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「Truly Open, Truly Trusted」な世界を目指して

──「NEC Visionary Week 2022」オープニングセッションより

パンデミック、ウクライナ侵攻、サプライチェーンの混乱、地球温暖化──。世界は今、これまでにないほどの不確実性に直面しています。この時代に、そして来るべき未来にNECが果たすべき役割とは何か。9月に開催された「NEC Visionary Week 2022」のオープニングセッションで「Truly Open, Truly Trusted」をテーマに掲げた背景には、そのようなNECの課題意識がありました。同セッションの冒頭では、NECのトップである森田隆之が講演を行いました。続くトークセッションでは、森田、NECグループのシンクタンク・国際社会経済研究所の理事長に今年就任した藤沢久美、同じく理事を務める宇宙飛行士・野口聡一の3人が、テクノロジー、共感、共創をベースに未来を創造する道筋について語り合いました。

現在の課題を解決し、未来の価値を創造する

NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO
森田 隆之

「Truly Open, Truly Trusted」に込めた思い

NECは「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現」をパーパスとし、その実現に向けた「NEC 2030VISION」を描いています。世界に一歩先んじて「未来像」を提示し、「未来の共感」を醸成し、技術力とその社会実装を通じてよりよい未来を創り上げること。それが私たちのビジョンです。

このパーパスとビジョンを実現するために、私たちは「Truly Open, Truly Trusted」を新しいキーワードとして掲げました。オープンな市場環境は多様性を生み、イノベーションを加速させます。NECはパートナーとのオープンな共創を推進し、社会インパクトを最大化させ、All share benefitな世界を目指します。また、オープンな世界を実現していくためには技術やその担い手に対する信頼が欠かせません。NECは技術を正しいことに使う姿勢を世に示し、社会からの継続的な信頼を獲得します。

「Truly Open, Truly Trusted」な取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。私たちはその取り組みを、「DXによるお客様の現在の課題解決」と「その先の未来へ向けた社会価値の創造」の2つの軸で進めています。

DXによるお客様の現在の課題解決

まず「DXによる課題解決」事例の中から、新型コロナウイルスのワクチン接種円滑化システム「V-SYS」の構築、「NEC I:Delight」による生活者の体験価値の向上、Open RANのグローバルな普及活動などをご紹介します。

厚生労働省様とともに構築した「V-SYS」は、全国1700を超える自治体、8万の医療機関、4000以上の職域接種拠点、物流業者などが保有する情報をクラウド上で統合・伝達できるシステムです。わずか3カ月という短期間で初期リリースを実現したこのシステムによって、政府におけるタイムリーな接種状況の把握と、公平性を担保した迅速なワクチンの提供に貢献し、海外に後れを取っていたわが国のワクチン接種率を世界上位に押し上げることに成功しました。

「NEC I:Delight」は世界トップクラスを誇るNECの生体認証技術をいかして、人々のシームレスな活動の実現を目指すコンセプトです。これまで、空港、オフィスビル、観光地などに導入されてきたほか、最近では、Mastercard様のバイオメトリック・チェックアウト・プログラムにおいてテクノロジーパートナーに選定いただいています(※1)

オープンな無線アクセスネットワークであるOpen RANは、今年からグローバルな商用化のフェーズに入っています。国内におけるNTTドコモ様、楽天モバイル様の5Gサービスへの貢献の実績をいかし、英国のボーダフォン様から5G基地局装置を提供するパートナーに選定されたほか、スペインのテレフォニカ様とともに海外数カ国におけるOpen RANの実証を進めています。

その先の未来へ向けた社会価値の創造

「未来の価値創造」の具体的な事例としては、NECの強みであるAI技術を活用して2019年から本格参入したAI創薬事業や、カーボンニュートラル関連事業などが挙げられます。

AI創薬事業では、個別化がんワクチン事業において、欧米で臨床試験を開始しました。また、感染症流行対策国際基金「CEPI(セピ)」とともに、将来のパンデミック防止へ向けた次世代ワクチン開発を進めています。一方、塩野義製薬様とはB型肝炎治療ワクチンの共同研究の契約を締結しました。NECは「人に寄り添い心躍る暮らしを支える」の実現に向けて、グローバルヘルス領域での価値創造に取り組んでまいります。(※2)

