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こんにちは。NECで主に官公庁・自治体のお客様向けのご支援をしている堀田です。
これから複数回に分けて、日本のデジタル庁が整備しているガバメントクラウドについて、お客様からよくいただくご質問を中心にわかりやすく解説していきたいと思います。

INDEX
ガバメントクラウドの利用対象とスケジュール
ガバメントクラウドの利用対象とスケジュール
ガバメントクラウドの利用対象となるシステム
前回のコラムでは、ガバメントクラウドの概要について解説しました。 今回はガバメントクラウドの利用対象となるシステムとガバメントクラウドを利用する際のスケジュールについてご説明します。
ガバメントクラウドの利用対象となるのはどのようなシステムか?
現在運用している情報システムはガバメントクラウドを利用できるのか?
お客様からこのようなご相談をいただくことがあります。そもそも、ガバメントクラウドは誰が利用できるのでしょうか?ガバメントクラウドの利用対象となるシステムはやはりルールで定められています。GCASガイド「ガバメントクラウド概要解説 5.10版」では、次のように示されています。
3.2対象システム
ガバメントクラウドの対象システムは、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」において対象とされているシステムである。地方公共団体においても本方針に準ずるシステムが対象である。
デジタル庁 GCASガイド ガバメントクラウド概要解説(全編)「3.2 対象システム」より抜粋
ではその「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」(以降、「基本方針」)で対象とされているシステムとは何でしょうか。「基本方針」では、以下のように定義されています。
1.2 適用対象
本方針は、デジタル・ガバメント推進標準ガイドラインが適用されるサービス・業務改革並びにこれらに伴う政府情報システムの整備及び管理に関する事項に適用するものとする。ただし、特定秘密(特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)第3条第1項に規定する特定秘密をいう。)及び行政文書の管理に関するガイドライン(内閣総理大臣決定。初版平成23年4月1日。)に掲げる秘密文書中極秘文書に該当する情報を扱う政府情報システムについては、本方針の全部を適用対象外とする。また、安全保障、公共の安全・秩序の維持といった機微な情報及び当該情報になり得る情報を扱う政府情報システムについては、別添を除いて本方針の全部を適用対象外とする。なお、地方公共団体や独立行政法人等が本方針を参考にすることは自由とする。特にガバメントクラウドを利用する場合については、積極的に参考にされたい。
政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針 2023年(令和5年)9月29 日 デジタル社会推進会議幹事会決定
「1.2 適用対象 」より抜粋
整理すると以下のようになります

なお、地方公共団体や独立行政法人等の情報システムについては、「基本方針」(2023年(令和5年)9月29 日時点)では方針を参考にすることは自由で、ガバメントクラウドを利用する場合には積極的に参考にしてほしい、といった扱いになっています。GCASガイド「ガバメントクラウド概要解説」ではより具体的に次のように利用対象が記載されています。
7.1.4 その他ガバメントクラウド利用の検討に当たり留意すべき事項
(1) ガバメントクラウドの利用対象
政府情報システムにおいては「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」の適用対象となるシステムが、ガバメントクラウドの利用対象となる。一般会計のうち特定財源や特別会計で運用されるシステムについては、クラウド利用料の支払いにおいて支出委任が必要となるため、個別に相談されたい。
独立行政法人のシステムについては、個別に相談されたい。
地方公共団体情報システムについては「地方公共団体情報システム標準化基本方針」及び「地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準」の適用対象となるシステムが、ガバメントクラウドの利用対象となる。
GCASガイド「ガバメントクラウド概要解説」
ガバメントクラウドの利用開始までのスケジュール
ガバメントクラウドを利用開始するには、どれぐらいの時間を見込んでおけばよいのでしょうか?GCASガイド「ガバメントクラウド概要解説」では以下のようにスケジュール例が示されています。
n年度の1Qからガバメントクラウドを利用する場合の調達スケジュールを意図したケースです。

