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ウェルビーイングな社会の実現に向けて

NECスマートシティ

「よく生きる」社会実現へのアプローチについて

最近、豊かさや幸せの在り方として注目される「ウェルビーイング(肉体的にも精神的にも社会的にも満たされた状態)」。企業理念として、「よく生きる(Benesse)」を掲げるベネッセホールディングス(以下、ベネッセ)様では2022年に「ベネッセ ウェルビーイングLab(以下、ラボ)」を設立され、様々な生活者や専門家との対話を通じて、ウェルビーイング向上のための情報発信や活動を進められています。NECも、ウェルビーイングについての情報交換や、new window子どものウェルビーイングに関する取り組み自治体様でのワークショップなど、ベネッセ様と連携した取り組みを実施させていただきました。
今回は、各種活動をご一緒いただいたラボの泉さん、安原さんにお話しを伺い、両社の取り組みやウェルビーイングに関するアプローチの違いにおける課題感や可能性について、ディスカッションする機会をいただきました。以下に、ベネッセ泉さん、NEC千葉を中心とした対談内容についてお届けします。

ベネッセ 泉さん(右)とNEC千葉(左)

■AIやデータ分析に対して人は拒否感を持つ?

千葉:当社のまちづくり事業では、データ分析技術やロジックモデルなどを活用して、データを起点としたウェルビーイングなまちづくりを支援していますが(※1)、AIを使ったデータ分析について、ベネッセさんのいろいろなお考えを伺えればと思っています。

  • ※1
    詳細は以下リンク先の情報参照

AI分析について、自治体職員の方には、データを起点として体系的な仮説を立てられることに魅力を感じていただいておりますが、自治体職員以外の方(例えば、生活者の方やその地域で働いている方)にどのように理解いただくか、データ起点の政策検討をどう浸透させていくかについて、大小の課題感を頂戴しております。とりわけ、生活者の方にとっては、AI分析を活用することについて、自分たちの意思とは少し遠いと感じる方や、AIが人の感情的な理解や共感に欠けていると受け止めて、少なからず拒否感を示す方もいます。
ベネッセさんとしては、これまで生活者の方、一人一人との対話を重視しながらウェルビーイングについて取り組まれている印象がありますが、このようなAIによるデータ分析を軸として取り組むことに対する率直な感想やアドバイスあればいただけますでしょうか。

泉さん:ありがとうございます。この取り組みは非常に面白いなと思いながらお話を伺っていました。AI分析についてですが、もともとは生活者の一人一人の声が反映されているアンケートデータで、分析ツールのエンジンとしてAIを用いているということですね。

千葉:その通りです。生活者の方の声は、当然アンケートデータの中に一つ一つ入っているのですが、数百人数千人というデータの一つとしてまとめられてしまうと、本当に自分の思いがちゃんと反映されているのかという感覚になったり、自分の周辺で見聞きした情報と分析結果が違うと感じたり、そういったことをワークショップなどでご意見として頂戴することが多い印象を受けています。

泉さん:とてもよくわかります。まとめられた状態の大量のデータの一部になるとしっくりこない。それに対する違和感がAIの分析によるものではないかと思ってしまうということですね。
それでは、この課題について考えていく前に、私たちのアプローチでは逆に、個人に入りすぎてしまうという課題もあると思っており、そこを先にお話しさせてください。

ベネッセ ウェルビーイングLab副所長 泉ひろ恵さん

■生活者、専門家との対話を通じて

泉さん:当社は、企業理念として「よく生きる」という言葉を掲げており、この言葉は英語ではwell-being(ウェルビーイング)となります。まだまだウェルビーイングを知っている人は多くはないと私たちは思っていますので、ラボではまず知ってもらうことと、深めていくことの二つの柱で活動しています。

ベネッセ様の企業哲学と活動概要

先日、子どものウェルビーイングに関するウェビナーを開催して、約1,300人の方にお申込みをいただきました。その中で、事前に実施したアンケート『子どもの声でハッとしたこと』から、「この世界で会えて嬉しかった」「お母さんが決めないでよ。私のことを信じてよ」などのお子さまのリアリティのある言葉を共有させていただくと、「うちもそうかも!」と多くの共感をいただけました。
先ほどの千葉さんのお話とは逆、という感じですね。生活者の声には強く気持ちが寄せられるというか…。ですが、それだけは一人の声の域を出ずに終わってしまうので、私たちはこの先をどのようにしていくのか、課題に感じています。

ウェビナー「こどものウェルビーイングを考えよう」概要

実はこのウェビナーの事後アンケートで、参加者の皆さんに非常に共感を生んでいたと分かったことがありました。それは、ウェルビーイング研究の専門家である石川善樹先生(公益財団法人 well-being for Planet Earth 代表理事)が話してくださった「家庭だとどうしてもWell-being(相手を尊重する)ではなくて、Well-doing(行動を指示する)を行ってしまう。でも本当はウェルビーイング、つまり相手を尊重して良い状態になるのを待つことが大事ですよね」というお話しでした。個々の声をまとめて、このようにお話し頂くと、とても共感を得られることを実感しました。

