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セントラルキッチンとは?メリット・デメリットから導入事例まで解説

飲食チェーン店を運営している方のなかには、「セントラルキッチン」 に興味がある方もいるでしょう。

セントラルキッチンは、各店舗の調理工程を集中させるための施設です。セントラルキッチンを導入することにより、効率的な店舗運営を実現しつつ、運営コストを削減できることから、多店舗展開を目指す飲食店から注目を集めています。

本記事では、セントラルキッチンを活用するメリットやデメリットについて詳しく紹介します。また、大手企業の導入事例も紹介しますので、具体的な導入イメージを掴むことが可能です。

「セントラルキッチンの導入を検討している」「調理業務をより効率的にしたい」飲食店オーナーは、ぜひ最後までご覧ください。

セントラルキッチンとは

セントラルキッチンとは、複数の飲食店で提供されるメニューを1箇所で製造・加工するための施設のことです。

1962年にロイヤルホストを運営する株式会社ロイヤルが初めて日本で導入して以来、これまで「すかいらーくグループ」や「日清医療食品」などさまざまな飲食チェーンが活用しています。

以下では、セントラルキッチンの仕組みと調理方式を紹介します。

参考元:new window工場 | 食品事業 | ロイヤル株式会社(ロイヤルグループ)

セントラルキッチンの仕組み

セントラルキッチンは、キッチンで原材料の入荷から調理、配送準備までを担当し、各店舗で再加熱、仕上げ、盛り付け、提供を行う仕組みです。

セントラルキッチンは複数の料理を大量製造できるため、多店舗展開を狙う飲食店が効率良く展開・運営するうえで欠かせない施設です。配送工程が発生することから、温度の変化で劣化しにくい「常温保存できるパンや冷凍で保存できるデザート類」の調理で活用されることが一般的です。

それぞれの食品に対してセントラルキッチン内で担う調理工程は、扱う食材や原材料によって異なり、食材のカット仕上げまで行う場合や味付けまで含む場合などさまざまです。

セントラルキッチンは従来各店舗で行っていたさまざまな調理工程のコア業務を集約し、各店舗の調理工程の簡略化・省力化に貢献します。

セントラルキッチンの調理方式

セントラルキッチンで使われる調理方式は、冷凍方法や保存方法の違いにより、大きく以下の3つに分けられます。

  • クックチル
  • クックフリーズ
  • 真空調理法

それぞれの違いを理解し、各食品や食材に合った調理方式を採用することで、安定した品質で各店舗・顧客へ提供することが可能です。

以下では、それぞれの特徴やメリットを詳しく紹介します。

クックチル

クックチルとは、加熱調理済みの食品を急速冷却後、0℃〜3℃の温度で保存する調理方式です。チルド状態で冷蔵保管するため、味や食感が保たれた状態で顧客へ提供できます。

また、調理後90分以内の短時間で急速冷却することで、食中毒の原因となる細菌の増殖を抑制でき、長時間食品の鮮度と品質を保てる点が大きなメリットです。

クックチルは、冷却・保存・加熱時における「温度」と「時間」をHACCPに基づいて的確に管理することで、品質の高い食品を提供できます。

クックフリーズ

クックフリーズとは、加熱調理後の食品をマイナス18℃まで冷凍して保存する調理方式を指します。袋詰めした食品を冷凍保存するため、8週間程度の長期保存が可能です。

クックチルよりも長期間での計画製造が可能なことから、主に配送頻度を減らしたい場合や大量調理の場合、メニューのラインナップを増やしたい場合に活用されます。

ただし、食材や冷凍方法によっては冷凍する過程で細胞破壊を促し、おいしさや食感などの品質が損なわれるデメリットに注意が必要です。

真空調理法

真空調理法とは、下処理済みの食材を調味料と一緒に真空パックしたあとに、95℃以下の低温加熱・冷却する調理方式です。低温で加熱することで、素材そのものの風味や栄養を逃さずに提供できる点が特徴です。