カーボンニュートラルの取り組みにおいては、例えば、CO2排出量を可視化するソリューション「GreenGlobeX」によって、お客様の各拠点の環境データの効率的収集と見える化を実現しています。ほかにも、脱炭素経営ソリューション開発、サーキュラーエコノミー分野の事業化といった新たな取り組みを現在進めています。

私たちはまた、「未来の価値創造」へ向けた取り組みとしてThought Leadership活動を推進しています。この活動では、未来像を構想・発信し、市場形成を目指す仲間を集め、実証を行うことで社会実装を進めます。

「Truly Open, Truly Trusted」──。このキーワードのもと、ビジョンに共感いただけるパートナーの皆さまとともに、私たちはお客様や社会の課題解決と、その先の未来における新たな価値創造を目指していきます。

「共感」をベースにした「共創」の実現を

森田隆之×藤沢久美(国際社会経済研究所・理事長)×野口聡一(国際社会経済研究所・理事)

藤沢:「未来の価値創造」へ向けた取り組みであるThought Leadership活動を強化していく方針をNECは掲げています。この方針の意味を聞かせてください。

森田:企業に求められているのは、生活者や社会の立場に立って価値を生み出していくことです。生活者や社会の立場を理解するには、そこにしっかりと軸足を置いた活動が必要になります。それがNECのThought Leadership活動であり、それを担うのが国際社会経済研究所(以下、IISE)であると考えています。

藤沢:私はIISEのビジョンを「星座」のイメージで捉えています。昔から星座は、海運や農業の指針となってきました。これまで見てきた星座でも、時代に応じて眼鏡を変えて見上げると、新たな姿を見せてくれるかもしれない。私たちの役割は、星座の新しい見え方を提示することだと思います。そんな考え方を広く社会に提示できればいいなと思っています。

野口:Thought Leadershipとは、多くの人たちが迷ったときのナビゲーターになれるようなリーダーのあり方を社会に伝えていく活動なのだと思います。そう考えれば、まさに「道標としての星座」というのは、私たちのこれからの活動を表すのにぴったりなイメージですね。

藤沢:それを実現するために、社会に向けてどうメッセージを発信していけばいいか。野口さんは、発信において重要なのは「共感」であるとおっしゃっていますね。

野口:メッセージを一方的に発信しても受け入れてはもらえません。大切なのは「ストーリー」を一緒につくっていくことです。NECには技術力があり課題解決力があります。そのポテンシャルを世の中に伝え、世の中の皆さんとともに、「共感」をベースにした未来のストーリーを紡いでいく。そんな取り組みが求められると思います。

森田:社会価値の実現には技術の実装が必須ですが、そのためには、技術に対する正しい理解、社会のルールの変更、さらに人々のマインドセットの変革がなければなりません。その新しいマインドセットの基盤となるのが、まさに「共感」なのだと思います。

野口:「社会実装」と「共感」との結びつきを、私は米国で体験しました。ダラスにある全米サッカー協会の殿堂施設には、NECの顔認証技術が導入されています。それによって、最小限の手続きで入館して、館内を歩き回ることができるようになっています。おそらく、運営側、訪問者の双方がこの技術の利便性を実感されていると思います。人々が技術を体験して「この技術は使える」「あってよかった」と実感し、その技術がもたらす価値に共感する。そうして、その共感が広がっていく──。それが技術と社会が本当につながるということなのではないでしょうか。例えば、グローバルヘルスやカーボンニュートラルなどの領域でも、NECは共感をベースに、高い技術力で価値を生み出していくことができると思います。

森田:大切なのは「共感」、そしてそれに基づいた「共創」です。技術がオープンになり、かつその技術が信頼に足るものになれば、共創がさらに加速し、より大きな社会インパクトを実現できるはずです。「Truly Open, Truly Trusted」には、そのような意味が込められています。

藤沢:パートナーとともに価値を創造していくためには、注力すべき領域を定めることが必要です。IISEはとくに3つの領域に注力したいと考えています。「世界のお取引先の既存事業の成功確率を上げる」「未来社会を見据えた市場ビジョンの発信と仲間づくり」「グローバルリスクの把握とオポチュニティの探索」です。いずれの領域でも、さまざまなプレーヤーとの連携、共創が求められます。共創はまた、トランスフォーメーションを実現するための必要条件でもあります。NECは現在、まさに共創によって社会課題を解決する方向に大きくトランスフォームしています。例えば、創薬事業がその一つです。