ウェビナー資料(家庭におけるウェルビーイング等に関する資料)

また、世界の中で日本は家族からのサポートがとても少ないというデータに対しても反応が多くありました。データを総論としてまとめるには、国単位ぐらいにまとめられると納得感が高まり、その要因を深堀っていくことで、相手に受け入れやすくなるのではと感じました。
前述のアンケートでは、回答者の97.9%が「子どもと話してみようと思った」というアクションに繋がる回答を頂きました。一人一人の声を聞いた上で、世の中の傾向(データなど総論的なこと)と主観的な傾向(各論的なこと)の両方の傾向を伝えると、自分の行動を変えてみようというところまで納得感が高まるのかもしれません。

■継続した調査の中からの気づき

泉さん:ベネッセ教育総合研究所で行っている内容も少しご紹介させてください。
この研究は、一つの家庭のお子さんが育っていく過程を継続して指標として取り続ける調査を行っています。この調査では、保護者が幸せだとお子さんも幸せであるという相関データが出ており、ある時点で幸せな保護者のお子さんは、その三年後、お子さん自身の幸福度が上がっています。また逆に、お子さんの状態も、三年後の保護者の状態に影響しています。保護者がお子さんのために「いろいろな体験をさせてあげたい」「どこかへ連れていってあげたい」などと頑張りたい気持ちがありつつ、自身が忙しくて辛くなっていることがありますよね。しかし、その状態ではお子さんは保護者の状態の影響を受けて、幸福度が下がってしまうかもしれません。複数年かつ複数家庭のデータというマクロな視点で見てみると、保護者の状態がお子さんに影響しているということが分かってきています。

ベネッセ教育総合研究所 小学生から高校生の親子の「幸せ実感」の追跡データ
詳細情報:PDFhttps://benesse.jp/berd/special/childedu/pdf/newsLetter/newsLetter_20241218.pdf

千葉:一連のお話を大変興味深くお聞きしました。改めて、大きな気づきだと思ったことが一つありまして、私たちは普段自治体さまなどとデータを扱いながらいろいろな話をしていますが、ワークショップなどに集まってこの内容や結果を聞いている方からすると、私たちが「Well-doing」をしているように感じている気がします。そこで、ある示唆や仮説のようなものをこちらから提示する前に、「このまちについてどう思っていますか?」などとはじめに参加されている方に問いかけてから対話ができると、個人の感覚とデータ分析の結果との違和感が和らぐのではと思いました。

加えて、国単位の大きな傾向を見たうえで、対話を始めるのも大事ですね。このグラフを見ると日本は第二象限の左端で、そもそもこの象限にいる国は日本以外ほぼないという結果となっておりなかなか衝撃的です。
「家庭」ということばのとらえ方には国民性の違いなどもあると思いますが、一つの仮説として日本の親や大人はWell-doingを多く実践してしまっており、子どもの感じるウェルビーイングになっていないのかもしれないと感じました。

ウェビナーでまとめられていた子どもの声の内容については、やはり親と子どもという関係性だからこそ、この感想が出るのではと思っていて、親への心理的な安全性が普段から醸成されているからこそ素直に感想を書いてくれていると感じました。もちろん、この空気感を作るベネッセさんの取り組みや工夫も大きいと思います。結果的に、聞こえの良いような内容というより、本質をズバッとつくような内容が多くあったのだと思いました。

泉さん:分析しようとするのではなくて、まず聞くというところから入ると、自分の意見がちゃんと総論に反映されていると思ってくださるのかもしれません。

千葉:さらに印象的だったのは、親と子どもの幸福度における相関性の話です。その人のライフストーリーに寄り添いながらも、あの時はこうだったが、その時の幸せが今はこのようにつながっているということがわかるのは、やはりライフイベントごとに企業として関わり続けられるベネッセさんの事業や企業理念があってこそだと思いました。

ここでベネッセさんの課題に戻ると、個人に入り込める良さを活かしつつ、これをより総論的に考えることで、よりその良さが際立つのではないでしょうか。そして、先ほどのご紹介にもあった通り、個人や家族のライフストーリーをウェルビーイングの軸で複数年に渡って寄り添えることは、他の会社や団体では難しいベネッセさんならではの長所だと感じました。

加えて、今回ご紹介の内容は定点的に取得し続けた親と子どもの調査結果を相関分析されていると理解していますが、例えば小学生から高校生に至る子どもの生活の中で、ベネッセさんの学習用の教材などに触れることやそのほかの接点も含めて、人生の中でどういう要素が絡んでくると親も含めてウェルビーイングな状態が作られるのかということに個人的な関心を持っています。その一要素として、暮らす場所や、周辺の自然の多さが個人の幸せにどこまで影響するのかなども分析することで、幸せの道筋のようなものを見つけられるとすごくいいですよね。

NEC クロスインダストリービジネスユニット
スマートシティ統括部 プロフェッショナル 千葉

泉さん:子どものウェルビーイングとしてはほかに、親子で会話の機会を増やせるようなツールを作成したり、瀬戸内にある直島では「場のウェルビーイング研究」への協力なども行っています。それぞれの活動は点に近い取り組みであり、一つの線につなぐことはまだ試行錯誤しているところですが、今後も様々な形でウェルビーイングの可能性を探っていきたいと思っています。
これまで複数の観点で話をしてきましたが、改めて今後取り組んで行きたいことはございますか?