ガバメントクラウド概要解説 2023年9月22日公開 「図 7‑1 ガバメントクラウド利用における全体の流れ」抜粋
改めて見ると、従来の政府情報システムの調達に向けたスケジュール感と大きくは変わらないと感じる方も多いのではないでしょうか。
ただ、NECでのガバメントクラウド構築経験から、スケジュールで2点注意すべき箇所があります。
スケジュール策定における注意点① クラウド利用料の提出
スケジュール内に、「クラウド利用料」という言葉が出てきます。これは単にクラウド利用料の概算・一式を提示するということではありません。GCASガイド「ガバメントクラウド概要解説」では以下のように示されています。
8.3 見積もり登録+利用申請
ガバメントクラウド利用システムの管理者は、前年もしくは前々年のプロジェクト予算獲得のタイミングで、GCAS(オンボーディングツール)へクラウド見積もり情報を登録する。この情報を元に、ガバメントクラウドとしての翌年度の予算枠を確保する。クラウドの見積もりは、必ずCSPが提供する見積もりツールを使って見積もる。見積もり登録時には、見積額だけでなく、見積もりツール実行結果もしくはそのリンクの情報も登録する。
GCASガイド「ガバメントクラウド概要解説」
CSPが提供する見積もりツールの活用
各CSP(クラウドサービスプロバイダ)は、主に従量課金であるクラウドサービスの費用を見積もるためのツールを公開しています。Amazon Web Services(以降、AWS)であれば、AWS 料金見積りツールである「pricing calculator」(https://calculator.aws/)が該当します。

pricing calculator 参考画面(図中の金額は参考例です)
AWS pricing calculator(および、他のクラウドサービスプロバイダの見積もりツール)では、従量課金に関する様々な項目を入力しなければ見積もりを算出してくれません。システム構築の1-2年前の段階での算出となりますので、妥当性の確保が課題になる可能性があります。このため、クラウドサービスに知見をもった人材の確保は必須です。
スケジュール策定における注意点② 環境払い出し
システム構築を受託した事業者は構築スケジュールの観点から、クラウド環境の払い出しタイミングに大きく影響を受けます。(…ですよね?)
スケジュール上(n年度1-2Q)は、「環境払い出しの申請」から「環境払い出し」が短期間で表現されていますが、そのためには申請の準備や環境払い出し後に迅速に構築に移れるような準備を進めておくことが重要です。(この内容は後続のコラムでより詳しくご説明します)
これまでのコラムではガバメントクラウドの概略について2回に分けてご説明しました。
この後のコラムでは主に通常のクラウドとの違いについて解説します。皆様のガバメントクラウドの理解と円滑な利用への一助になれば幸いです。

ガバメントクラウドへの移行と運用をスマートに
NECの政府機関・地方公共団体の豊富なプロジェクト実績とクラウドに強いエンジニアが、ガバメントクラウドへの移行・環境構築をご支援いたします。
執筆者紹介
堀田 佳宏(ほった よしひろ)
NEC
パブリックビジネスユニット
ガバメントインテグレーション統括部
上席プロフェッショナル
2024 Japan AWS Ambassadors
2024 Japan AWS Top Engineers(Services)
学生時代に見た「serial experiments lain」に感銘を受け、ネットワークエンジニアを夢見て上京。民需、金融、官公庁・自治体のネットワークを中心としたプラットフォーム領域のシステムインテグレーションに従事。プラットフォームシステムインテグレーションの魅力にハマる。2017年より官公庁領域でのクラウド技術検討を開始。官公庁領域におけるクラウド移行の提案や技術支援、情報集約を行うチーム Cloud Architect Team(CAT)を立ち上げ活動中。クラウド移行の提案や技術支援、情報集約から得られた知見を活用したクラウド関連サービス企画も実施中。趣味はDIY、ビリヤード。学生時代にやっていたライフル射撃(エアライフル)を再開する機会をうかがう日々を送る。

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