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こんにちは。NECで主に官公庁・自治体のお客様向けのご支援をしている堀田です。
これから複数回に分けて、日本のデジタル庁が整備しているガバメントクラウドについて、お客様からよくいただくご質問を中心にわかりやすく解説していきたいと思います。
今回は、通常のクラウドとガバメントクラウドの違いを、契約・サポート・役割分担からご説明します。

クラウド契約・サポート・役割分担
クラウド契約面の違い
まずは契約面の違いに注目します。ここでは、Amazon Web Services(以降、AWS)を例にします。

2. 目的等
本公告は、クラウドサービスの適正かつ確実な提供を確保するため、公募参加者に対し、その適正かつ確実なサービスの提供を証明する書類等の提出を求めるものであり、デジタル庁が当該提出された書類等の審査において、クラウドサービスの提供が可能と判断した者すべてと契約の締結を行うものである。
つまり、ガバメントクラウドは、ガバメントクラウドとして採択されたクラウドサービス事業者とデジタル庁が直接契約していることが分かります。
個人でAWSを利用する場合は基本的にAWSと直接契約をしますが、企業や官公庁ではリセラーを介したAWS契約が多いのではないでしょうか。官公庁での直接契約はとても珍しく、ガバメントクラウドの特徴の一つです。
ガバメントクラウド利用時のサポート
デジタル庁による直接契約が特徴と聞くと、クラウド利用時のサポートが気になる方も多いのではないでしょうか。ガバメントクラウドではどのようなサポートが利用者に提供されるのか、利用者サポートの観点から見てみましょう。
ガバメントクラウド(AWS)を利用する場合、GCASガイド ガバメントクラウド利用概要(AWS編)「7.1サポートの全体像」では次のように記載されています。
クラウドサービスに関する問合せはガバメントクラウド利用組織がクラウドサービス事業者に直接問い合わせる

つまり、基本的な利用者サポートはシステム開発または運用事業者が直接クラウドサービス事業者サポート(AWS等)に問い合わせることになります。クラウドサービス事業者の範囲ではない、ガバメントクラウド自体に係るサポートはオンボーディングツールを通して利用組織の取りまとめ者がデジタル庁に問い合わせる形となります。
サポートのレベル
次に、提供されるサポートのレベルを見てみます。
GCASガイド ガバメントクラウド利用概要(AWS編)「7.2 利用できるAWSサポート」では以下のように記載されています。
サポート契約 |
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サポート利用方法 |
AWS管理コンソールからAWS Support Centerを直接利用でき、チケットを起票してAWSサポート、SRTサポートからの技術サポートを受けられる |
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サポート専任要員(追加契約) |
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上記の通り、ガバメントクラウド(AWS)利用時には、エンタープライズサポートが利用可能です。そのAWS エンタープライズサポートについて、主要と思われる項目を以下に抜粋して記載します。他のAWSサポートプランと比較すると、クリティカルなシステムダウンの応答時間が短い、テクニカルアカウントマネージャー(TAM)によるサポート等、充実したサポートが提供されることがわかります。
ただし、前述の通りガバメントクラウド(AWS)では、TAMの利用は別途調整が必要となります。
デベロッパー | ビジネス | Enterprise On-Ramp | エンタープライズ | |
ケースの重要度と応答時間* |
一般的なガイダンス: < 24 時間 |
一般的なガイダンス : <24 時間 システム障害: < 12 |
一般的なガイダンス : <24 時間 システム障害: < 12 |
一般的なガイダンス : <24 時間 システム障害: < 12 |
システム障害 |
時間 |
時間 ↓ 本番システムの障害 : < 4 時間 ↓ 本番システムのダウン : < 1 時間 ↓ ビジネスクリティカルなシステムのダウン: < 30 分 |
時間 ↓ 本番システムの障害 : < 4 時間 ↓ 本番システムのダウン : < 1 時間 ↓ ビジネス/ミッションクリティカルなシステムのダウン: < 15 分 | |
アーキテクチャガイダンス | 全般 | お客様のユースケースに対応 | お客様のアプリケーションに基づく、年 1 回のコンサルティングレビューとガイダンス | お客様のアプリケーションに基づくコンサルティングレビューとガイダンス |
テクニカルアカウントマネジメント | 事前対応型のガイダンスを提供し、プログラムや AWS エキスパートへのアクセスを調整するテクニカルアカウントマネージャーのプール | 担当のテクニカルアカウントマネージャー (TAM) がお客様のアプリケーションやユースケースに応じたアーキテクチャや運用のガイダンスを提供し、お客様が AWS から最大の価値を得られるように支援します | ||
強化された技術サポート |
営業時間内**でのクラウドサポートアソシエーツへのウェブでの問い合わせ |
クラウドサポートエンジニアへの年中無休の電話、ウェブでの問い合わせ、チャット利用 |
クラウドサポートエンジニアへの年中無休の電話、ウェブでの問い合わせ、チャット利用 |
クラウドサポートエンジニアへの年中無休の電話、ウェブでの問い合わせ、チャット利用 |
件数無制限、および連絡先無制限 (IAM サポート) ![]() |
件数無制限、および連絡先無制限 (IAM サポート)
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件数無制限、および連絡先無制限 (IAM サポート)
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件数無制限、および連絡先無制限 (IAM サポート)
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*お客様からの最初のリクエストに、対応する時間内に応答するよう、合理的な範囲でできる限りの努力を払います。
**営業時間は通常、マイアカウントコンソールで設定されているお客様の国の午前 8 時から午後 6 時までです。ただし、祝日と週末は除きます。複数のタイムゾーンがある国では、これらの時間が異なる場合があります。
以下より抜粋
https://aws.amazon.com/jp/premiumsupport/plans/
役割分担
最後に、クラウドサービス事業者とデジタル庁、システム開発/運用事業者の役割分担の概略を見てみます。
GCASガイド ガバメントクラウド概要解説(全編)「3.5 責任分界点」に示された責任分界点の全体像では、以下のように役割分担が定義されています。