千葉:ウェルビーイングについてはまだまだ勉強することも多く、私たちも試行錯誤しながら取り組んでいるところではありますが、やはり自治体様や生活者の方を中心としたウェルビーイングなまちづくりに少しでも貢献するために、より多くのステークホルダーの方のご意見やアドバイスを真摯に受け止めつつ、一緒に共創していくことが必要だと感じています。そこにたどり着くためのヒントを本日いただくことができたと思います。当社の強みであるデータ分析は活かしつつも、ベネッセさんのような知識やお考えをお持ちの企業や周囲の関係者と進めていかないと、ウェルビーイングなまちづくりにはたどり着かないということを改めて感じることができました。

■活動の進展のために、形にして発信し続ける

泉さん:ウェルビーイングに関する知識については私たちも十分にたどり着けていないのですが、探求する中で思いがけない気づきもたくさんあると感じています。
話の発端は、ママ社員の一人の「子どもの言葉は親にとって宝物だから、紙に書いて大事にできたらいいな」というものでした。この声から、何かツールを作ったらどうかという話になりました。

ウェビナーでの「こどものウェルビーイング対話カード」
PDFhttps://www.benesse.co.jp/well-being/pdf/well-being-card.pdf

これがその時に作った「子どものウェルビーイング 対話カード」になります。どのようなことを親子で対話するとウェルビーイングになれそうか?とディスカッションし、その1つとして「誰かのためにやってみたいこと(例:パパの誕生日にやってあげたいこと、など)」というテーマを検討していたのですが、石川善樹先生から「いいと思いますが、とても日本的ですね」とご指摘を頂いたのです。
日本では、相手があって自分があるという思考は違和感がありません。しかし、アメリカでは「あなたはどんな人に影響を与えましたか?」と考えるほうがしっくりくるそうです。海外の文化に影響を受けてきた子どもには「なんで誰かのためにしたり、他人が喜んでくれたりしたことで、自分が嬉しくなるのか?」と思われる可能性がある…。文化による影響度が大きいのだと改めて腑に落ちました。形にしていく過程で、様々な人からの視点で見て頂くこと、つながりながら前に進めていくことの大切さを感じた例でした。

千葉:ありがとうございます。これはすごく気づきになりますね。私たちもウェルビーイングに関するアンケートを作りますが、日本の文化を中心に育ってきたメンバーが多いので、知らず知らずのうちに日本的な感覚にもとづいて作成していることも多いのだと気づきをいただきました。今後の世の中において、様々な文化にルーツがある方が共生することも多くなるかと思いますが、その中で自分の感覚を客観視するためにも多くの物事と向き合い、同時にそれらを理解しながらウェルビーイングに関して理解を深めていくことはとても大事だと思いました。

■活動の中で大切にしていること

最後に、今回の出席者全員にウェルビーイングの実現やあり方に向けての活動の軸として大切にしていることを伺いました。

泉さん:若い方や忙しいお母さんなどに、ウェルビーイングの考え方をもっと伝えられたらと思います。私自身、仕事や勉強では「課題をどう解決すべきか」というマイナスの要素から考えることが多かったと感じています。自分も幸せになっていい、幸せってなんだろう、そのようなことを考える余裕もなくここまで人生の歩みを進めてきてしまった、と。石川先生の「どんな時にもウェルビーイングの道は開かれている」という言葉が、私のよりどころです。良い時も悪い時も、どんな状態からでもウェルビーイングな状態になれる道はある。そうした考え方を、必要としている人に届けることができたら願っています。

安原さん:情報発信をすることで、それに触れた方たちに気づきが生まれ、明日からの心持ちが少し変わるなど、私たちの活動が世の中の前向きな行動につながっていくといいなと思っています。

千葉:いつかは誰かのため、世の中のためになるということを思い続けながら、仕事やプライベートに向き合い続けることが重要だと思っています。特に仕事になると、相反するような課題や立場と向き合いながら、いかにそれらを昇華させてゴールに向けて進めていくかが求められると思っています。このような状況の中で、自分の信念や想いをぶらさずに活動できるかが私のとってのウェルビーイングを体現する軸だろうなと思っています。
また、ウェルビーイングに関する活動を世の中に膾炙することは当然一人ではできないので、これらの可能性に対して一緒に進められる仕事の仲間やパートナー様とご一緒できるかも大事だと考えています。

高塚:どうしてもIT系の企業の考え方として、技術的な観点に拠った思考が働きやすくなってしまうと感じていますが、人が何事も中心にあると思っており、そこにその人たちのウェルビーイングがあると思っています。この軸を大切にしながら、ITを活用したウェルビーイングの支援を大事にして取り組んでいきたいです。



NECでは、これからも様々な企業、専門家、生活者の方々との対話や連携を通じて、ウェルビーイングな社会づくり実現のための活動を進めてまいります。

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