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Transgene社とNEC、個別化がんワクチンに用いたネオアンチゲン予測システムが、有望な抗原を特定できることを実証
2020年5月15日
日本電気株式会社
- ネオアンチゲン予測システムは、多数の抗原候補の中から免疫反応を引き起こす有望な抗原を特定します。
- 第Ⅰ相臨床試験が実施されているTG4050では、Transgene社独自のmyvac®プラットフォームとNECの最先端AI技術を組み合わせて患者さん毎のネオアンチゲンを選択しています。
- 本成果を米国がん研究協会(AACR)オンライン年次総会 2020 第2部にて発表します。
がん治療向けウイルスベース免疫治療の設計開発を手掛けるバイオテクノロジー企業であるTransgene SA(トランスジーン、注1、以下Transgene社)と日本電気株式会社(以下 NEC)は、個別化がんワクチンTG4050(注2)に使用しているネオアンチゲン予測システム(注3)が、多数の抗原候補から免疫反応を引き起こす有望な抗原を特定できることを予備試験で実証しました。本成果は、Transgene社・NEC・NEC欧州研究所のチームによって得られたもので、米国がん研究協会(AACR)オンライン年次総会 2020 第2部にて発表します。
TG4050はmyvac®プラットフォーム(注4)と、NECの最先端AI技術をベースとしたネオアンチゲン予測システムを用いて開発した個別化治療用ワクチンであり、現在2件の第Ⅰ相臨床試験が欧州と米国で実施されています。
TG4050は患者さん固有の最大30個のネオアンチゲン(がん細胞の変異)を標的にするように設計されています。それらは、がん領域で既に適用されている先進的AI技術であるNECのネオアンチゲン予測システムを用いて選択されています。予測システムは20年以上にわたるAIの専門知識に基づいており、独自の免疫データで訓練され、最も免疫原性の高い配列を効率的に優先順位付けして選択できます。
今回の予備試験では、ネオアンチゲン予測システムを用いて、がん患者さんから収集した正常組織と腫瘍組織の遺伝子データから変異した部分を同定し、複数の抗原候補からランク付けを行いました。次に、予測された抗原に対するT細胞応答(免疫反応)を測定し、予測精度を評価しました。これらの結果、ネオアンチゲン予測システムはがん患者さんから同定された多数の抗原候補の中から、免疫反応を引き起こす有望な抗原を特定できることが示されました。
Transgene社は、myvac®を用いたウイルスベクター技術の専門性を活かしてMVA (Modified Vaccinia Virus Ankara, 改変ワクシニアウイルスアンカラ)ウイルスベクターのゲノムに、選択されたネオアンチゲンの配列を組み込みます。また、Transgene社はこの新しい治療用ワクチンの臨床開発に必要なTG4050の患者さん毎のロット製造のための独自の社内GMP(Good Manufacturing Practice, 医薬品製造管理および品質管理基準)ユニットを立ち上げました。
- ポスタータイトル:Performance of neoantigen prediction for the design of TG4050, a patient specific neoantigen cancer vaccine
- 著者:Brandon Malone, Caroline Tosch, Benoit Grellier, Kousuke Onoue, Timo Sztyler, Karola Rittner, Yoshiko Yamashita, Eric Quéméneur, Kaïdre Bendjama
- 日時:2020年6月22日~24日
- ポスター番号:4566
以上
- (注1)本社:フランス ストラスブール、会長 兼CEO:Philippe Archinard (フィリップ アーシナー)
Transgene社についての詳細は、こちらをご参照ください。http://www.transgene.fr/
- (注2)TG4050について
TG4050はTransgene社のmyvac®テクノロジーとNECのAIをベースとする個別化免疫療法です。このウイルスベースの治療用ワクチンは、NECのネオアンチゲン予測システムによって特定・選択されたネオアンチゲン(患者さん毎に異なる変異)をコードします。予測システムは20年以上にわたって培われたAIの専門知識に基づいており、正確に最も抗原性の高い配列の選択と優先順位付けを可能にする独自のデータによって訓練されています。TG4050は患者さん固有のネオアンチゲンに基づき、腫瘍細胞を認識し破壊することができるT細胞反応を引き起こすことを目的として、患者さんの免疫システムを刺激するよう設計されています。この個別化免疫療法は患者さん毎に開発され、短期間で製造されるものです。
卵巣がん(NCT03839524)とHPV陰性の頭頸部がん(NCT04183166)の患者さんを対象とした2つの第Ⅰ相臨床試験が実施されています。 - (注3)NECのネオアンチゲン予測システムについて
ネオアンチゲン予測には、NECが新たに開発したグラフベース関係性学習を利用します。このAIエンジンは、NECが独自に蓄積してきたMHC(Major Histocompatibility Complex, 主要組織適合性遺伝子複合体)結合能の実験データをもとに学習させた予測技術を中心に多面的な項目を総合評価し、患者さんそれぞれが持つ多数の候補の中で、有望なネオアンチゲンを選定することができるものです。 - (注4)myvac®について
myvac®は、Transgene社が開発したウイルスベクターを基にした、固形がんに対する個別化免疫療法のプラットフォームです。myvac®を用いた治療法は、患者さん自身の免疫システムを刺激し、患者さんそれぞれのがんに特徴的な遺伝子変異を用いてがん細胞を識別、攻撃するように設計されたものです。Transgeneはバイオ工学、デジタルトランスフォーメーション、確立されたベクター設計ノウハウおよび独自の製造設備をつなぐ革新的なネットワークを立ち上げました。Transgene社はmyvac®の開発のためにBpifranceより「Investment for the Future」基金を授与されています。myvac®の最初のプロダクトであるTG4050は、現在2つの固形がんの臨床試験で評価されています。
NECの創薬事業について
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC AI創薬事業部
E-Mail:contact@aidd.jp.nec.com

NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。
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