真空パック状態で加熱することから、蒸し料理や煮込み料理が基本で、やわらかい食感で提供したい肉や煮崩れしやすい食材に適しています。

また、基本的に袋のまま湯煎して盛り付けるだけで提供できるため、調理や後片付けの手間を減らせ、店舗運営の効率化を進められます。

セントラルキッチンのメリット

セントラルキッチンを導入することで、以下のような運営上のメリットが得られます。

  • 運営コストの削減
  • 品質の安定化
  • 効率的な運営

セントラルキッチンは、各店舗の調理工程を最小限にできるため、全体的な運営効率の向上やコストの削減につながります。

以下では、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

運営コストの削減

セントラルキッチンを新たに導入することで、人件費・設備費・仕入れ費を削減できる点が大きなメリットです。

各店舗の調理工程が集約されることで、店舗の調理オペレーションを削減・簡素化でき、従業員の数を減らせます。そのため、特に調理工程が多く、従業員を大量に配置させていた場合には、各店舗の従業員にかかっていた人件費を大幅に削減できます。

また、店舗ごとではなく一括で食材の仕入れができるようになるため、大量仕入れによる割引を受けられ、仕入れコストの削減も可能です。

ほかにも、各店舗では大規模な厨房施設が不要になるため、店舗の調理スペースを縮小でき、賃料や調理設備費の削減にもつながります。

したがって、従来よりも運営コストを削減できる分、積極的な設備投資を行えるようになり、より効率的な運営が可能になります。

品質の安定化

セントラルキッチンの導入により、飲食メニューにおける品質の安定化が可能です。

特に、オープンしたての店舗では調理オペレーションに不慣れな従業員が多く、他店舗よりも質が下がり、顧客離れやクレーム増加につながる可能性が高まります。

一方、セントラルキッチンを導入する場合には、キッチンで全店舗の飲食物をまとめて調理するため、店舗間の品質差を解消することが可能です。どの店舗でも同じ質の高い料理をいつでも提供できるようになり、顧客満足度の向上につながります。

また調理工程やレシピ、調理ノウハウの標準化ができるため、熟練の従業員による調理ノウハウの属人化をなくし、退職に伴う品質低下を防げる点もメリットです。

効率的な運営

セントラルキッチンの導入により、調理に関連する店舗運営の工数を大幅に削減できるため、効率的な運営を実現できます。

まず、セントラルキッチンへ各店舗の調理作業を集約することで、各店舗で用意しなければならない調理設備を減らすことが可能です。そのため、新しい飲食メニューのために追加の調理設備が必要になる場合でも、用意する手間を最小限に抑えられ、スムーズに提供を開始できます。

また、各店舗で従業員を採用する必要が減り、面接や研修といった人材確保の負担も削減可能です。そのため、採用に時間をとられることが減り、飲食メニューの考案や売上管理など店舗運営のコア業務へより集中することが可能になります。

ほかには、小規模な厨房スペースで済むため、出店コストを削減でき、より柔軟かつ小規模店舗での展開が可能になります。

セントラルキッチンのデメリット

セントラルキッチンには運営面で多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。

  • 初期投資が必要
  • 厳格な衛生管理と品質維持
  • 柔軟性をとることが困難

セントラルキッチンは調理工程の多くを担うことから、初期費用が高額になるほか、各店舗で柔軟にメニューを開発できなくなることが懸念されます。以下では、それぞれのデメリットを詳しく紹介します。

初期投資が必要

セントラルキッチンを導入する際には、以下のものを用意する必要があるため、高額な初期投資が必要です。

  • セントラルキッチン用の建物を建てられる広大な「土地」
  • 業務用冷蔵庫など大型の調理設備が入る広い「建物」
  • ガスコンロやシンクなどの「調理設備」
  • 各店舗へ商品を届ける際に使う「運搬車」

たとえば、15坪程度の小規模なセントラルキッチンでも、150万〜750万円程度の高額な建設費がかかります。

建設費用に加えて、調理設備費や運搬車の購入費も必要なため、トータルで1,000万円近くになることもしばしばです。

そのため、セントラルキッチン導入の成功が確約されていない状況で、高額なコストを負担しなければならない点が大きな導入障壁になります。

厳格な衛生管理と品質維持

セントラルキッチンを通じて提供する場合には、調理から提供までの時間が長くなるため、厳格な衛生管理と品質維持が必要です。

まず、食中毒を防止するうえでは、「加熱調理・冷却・保存」の3段階で厳格に食材の温度を管理しなければなりません。それぞれの段階では、専用の温度計で中心部の温度を目視確認するだけではなく、温度と時間の記録が必要です。

