションの作り手自らが市場に深く入り込み、求められているものを理解し、作り、販売していかなければなりません。加えて、トップダウンで動くのではなく、現場の一人ひとりが自ら深く考えて行動する必要があります。つまり、従来のNECのままでは生き残れないということです。NECの文化(カルチャー)を変革し、現場が変化に対応していく力を身につけ、スピードをもって動いていくことが、我々が生き残るために必要なのです。

私は次年度を業績面だけでなく、NECの文化の変革も含め、総合的にターンアラウンドする年と位置づけています。当年度はさまざまな制度や仕組みを変更し、変革に向けた環境を整えてきました。次年度は、2020中期経営計画、さらにはその先を見据えた成長の土台を作るべく、NECの文化とマインドを変革していきます。