図 3‑5 責任分界点の全体像 抜粋をNECで一部加筆
また、情報資産の観点での責任範囲は以下となっています。

図 3‑6情報資産の責任範囲 抜粋
AWSが示す 責任共有モデルのガバメントクラウド版といった感じです。AWSの責任共有モデルにガバメントクラウドから払い出されるガードレール(全体利用ポリシー)、テンプレート(リファレンス構成)や環境の払い出しに関する役割が追加されたものと考えられます。ただ、基本的には通常のAWS利用時の責任共有モデルに沿った分担であり、利用者責任範囲については通常のAWSと変わりはありません。
サマリ
契約・サポート・役割分担の観点から、通常のクラウドとガバメントクラウドの違いをまとめると以下となります。
- デジタル庁が直接契約している
- ガバメントクラウド(AWS)の場合エンタープライズサポート相当のサポートが得られる
- ガードレール(全体利用ポリシー)、テンプレート(リファレンス構成)、環境の払い出しといったガバメントクラウド固有の役割が追加されるもののほぼ通常のクラウドと同じ役割分担の考え方
今回は、ガバメントクラウドでのクラウド契約・サポート・役割分担についてご紹介しました。皆様のガバメントクラウドの理解と円滑な利用への一助になれば幸いです。
次回は、ガバメントクラウドとGSSネットワークとの接続について解説します。

ガバメントクラウドへの移行と運用をスマートに
NECの政府機関・地方公共団体の豊富なプロジェクト実績とクラウドに強いエンジニアが、ガバメントクラウドへの移行・環境構築をご支援いたします。
執筆者紹介
堀田 佳宏(ほった よしひろ)
NEC
パブリックビジネスユニット
ガバメントインテグレーション統括部
上席プロフェッショナル
2024 Japan AWS Ambassadors
2024 Japan AWS Top Engineers(Services)
学生時代に見た「serial experiments lain」に感銘を受け、ネットワークエンジニアを夢見て上京。民需、金融、官公庁・自治体のネットワークを中心としたプラットフォーム領域のシステムインテグレーションに従事。プラットフォームシステムインテグレーションの魅力にハマる。2017年より官公庁領域でのクラウド技術検討を開始。官公庁領域におけるクラウド移行の提案や技術支援、情報集約を行うチーム Cloud Architect Team(CAT)を立ち上げ活動中。クラウド移行の提案や技術支援、情報集約から得られた知見を活用したクラウド関連サービス企画も実施中。趣味はDIY、ビリヤード。学生時代にやっていたライフル射撃(エアライフル)を再開する機会をうかがう日々を送る。

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