また、包装方法など配送時の品質維持にも工夫が必要です。たとえば、食材の鮮度を保つうえでは、食材を充填包装や真空包装したあとに高温で殺菌処理を行うことが推奨されています。

したがって、セントラルキッチンの衛生管理と品質維持を徹底するためには、時間と手間がかかるほか、従業員の精神的負担が大きくなる点もデメリットとして挙げられます。

柔軟性をとることが困難

セントラルキッチンでまとめて調理を行う形式にすると、各店舗の柔軟性が低くなるデメリットにも注意が必要です。

各店舗で調理を行う場合には、各店舗の方針でメニュー開発やラインナップ変更などのメニュー展開を比較的自由に行うことが可能です。

一方、セントラルキッチンを導入する場合には、メニュー内容が統一されてしまうため、個別店舗のニーズに対応しにくくなります。そのため、ご当地食材を使ったメニューや常連客の好みに合わせたメニューなど独自商品の提供が難しくなり、顧客の定着化が難しくなる可能性もあります。

また、セントラルキッチンは各店舗の調理機能を集約する設備であるため、コストバランスを考慮した一定の稼働率や製造量が必要です。そのため、複数店舗の業績不振に伴い生産性が低下する場合などで稼働数・製造量が減少した際は、各店舗での調理よりも非効率になる可能性があります。

セントラルキッチンに必要な設備

ここでは、セントラルキッチンを導入する際に必要な設備について、以下2つの設備カテゴリに分けて紹介します。

  • 基本的な調理設備
  • セントラルキッチン特有の設備

なお、それぞれについては、厚生労働省発行の「 PDF大量調理施設衛生管理マニュアル(2016年10月6日)」や「 PDF生食発0616第1号(2017年6月16日)」に基づいてまとめています。徹底されるべき衛生環境について詳細に記載されていますので、以下の解説内容と併せてご覧ください。

基本的な調理設備

セントラルキッチンを導入する場合にも、一般的な店舗の調理設備と同じものが必要です。セントラルキッチンで必要になる基本的な調理設備の例は、以下のとおりです。

  • シンク
  • コンロ
  • フライヤー
  • 調理・作業台
  • 炊飯器・電気回転釜
  • 冷凍冷蔵庫(野菜・魚・肉用)
  • スチームコンベクションオーブン
  • 器具消毒保管庫
  • 電気温水器

各設備の大きさは、調理法やメニューによって異なります。たとえば、原材料が多いメニューを製造する場合には、大型のスチームコンベクションオーブンやコンロが必要です。

そのため、大型設備を導入できない小規模なセントラルキッチンでは、必要に応じて設備レンタルサービスの利用を検討するとよいでしょう。

セントラルキッチン特有の設備

セントラルキッチンでは、食材をまとめて調理し各店舗へ配送するため、以下のように大量調理や食品保存に特化した設備が必要です。

  • 食品保存・包装設備
  • 大量調理設備

以下では、それぞれで準備する設備を詳しく紹介します。

食品保存・包装設備

セントラルキッチンの食品保存・包装設備に必要になる設備は、以下のとおりです。

  • 冷凍ストッカー
  • 急速冷凍機
  • 真空包装機

セントラルキッチンでは配送工程があるため、原材料や製造した食品を保存するための「冷凍ストッカー」が必要です。

冷凍ストッカーの大きさを決める際には、配送頻度に合わせることがポイントです。たとえば、週に1回~2回程度の低配送の場合には、大量の食材を製造し保存する必要があるため、2台以上の冷凍ストッカーを用意しましょう。

また、クックフリーズや真空調理法で食材を冷凍する場合には「急速冷凍機」、真空パックをする際には「真空包装機」が必要です。特に、急速冷凍機は各機種によって凍結スピードや冷凍方法が異なるため、製造や調理工程に適合したものを選ぶことが重要です。

大量調理設備

セントラルキッチンでは、大型調理設備として「ブラストチラー」が必要です。

ブラストチラーとは、調理直後の高温食品を3℃前後まで急速冷却する装置です。ブラストチラーを導入することで、食材の香りや水分を封じ込め、調理したての風味のまま提供できます。

