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食品ロスの原因は?飲食店における原因と対策について詳しく解説
食品ロスとは、「本来まだ食べられるのに、捨てられてしまう食品」のことです。日本はもちろん、世界規模で大きな問題となっています。
飲食店事業に携わっている方の中には、お客様の食べ残しや賞味期限切れの食材を見て「もったいない」「減らしたい」とお悩みの方も多いでしょう。
食品ロスへの理解を深めて削減に取り組むことは「もったいない」を減らすだけでなく、社会貢献やお店の利益にも繋がるのをご存じでしょうか?
本記事では、食品ロスの原因や飲食店でできる削減対策について詳しく解説していきます。
最後まで読めば、「飲食店の食品ロスはなぜ起こっている?」「食品ロスを減らすにはどうしたらいい?」といった疑問が解消されるでしょう。
食品ロスとは
食品ロスとは、名前のとおり「まだ食べられるのに廃棄される食品」のことです。
家庭の食べ残しや賞味期限切れはもちろん、飲食店でのオーダーミスや在庫の過剰発注、返品などで、多くの食品ロスが発生しています。
日本では令和元年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」を施行後、毎年度ごとに発生抑制の目標を設定して食品ロス削減の推進を図っていますが、年間約472万トンの食品ロスが発生しているのが現状です。(令和4年推計値)
参考元:我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和4年度)の公表について | 報道発表資料 | 環境省
まだ食べられる食品を廃棄することは、環境問題や経済問題にも影響を与えます。
- 運搬・焼却・埋め立て時に大量の温室効果ガスが発生する
- 生産や廃棄に無駄なコストがかかる
食品ロスを廃棄するときには、二酸化炭素やメタンガスといった大量の温室効果ガスが発生し、地球の温暖化を進めます。
また、食べきれない商品を生産したり廃棄したりするには、原料費や人件費、輸送費など、無駄なコストがかかるため、経済的な損失も非常に大きいです。
食品ロスは「食べられるのにもったいない!」というばかりではなく、世界レベルで多くの影響があります。
世界での食品ロスの現状と原因
農林水産省が2020年10月に公表しているデータによると、世界では年間約13億トンもの食品ロスが発生していることがわかっています。
まだ食べられる食品が廃棄されているなか、世界人口の9人に1人が充分な食糧を得られずに栄養不足で苦しんでいるのが現状です。
参考元:食品ロスの現状を知る:農林水産省
実は、食品ロスは先進国だけでなく途上国でも発生しており、原因は大きく異なります。
食品ロスが発生する原因 | |
先進国 |
|
発展途上国 |
|
先進国では、消費し切れないほどの大量生産や無計画な大量購入など、生産・加工・流通・消費さまざまな段階で食品ロスが発生しています。
見た目の悪い生鮮食品を生産や加工の段階で廃棄する基準である「外観品質基準」も食品ロスを加速させている原因です。
一方、発展途上国では技術不足が食品ロスの大きな原因となっています。
たとえば、食物を生産しても収穫技術が低いと収穫時期に獲りきれないまま腐らせてしまい、食品ロスになるのです。
また、マーケティング技術不足によって需要の少ない地域に流通させてしまい、結果として商品が売れ残り廃棄しなくてはいけなくなります。
このように原因はさまざまですが、食品ロスは世界中で起こっている深刻な問題なのです。
日本での食品ロスの原因
日本の食品ロスは大きく2つに分類できます。
- 事業系食品ロス・・・飲食店など事業から出る食品の廃棄
- 家庭系食品ロス・・・家庭から出る食品の廃棄
大量の食品ロスはなぜ発生するのでしょうか。事業系食品ロスと家庭系食品ロスのそれぞれの原因を解説していきます。
事業系食品ロスの原因
事業系食品ロスは、製造や加工時の規格外品や売れ残りなど、フードサプライチェーンの各段階で発生しています。
フードサプライチェーンの段階 | 食品ロスの発生原因 |
生産 |
|
製造 |
|
配送 |
|
販売 |
|
消費 |
|
参考元:特集「食品ロスって何が問題なの?」:農林水産省
また、食品の流通における「3分の1ルール」も食品ロス問題を深める原因です。