森田:まさに、創薬事業は私たちが取り組んでいる共創の代表的事例です。創薬の領域ではITやAIの導入が進んでいます。そこに私たちのアセットをいかしながら、医療機関や薬品メーカーと連携し、新たな価値の創出を目指しています。すでに欧州と米国においてがんワクチンの治験が進んでいます。

藤沢:企業間連携を進める際の意思決定のスピードも格段に上がっていますよね。NECの中に新しい文化が生まれていることを感じます。

森田:未知の領域に最新技術を適用していく際には、アジャイルなアプローチが求められます。失敗しても、それを修正しながら成功に向かって歩を進めていく。そんなアプローチです。

藤沢:もう一つ、これからNECがチャレンジしていかなければならない領域にカーボンニュートラルがあります。IISEでは、野口さんにこの分野を担当してもらうことになります。

野口:カーボンニュートラルに真摯に取り組むことは、世界中の企業の命題になっています。それに対してNECが貢献できるのは、リソースのアグリゲーション(集約)だと思います。発電、電力使用、送電など、エネルギーに関わる技術リソースを集約し、社会のエネルギー活用の全体を効率化し、CO2排出量を抑制するという方向性です。

森田:たいへん重要な視点だと思います。加えるならば、インフラストラクチャーのメンテナンスやリノベーションにも私たちの力を発揮できると考えています。現在、世界のCO2排出量の10%超がインフラストラクチャーの老朽化と再構築によるものであると言われています。私たちが有するさまざまなセンシング技術を用いれば、インフラの変化を的確に捉え、リノベーションの最適化を実現することが可能です。

藤沢:いずれも、カーボンニュートラル推進に大いに貢献できる取り組みと言えそうですね。さて、今後NECはお客様のトランスフォーメーションをどう支援していくのか。その方向性についてもお聞かせください。

森田:私たちは中期経営計画においてDXを3つの視点で説明しています。すなわち、「お客様のDX」「NECのDX」「社会のDX」です。私たちはお客様と社会のDX推進に貢献しなければなりませんが、そのためにはNECを「実験場」としてDXの道筋を見極めていくことが必要です。例えば、働き方改革や生産性向上を実現するために、制度やマインドセットをどう変革していけばいいのか。そのために必要とされるのはどのような技術なのか。そしてその技術をどう使っていけばいいのか──。それらを自ら検証し、その結果をお客様と共有していくことで、お客様への提供価値を最大化します。そして、ここで得た知見やノウハウを集約し、共通基盤「NEC Digital Platform」をさらに強化します。このプラットフォームでは、NECの技術だけでなく、パートナーの技術もトラステッドな形で使えることを保証し、お客様のDXの加速に貢献します。

藤沢:最後に「Truly Open, Truly Trusted」というテーマにかける思いをあらためて聞かせてください。

森田:「Open」にはいくつかの意味があると考えています。私たち一人ひとりの心がオープンであること。多様なプレーヤーとのオープンな共創が進んでいくこと。テクノロジー自体がオープンであること──。それらがすべて揃って初めて「Truly」な、つまり「真のオープン」が実現するのだと思います。そして、これを加速させていくためには、相互信頼関係が必要です。これにより、テクノロジーの社会実装がより一層進むと期待しています。

野口:「オープン」で「信頼」に基づいた関係を積極的につくっていこうという意思が何よりも大事だと思います。それがなければ、技術の独占が生じたり、技術開発にかたよりが生まれたりするからです。NECは「ともに未来をOrchestrateしてこう」というメッセージをこれまで世の中に発信してきました。「Truly Open, Truly Trusted」にもそのメッセージと同じ思いが込められている。そう捉えています。

藤沢:「Truly Open, Truly Trusted」を推進することで、NECが世界のさまざまなプレーヤーをつなげるハブになれたら素敵ですよね。IISEの活動を担う私たちも、NECグループの一員として、オープンでトラステッドな世の中の実現に貢献していきたいと思います。

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