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学生のみなさんへ2024インタビュー:梅松 旭美
2024年10月25日
チームリーダーから学会運営委員、博士課程まで幅広く挑戦
バイオメトリクス研究所
主任研究員
梅松 旭美
大学では物理学(計測・制御工学)を専攻し、ロボットの聴覚をテーマとした研究に従事。修士課程修了後の2013年4月にNECへ入社後は、音声認識の研究に携わる。その後、音声から人の健康状態や内面を知るための技術に興味を持ち、アフェクティブコンピューティングへと研究テーマをシフト。現在は主任研究員としてチームをリードする。IEEE-EMBS International Conference on Biomedical and Health Informatics (BHI) 2019でベストペーパーを受賞するなど、学会でも活躍している。
顔映像から健康状態を推定
私は現在、アフェクティブコンピューティングという分野を中心に研究を続けています。アフェクティブコンピューティングとは、人間の内面を分析し、尊重しながら人々の暮らしや健康を改善しようとする比較的新しい研究分野です。精神状態や健康状態を扱うことになるため、工学的・統計的にデータを扱うだけでは足りず、医学的な知識や心理学的な知識も重要になりますし、文化背景や生育環境を紐解くための社会科学も不可欠になるなど、横断的なノウハウが必要になります。
昔はウェアラブルセンサやマイクを利用してセンシングしていましたが、いま私たちのチームではスマートフォンのインカメラや室内のカメラに映る顔の映像から心拍数や酸素飽和度などのバイタルサインをセンシングし、ストレスや覚醒度などを推定する技術の研究開発に取り組んでいるところです。世界の人々の心身の健康を守り、ウェルビーイングに貢献できる可能性のある研究をリーダーとして推進することができることには、とても大きなやりがいを感じています。
とはいえ、NECには医学・心理学・社会科学などのノウハウが不足しています。そこで、私たちの研究チームでは複数の大学病院や専門家との共同研究を積極的に進めています。研究においては、社内のチームメンバーはもちろん、社外の有識者とも連携して広く世界を巻き込んでいくことが重要です。
個人の力を引き出すチームづくり
チームの運営にあたっては、メンバー一人ひとりの良さを引き出すことや、メンバーの自主性に任せることを心がけています。たとえ自分がわかっていることであってもメンバーに任せたり、同じくらいの年齢のメンバーで一緒に取り組んでもらったりすると、想像を超えるような斬新で尖った意見が出てくると日々感じています。ただ一人ひとりの個が集まるだけでは、1+1で2にしかなりません。自主性を重んじて任せることで、チームの相乗効果を最大まで引き出すことができると信じています。NECにいる方々は本当に皆さん優秀なので、自主性に任せることが一番だというのが私の実感です。
実はこのやり方は、私がマサチューセッツ工科大学(MIT)に1年半駐在したときに習得したものです。MITには、アフェクティブコンピューティングの研究を立ち上げるにあたって、世界的な権威に学ぶために客員研究員として約1年半勤務しました。NECの業務としての赴任になります。
この研究室での議論がとても刺激的で、個性豊かなメンバーそれぞれにどんどん主張させて議論を発展させるというスタイルをとっていました。ともすれば研究室では、教授がテーマを誘導してしまいがちです。企業研究でもそれは同じで、お客様のニーズや事業部の意向に応えることだけに留まって議論が広がらないケースもしばしば見かけます。何か決まった道筋に議論を落とし込むのではなく、優秀なメンバーが自由に意見を交わすことでこそ、世の中を変えるような新しいものが生まれていくと考えています。
学会運営委員のほか、博士課程にもチャレンジ
研究を進めるうえで大切にしたいと考えているのが、想像力です。私は常々、社会が多様化するなかで、自分が見えている範囲というのは実はとても狭いのではないかと疑うようにしています。自分が気づいていない視点があるのだと常に想像ができると、研究の行き詰まりも少なくなると感じています。そういう意味でも、私は学会をはじめとした社外活動にも積極的に取り組みたいと考えています。会社だけでなく、他の組織がどう考えているかを知ることができますし、社外からNECがどう見えるかも知ることができます。
昨年はIEEEのアジアパシフィックのWoman in Engineeringの委員を務めたのですが、海外における女性のエンジニアリングの考え方や捉え方がわかって、とてもいい刺激になりました。現在も東京のWoman in Engineeringの委員は務めていますが、これらの活動はすべてNECの肩書で取り組み、業務として取り組んでいます。
また、実はいま、裁量労働制を活用して平日の退社後や土日で社会人博士課程にも通っています。会社に博士課程の学費を支援する国内留学という制度もあるのですが、私は個人的に通うことを選びました。というのも、あくまでも仕事主体で頑張りつつ、大学で新しい学びができればくらいの気持ちでスタートしたかったからです。途中でやめるかもれないとも考えていたので、自費での通学にしました。
しかし、いざ入ってみると結局、研究室内のプレッシャーもあり、博士をとらなければという焦りも出てくるものです(笑) いま5年目なのですが、ついに今年の秋に学位審査を行う予定です。海外の経験を経て博士号の重みを実感したので、もう少し頑張っていきたいと思っています。
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私の一日ご紹介
休日何してる?
趣味は旅行です。NECはゴールデンウィークや夏、年末年始などにまとまった長期休暇がとれるので、その期間を利用して出掛けています。また、休日を使って大学での研究に取り組むことも多いですね。会社での研究とはまた違って、自由なテーマで取り組むのは楽しいですし、とても良い経験になっています。ゆくゆくは経営や経済などについても勉強していけたらいいなと考えているところです。
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