また、同じ冷やす設備である「急速冷凍機」は、粗熱のとれた食品を冷凍させるための設備であり、食材を凍らせ、食中毒菌の増殖を停止させる目的で使用します。一方、ブラストチラーは食材の予冷により、食中毒菌の発生を抑えるための装置です。そのため、大量調理の衛生管理を徹底するうえではどちらも必要な設備となります。

ブラストチラーのなかには、急速冷凍機能が搭載されているタイプもあるため、予算を考慮して導入を検討するとよいでしょう。

セントラルキッチンのコストを抑えるには

前述のデメリットで紹介したように、セントラルキッチンを導入する際には多額の初期コストがかかります。しかし、セントラルキッチンにかかるコストは、以下の3つのポイントを押さえることで削減することが可能です。

  • 適切な物件選び
  • 設備投資の最適化
  • 助成金や補助金の活用

以下では、それぞれの方法について詳しく紹介します。

適切な物件選び

セントラルキッチン導入に伴う高額な初期コストを抑えるうえでは、適切な物件選びがポイントです。

  • 居抜き物件を活用する
  • 各店舗から離れすぎていない距離の物件を選ぶ

一般的な飲食店の店舗選びと同様に、物件を購入する際には「食品工場向けの居抜き物件」を活用するとよいでしょう。居抜き物件では調理設備が一式そろっているほか、電源や排煙などの工事も完了しているため、内外装工事費を大幅に節約できます。

また、各店舗とセントラルキッチンの距離を基準に選ぶことも重要です。店舗から離れすぎている場合には、運送車のガソリン代や高速代が増大し、運営にかかるランニングコストが高くなります。そのため、各店舗からできる限り近辺にある物件を選ぶとよいでしょう。

設備投資の最適化

セントラルキッチンでは設備費も数百万円と高くなるため、設備投資の最適化がコスト削減において大切なポイントです。

特に、すべての設備を新調するとコストが大きくなるため、必要に応じてリースやレンタル、中古などを利用しましょう。

ただし、リースやレンタル契約の場合には、毎月の利用料が発生するため、利用料が初期投資を超えないように計画することが必要です。比較検討したい設備がある場合など期間限定で利用する際には、リースやレンタル契約によりトータルの設備コストを抑えられるため、一括購入よりもリース・レンタル契約が適しています。

また、最初からすべてを購入するのではなく、段階的に導入するのもおすすめです。最低限必要な設備を優先的に購入し、メニュー開発や予算に合わせて増やしていくことで、設備投資の無駄を避けられます。

助成金や補助金の活用

セントラルキッチンに必要な自己負担を軽減するためには、各自治体から提供される助成金や補助金を活用しましょう。セントラルキッチンの導入時に利用できる助成金・補助金の例は以下のとおりです。

  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 業務改善助成金

以下では、それぞれの補助対象要件や補助額などを紹介します。

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、ポストコロナに対応するために事業再構築を実施する事業者向けの補助金制度です。

具体的には、新しい飲食市場への進出や他業界・業種からの事業転換、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた飲食事業の再編のために活用できます。

2024年10月時点では「成長分野進出枠」など全5種類の補助枠が提供され、補助上限額は1,500万~3億円と比較的大きな金額を受けとることが可能です。

補助対象には、建物費(建築・改修)や機械装置導入費、研修費(教育訓練費)が含まれ、セントラルキッチン導入費の大部分を占める物件費と調理設備費を工面する際に役立ちます。

参考元:new windowトップページ | 事業再構築補助金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が国の制度変更に伴い、販路開拓や業務効率化などに取り組むうえで必要になる経費の一部を助成する制度です。

たとえば、業務効率化の取り組みには「食品提供のプロセス改善」や「IT利活用」が対象に含まれ、飲食店の場合にはセントラルキッチンのほかに、設備としてIoT温度管理システムの導入が候補として挙げられます。

通常枠以外にも4つの枠が用意されており、補助上限は50万〜200万円です。

特に、セントラルキッチンの業務効率向上のために、各種ITシステムを導入する際に役立ちます。

参考元:new window小規模事業者持続化補助金【一般型】 持続化補助金とは

業務改善助成金

業務改善助成金とは、小規模事業者が機械設備導入など生産性向上につながる設備投資と、事業場内最低賃金を規定額以上へ引き上げた場合に、設備投資に要した費用の一部を助成する制度です。

