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世界No.1を誇るNECの生体認証をリードする立役者

2019年12月13日

第三者機関のベンチマークテストで世界No.1の精度を実証しつづけているNECの指紋認証・顔認証・虹彩認証。そのすべての生体認証技術の研究を統括し、顔認証5連続世界No.1獲得へと導いた立役者である今岡フェローに話を聞きました。

生体認証で世界をリードしつづけてきたNEC

NECフェロー 博士(工学) 今岡 仁
NECフェロー 博士(工学) 今岡 仁

― NECのフェローとして、どのようなことに取り組まれているのでしょうか?

私はもともと顔認証研究を中心に取り組んできた画像処理を専門とする研究者ですが、現在はフェローとしてNECが開発する生体認証技術群「Bio-IDiom」の推進に取り組んでいます。全社横断型組織「デジタルビジネスプラットフォームユニット」における技術側の責任者として、事業部と連携しながら生体認証の社会活用を進めることがミッションです。
NECは顔認証以外にも、指紋認証や虹彩認証、さらには声認証や耳音響認証など幅広い生体認証を取り扱っています。これだけ多くの生体認証を総合的に扱う企業は、世界でも数社しか存在しません。さらに注目していただきたいのは、NECの生体認証技術はそれぞれが世界トップレベルの精度を達成しているということです。たとえば、指紋認証について言えば米国国立標準技術研究所(NIST)が主催する各種技術評価コンテストにおいて2007年から合計8回、世界No.1の認証精度を実証しつづけています。顔認証においても初参加した2009年から2019年まで5回連続で世界No.1の精度を実証しつづけていますし、虹彩認証においても2018年に世界No.1の精度を実証しました。
こうした実力の背景に存在しているのは、指紋認証を皮切りとして、いち早く生体認証へ積極的に挑戦しつづけてきたという実績です。生体認証を精度よく動かすためには、ただ機械学習をうまく活用するだけではうまくいきません。どういった状況でどんな不具合が起こりやすいであるかだとか、さまざまな問題に対するノウハウがあるかどうかが非常に重要なポイントとなります。NECは1980年代から研究に取り組んできた生体認証のパイオニアとして、独自のノウハウと技術を積み上げ、現在に至るまで世界をリードしつづけてきました。

世界で初めて実用的な精度の顔認証エンジンを開発

― NECでは、これまでどのような研究をされてきたのでしょうか?

1997年にNEC入社後、はじめは脳の視覚情報処理に関わる研究に取り組んでいました。その後2002年に異動となって、初めて顔認証の研究に取り組むことになりました。当時NECでは指紋認証の研究が軌道に乗りつつあったので、次は顔認証だと人員強化を始めていたということもありますし、2001年のアメリカ同時多発テロによって高まったセキュリティへの注目が、顔認証研究の推進を後押ししたこともあったと思います。
しかし、当時の顔認証技術というのは世界的にもエラー率が10%~20%という状況で、実用化の目処はまだ全くと言っていいほど立っていませんでした。私自身も画像処理というのは初めての分野だったので、はじめのうちは大きく戸惑ったことを覚えています。おまけに、顔認証は向きや照明、経年変化といった複数の変動要素を鑑みなければならないため、生体認証のなかでもとりわけ複雑な技術です。
2008年を迎えても、顔認証のエラー率はまだ海外企業が記録していた約2~3%という数字を超えることはなく、世界的に頭打ちの状況になっていました。その頃には「そもそも私たち人間が見ても100人くらいの顔しか見分けられないじゃないか」という話や、「顔に人を高精度に見分けられる情報は残っていないんじゃないか」という説も叫ばれ始めていて、顔認証という技術そのものの将来性が疑われるようになっていました。
研究者の数も世界的に減少していきましたね。2007~8年くらいが底をついた時期だったんじゃないでしょうか。私たちの顔認証チームも一時期は私と新人の2人だけで研究を進めていました。ただ、実はその頃には私のなかにノウハウがたまってきていて、勝てる技術がつくれるんじゃないかという道筋が見えてきていました。2004年にNECが指紋認証で世界No.1の精度を実証したことも励みになりましたね。私たちが顔認証でNo.1を獲ることも、決して難しいことではないんだと思えたことは大きかったです。
こうした地道な研究の甲斐もあって、2009年に初めて参加したNISTのベンチマークテストで、ついに世界No.1の精度を実証することができました。さらに決定的になったのが、翌年2010年に開催されたNISTの結果です。ここで、私たちの顔認証がエラー率約0.3%を記録することに成功したのです。他の企業がまだ約2~3%で頭打ちになっていたところで、1桁違う数字を記録することができました。これによって、顔認証は実用化に耐えられる精度が出せるのだということを世界中に初めて証明することができたわけです。
以降、顔認証の研究はもう一度見直され始めました。2009年には5社しか参加しなかったNISTでのベンチマークテストにも、2010年には10社、2013年には16社と増え、最近では49社が参加しています。もちろん、NECは2009年から変わらず世界No.1を実証しつづけています。直近の結果を言えば、FRVT2018においては2.3億件/秒の処理を約0.5%のエラー率で認証できることを実証しています。

Face Recognition Vendor Test (FRVT) 2018 まとめ
Face Recognition Vendor Test (FRVT) 2018 まとめ
フェロー 今岡 仁

個人の識別・認証だけでなく、表情や顔色などの情報にも注目

― これからめざしていきたいことは?

顔認証は、すでに空港、スタジアム、コンサートへの入場など、さまざまな場所での運用が始まっていますが、私たちはこれらを、さらに身近で便利なものにしていきたいと考えています。たとえば、海外へ旅行したら、空港だけでなくホテルのチェックイン、商品の購入まですべて、ただ顔を見せるだけで認証できるようなシステム「One ID Platform」という構想を描いています。本システムが実現すれば、パスポートチェックなしで、さまざまなサービスをシームレスに受けられるようになります。このほかにも、決済や交通機関など、あらゆる方面から研究を進めているところです。
また、顔というのは、普段私たちが行っているコミュニケーションにおいても根幹となっている非常にナチュラルなインターフェースです。私たちは原則的に普段から顔を出して行動していますし、会話をするときは顔を見て話しますよね。相手の指紋を見つめながら話すということはないわけです。ですから、自然に認証に移行することができます。この特長を活かせるシーンは、まだまだたくさんあると考えています。
加えて、顔には個人識別以上の情報があるという点にも注目しています。たとえば、医師の方はもちろん、私たちも相手の表情や顔色から、体調や気分を判断することができますよね。こうした点に注目して、医療分野への応用についても研究を進めているところです。
また、私自身の話をすれば、フェローに就任したことによって研究者たちをマネジメントする機会がさらに多くなりました。若手研究者の育成や、彼らが自由に楽しんで研究できる組織づくりもめざしていきたいところです。研究はチームで行いますが、一人ひとりに強い信条や意思がなかったら良い研究成果は生まれません。たとえば、私が指示したテーマに対してその通りにやってくれるのはもちろん嬉しいのですが、「違うことを試した結果、性能が上がりました」と言ってくれることの方がさらに嬉しいものです。だからこそ、自由に楽しんで研究できる環境が大切だと考えています。
最近では若い子たちのほうがプログラムを書くのが速くて遅れをとっていますが(笑)。私自身も楽しみながら、研究や仕事をつづけていきたいと思っています。

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