Japan
サイト内の現在位置
コラム2: CATがズバリお答えします!「クラウド移行=コスト削減って本当?」
こんにちは。NECで主に官公庁・自治体のお客様向けのご支援をしているCATの堀田です。今回は、クラウドの支援活動を行う中でいただくことの多いコストに関するご質問にお答えしていきたいと思います。
“クラウド移行=コスト削減”は正しい?
AWS等のパブリッククラウドへの移行に際して、コストが従来と比較してどう変化するか、たくさんのご質問をいただきます。トータルコストでは安くなるという意見や、逆にオンプレミスサーバよりも高くなるという意見のどちらも私は現場で耳にしたことがあります。様々な意見はあると思いますが、私は下記のようにご説明することが多いです。
- パブリッククラウドは各種「クラウドサービス」で構成される
- そのサービスの中から、情報システムに最適な組み合わせを選択し、使いこなすことでコストを最適化できる
- ただし、クラウドサービスをうまく使いこなせないと、従来(オンプレミス)よりもコストが悪化する可能性が高い
つまり、トータルコストでは安くなるという意見、逆にオンプレミスサーバよりも高くなるという意見、どちらも正しいと考えています。どういうことか、目的地への移動を例にご説明します。
目的地への移動を例に考えてみる
皆さんが、ある目的地へ向かう場合、どのような移動方法を考えるでしょうか。大きく2つの方法に分けられると思います。一つは、自家用車など自身で所有している移動手段を利用する方法。もう一つは、公共交通機関などの交通機関サービスを利用する方法です。
何を優先するかによって、利用する移動手段が変わると思います。費用(トータルコスト)で考える場合、絶対に遅れることができない場所に向かう場合…など様々な優先度があると思います。ちなみに、私は旅行では新幹線や飛行機で移動し、空港や駅からはレンタカーやタクシーを使うことが多いです。皆さんもある目的地に移動する場合、目的地や優先度(コスト、時間/期間、安全、etc)に応じて都度検討されていると思います。
情報システムに置き換えて考えてみる
この移動を情報システムに置き換えて考えてみます。その場合、所有する移動手段(自家用車)がオンプレミスサーバやストレージに該当します。交通機関サービスはパブリッククラウドに例えることができると思います。パブリッククラウドでコストを効率化するには、移行する「情報システム」に最も効率的なクラウドサービスの組み合わせを選択することが重要といえます。
例えば、これまで持っていた「自家用車」になんとなく形が似ているからという理由で「レンタカー」を常に借り続けた場合、自家用車を所有するよりも高くつくかもしれません。
さらにAWSに置き換えてみる
パブリッククラウドも同じです。AWSを例にすると、オンプレミスサーバに近いサービスという理由だけで、「Amazon EC2」を従量課金で使い続けた場合、オンプレミスサーバより高額になってしまう可能性が十分にあります。
レンタカーはレンタカーとして費用対効果を最大限発揮する使い方をすべきですし、もしかしたらタクシーの方が効率的かもしれません。
これは例えば、「Amazon EC2」であれば利用しないときには停止し課金を発生させない、サーバレスサービスである「AWS Lambda」を利用してアプリケーションコードを実行した時のみ課金されるようにする、データベースサービスである「Amazon RDS」を利用し、データベース運用を効率化する、などの使い方です。
なお、「Amazon EC2」などでは長期利用割引の仕組みが用意されています。これは、1年や3年といった期間の利用を前提に大幅な割引を受けられる仕組みです。長期利用割引(Saving Plans/リザーブドインスタンス)を使えば、情報システムを従来と近い手法でクラウドに移行できる上、利用料もお得です。しかし、1年や3年という期間の契約が必要となるため、中央省庁・公的機関領域での利用の場合、契約期間の考慮が必要になるかもしれません。
また、技術進歩の早いパブリッククラウドにおいて、3年間構成が塩漬けになることの技術やコスト面でのリスクも想定されます。長期利用割引を検討する場合は、適用する情報システムの長期の見通しを持ったうえでの利用をお勧めいたします。
クラウドのスマートな利用に向けて
「政府クラウドシステムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」*(2022年(令和4年)12月28日・デジタル社会推進会議幹事会決定)
では、その資料内で繰り返しクラウドのスマートな利用について言及されています。今回のような、「情報システム」に最も効率的なクラウドサービスの組み合わせを選択することがクラウドのスマートな利用の第一歩だと考えています。
ただ、そのためには最も効率的なクラウドサービスの組み合わせを選択できるスキルが必要です。情報システムをパブリッククラウドに移行すれば、自動的にコストが効率化されるわけではない点にも注意が必要です。従来の情報システム構築と同様に、クラウドにおいても設計・構築のノウハウ、実績、スキルが極めて重要になってきています。
*2022年12月28日~幹事会決定
さいごに
NECでは、長年の中央省庁・公的機関領域でのシステム構築実績に加え、各パブリッククラウドサービス事業者との協業関係にあり、最新トレンドに基づいた技術提供が可能です。また、クラウド移行検討を行う上で欠かせない、移行アセスメントを行うサービスも有しています。情報システムのクラウド移行検討に向けた良きパートナーとして、ぜひNECにお気軽にご相談ください!
公開日 2023/3/20
本コラム内容は公開日の時点の情報を基に記載しています。
開発者紹介
堀田 佳宏
(ほった よしひろ)NEC ガバメントプラットフォーム統括部 クラウドアーキテクトグループ
上席プロフェッショナル兼ディレクター
2023 Japan AWS Ambassadors
2023 Japan AWS Top Engineers(Services)
学生時代に見た「serial experiments lain」に感銘を受け、ネットワークエンジニアを夢見て上京。民需、金融、官公庁・自治体のネットワークを中心としたプラットフォーム領域のシステムインテグレーションに従事。プラットフォームシステムインテグレーションの魅力にハマる。2017年より官公庁領域でのクラウド技術検討を開始。官公庁領域におけるクラウド移行の提案や技術支援、情報集約を行うチーム Cloud Architect Team(CAT)を立ち上げ活動中。クラウド移行の提案や技術支援、情報集約から得られた知見を活用したクラウド関連サービス企画も実施中。趣味はDIY、ビリヤード。学生時代にやっていたライフル射撃(エアライフル)を再開する機会をうかがう日々を送る。