たとえば、飲食店の事例では、「スチームコンベクションオーブンや業務用製氷機・冷蔵庫・冷凍庫・食器洗浄機」を導入した場合に補助を受けられています。

ただし、設備投資のみでは認められず、厚生労働省が定める事業場内最低賃金の引き上げ計画も必要になる点に注意が必要です。

それぞれの条件を満たす場合には、引き上げ額や引き上げる人数などに合わせて、30万〜600万円が助成されます。

セントラルキッチンの設備投資費を確保する目的のほかに、社員の働き方改革も推進したい場合に最適です。

参考元:new window業務改善助成金|厚生労働省

セントラルキッチンの衛生管理

セントラルキッチンを安全に運営するうえで押さえておきたい衛生管理は、以下のとおりです。

  • 温度管理の徹底
  • 従業員の衛生教育と健康管理
  • HACCPに基づいた衛生管理システム

ここでは、それぞれのポイントや効果について紹介します。

温度管理の徹底

セントラルキッチンで安全に食品を提供するには、温度管理に関する以下の3つのポイントを押さえることが大切です。

  • 食材の中心温度に注意して加熱料理する
  • 調理後は速やかに冷却する
  • 冷蔵・冷凍保存時の温度管理を徹底する

まず、食材を加熱調理する際は、中心温度を75°C以上にし、その温度状態で1分以上加熱しなければなりません。このように調理することで、サルモネラ菌などの食中毒菌の増殖を防げます。

調理後は食中毒菌が増殖しやすい温度帯を短くするために、急速冷却・急速冷凍により、30分以内に中心温度を20℃付近まで下げる必要があります。

また、冷蔵・冷凍保存時にも温度管理を徹底し、食品の安全性の確保が必要です。たとえば、提供まで30分以上要する食品は、10℃以下で保存しなければなりません。

これらの温度管理については、「PDF大量調理施設衛生管理マニュアル」にて食品ジャンルごとに詳細に記載されているため、導入前には必ず確認しておきましょう。

従業員の衛生教育と健康管理

セントラルキッチンの衛生管理を徹底するうえでは、従業員へ定期的な衛生教育を実施し、従業員の衛生意識を高めることが大切です。

衛生教育では、厚生労働省の「PDF大量調理施設衛生管理マニュアル」や「PDF生食発0616第1号」をもとに、以下の3つを徹底して教育しましょう。

  • 手洗い
  • 調理器具・設備の洗浄や殺菌
  • 原材料や食品の調理・保管管理

上記3つに関して従業員が遵守できれば、衛生管理の重点管理点である「異物混入や食中毒菌による汚染」を防ぎ、感染拡大を最小限に抑えられます。

また、「PDF大量調理施設衛生管理マニュアル」を用いて従業員の衛生・健康管理を徹底することも重要です。マニュアル内の「従業員等の衛生管理点検表」では、体調や服装、毛髪に関する点検項目が細かく記載されています。最低限として点検表の内容を確認し、従業員が遵守できるように文書化しておきましょう。

HACCPに基づいた衛生管理システム

セントラルキッチンを効率良くかつ安全に運営するうえでは、「HACCPに基づいた衛生管理システム」の導入が有効です。

HACCPに基づいた衛生管理システムでは、生物的・物理的・化学的危害要因を特定し、温度管理などの重要管理点を設定できます。

消毒・調理・保存の各工程での衛生管理基準が明確になるほか、衛生マニュアルや点検表の一元管理が可能となり、定期的なモニタリング業務の効率化を実現します。

また、HACCPに基づき問題が発生した際の措置を事前に定めることで、迅速に対応できるようになり、大規模な事故への発展を防ぐことが可能です。

大手企業のセントラルキッチン導入事例

食品を提供する大手小売・飲食企業の多くではセントラルキッチンを導入し、食品の安定供給や生産性向上を実現しています。

ここでは、以下の大手企業におけるセントラルキッチン導入事例を紹介します。

  • セブン&アイ・ホールディングス
  • 成城石井
  • すかいらーくグループ
  • 日清医療食品

それぞれの導入事例から、セントラルキッチンを活用するメリットや効果について見ていきましょう。

セブン&アイ・ホールディングス

2024年2月27日、セブン&アイ・ホールディングスはグループ初の共通セントラルキッチン「Peace Deli千葉キッチン」の稼働を開始しました。これにより、首都圏にあるイトーヨーカドーの約200店舗へ商品を供給することが可能になりました。

「Peace Deli千葉キッチン」は、惣菜・ミールキットを製造する「セントラルキッチン」と、精肉を加工する「プロセスセンター」の機能を併せ持つ点が特徴です。

店内の加工機能もセンター化することで、店舗オペレーションの生産性向上とともに、グループの商品開発力を活かした季節ごとのタイムリーな商品開発を実現しています。

セントラルキッチンを通じて高品質・高鮮度の商品を効率良く安定供給することで、顧客の利便性向上や新しい食のニーズへの柔軟な対応を目指しています。

参考元:new windowグループ”初”の共通セントラルキッチン | 企業 | セブン&アイ・ホールディングス

成城石井

成城石井は、複数のセントラルキッチンの開発製造機能を集約した統合型セントラルキッチン「成城石井 大和第3セントラルキッチン」を2022年8月より本格稼働しました。

自家製惣菜・デザート部門の製造能力と供給能力の拡大を目的に、基幹キッチンである「惣菜やパン、デザート」の製造機能を集約しました。従業員が大切にしてきた手作業による工程を維持しつつ、新たな調理設備を新規導入している点が特徴です。

これにより、従来の設備機器やスペースの不足を解決し、既存商品の製造量アップのほか、自家製麺の新開発やデザート品目の補充による多種多様な商品ラインナップの提供が可能になります。

また、自社製造システムの推進が可能になることから、自社製造比率が2022年時点の約20%前後から3年間で約30%にまで向上する見込みです。

施策から販売までのスピードアップや製造コスト削減につながり、顧客へより新鮮な商品を良心的な価格で提供できるようになることが期待されています。

参考元:new window成城石井、新たなセントラルキッチンを神奈川県大和市に操業開始。デザート品目は2倍・惣菜品目2割増しへ!環境配慮への取組みも強化 | 株式会社成城石井のプレスリリース

すかいらーくグループ

すかいらーくグループでは、関東圏を中心に全国10箇所でセントラルキッチンを稼働し、約2,600店あるグループのレストランへ新鮮な食材を届けています。

多いところでは約500店舗分の製造を担っていますが、トラック一台で複数の店舗へ配送することで、物流の効率化のほかに、人件費や運送費の削減につなげています。

また食材や食品のほかに、おしぼりやボールペン、トイレットペーパーなどの物品も配送し、厨房とバックヤードの役割を兼任している点が大きな特徴です。大量の在庫を抱えることになりますが、毎日製造・配送することで余剰在庫を抑えています。

このようにすかいらーくグループでは、食材や物品に関する物流を一本化することで、仕入れ・物流コストの削減に成功しています。

参考元:new window流通|安全・安心リレー|安全・安心への取り組み|すかいらーくグループ

日清医療食品

日清医療食品のセントラルキッチン「ヘルスケアフードファクトリー関東」では、介護施設や病院へ1日10万食を製造し届けています。施設での調理を簡単な盛り付け程度にすることで、限られた労働力で医療・福祉の喫食者に合わせた食事提供を可能にしています。

大型冷凍自動倉庫の導入により冷凍倉庫内の人力による入庫作業をなくしたほか、搬送工程にローラーコンベアを導入するなど、各種自動機器を積極的に活用している点が大きな特徴です。これにより、人と物が動く距離を大幅に削減し、生産効率の向上や省人化・省力化につなげています。

また、加熱から調理や異物混入検査、包装まで自動化し、人の介入を最小限に抑えることで高い品質管理を実現しています。

セントラルキッチンの導入で安定した品質とコスト削減を実現しましょう(まとめ)

セントラルキッチンは、各店舗の調理を1箇所へ集約し、食品の安定かつ効率的な供給を可能にする施設です。

複数の調理機能を担う分、調理設備などに対する初期投資が膨大になりますが、長期的に見ると仕入れコストや店舗の賃料を削減でき、運営にかかるコストを抑えられます。このような特徴から、セブン&アイ・ホールディングスなど多くの大手飲食チェーンで導入されています。

また、セントラルキッチンと同じく店舗運営の効率化に役立つのが「POSシステム」です。POSシステムを活用することで、店舗の販売情報を一元管理でき、会計業務や在庫管理の効率化を実現できます。

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