3分の1ルールとは「製造日から賞味期限を3等分する商習慣」のことで、1日でも過ぎたら食品は廃棄されます。
- 最初の3分の1・・・卸業者が小売店に納品できる期間
- 次の3分の1・・・小売店が商品を店頭に並べる期間
- 最後の3分の1・・・消費者が食品を美味しく食べられる期間
たとえば、製造日から賞味期限が9ヶ月の食品の場合、小売店は最初から数えて6ヶ月を1日でも過ぎたらすべて廃棄しなくてはいけません。
事業系食品ロスは、食品の安全性やクオリティを守るための厳しすぎる基準が作り出しているといえます。
家庭系食品ロスの原因
家庭系食品ロスの原因は、おもに以下の3つです。
- 食べ残し
- 過剰除去
- 直接廃棄
食べ残しは、さまざまな食品ロスのなかでもっとも多い原因です。料理を食べきれずに廃棄すると、食品ロスになります。
過剰除去は、家庭内で多く発生する食品ロスの一つです。野菜の外側の葉を除去したり皮をむいたりする過程で、食べられる部分まで取り除いてしまうと、過剰除去になります。
直接廃棄とは、賞味期限や消費期限が過ぎてしまって廃棄することです。直接廃棄は食事として食卓にのぼることなく廃棄されてしまいます。
家庭内食品ロスを減らすには、冷蔵庫内に入っている食糧在庫の把握や食品の過食部分の把握、残った料理のリメイクといった各家庭での工夫が重要です。
日本での食品ロスのデータ
令和6年6月に環境省が公表したデータによると、令和4年度の日本の食品ロスは、472万トン発生しています。
国民1人あたりに換算すると、毎日おにぎり1個(約103g)を捨てているのと同じくらいです。
食品ロスは、令和3年度まで事業系の割合が多い傾向にありましたが、令和4年度には半分ずつになりました。家庭系食品ロスよりも事業系食品ロスのほうが、削減率が高いことがわかります。
年度 | 食品ロス発生量(前年比) | ||
合計 | 事業系食品ロス | 家庭系食品ロス | |
令和4年度 | 472 万トン(-9.8%) | 236万トン(-15.4%) | 236万トン(-3.3%) |
令和3年度 | 523万トン(+0.1%) | 279万トン(+1.4%) | 244万トン(-1.2%) |
令和2年度 | 522万トン(-8.4%) | 275万トン(-11.0%) | 247万トン(-5.4%) |
令和元年度 | 570万トン(-5.0%) | 309万トン(-4.6%) | 261万トン(-5.4%) |
参考元:我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和4年度)の公表について | 報道発表資料 | 環境省
事業系食品ロスと家庭系食品ロス、それぞれの内訳をみてみましょう。事業系食品ロスでもっとも多いのは食品製造業で、約半分を占めています。
事業系食品ロス合計 | 食品製造業 | 外食産業 | 食品小売業 | 食品卸売業 | |
令和4年度 | 236万トン | 117万トン(49.6%) | 60万トン(25.4%) | 49万トン(20.8%) | 10万トン(4.2%) |
参考元:消費者向け情報 | 食品ロスポータルサイト
家庭系食品ロスでは、直接廃棄と食べ残しがそれぞれ40%以上と多くを占めています。
家庭系食品ロス合計 | 直接廃棄 | 食べ残し | 過剰除去 | |
令和4年度 | 236万トン | 102万トン(43.2%) | 100万トン(42.4%) | 33万トン(14.0%) |
参考元:消費者向け情報 | 食品ロスポータルサイト
日本では、「2030年度には2000年度比で食品ロスの半減」という目標が掲げられ、国や事業者、各家庭での取り組みによって食品ロスは徐々に削減されています。
目標実現に向けては、食品ロスに対する一人ひとりの意識をますます高めていくことが大切です。
飲食店における食品ロス対策の重要性
飲食店事業者である以上、「うちの店がやらなくても、食品ロスは減るだろう」と食品ロス削減を他人事にはできません。
飲食店でも食品ロス対策は非常に重要です。
- 飲食店が食品ロスを削減しなければ、事業系食品ロスの目標は達成されない
- 食品リサイクル法で、食品廃棄物の削減が義務付けられている
ここからは、これらの点について詳しく解説していきます。
外食産業の食品ロス
先にも述べたとおり、令和4年度の外食産業食品ロスは約60万トンで、事業系食品ロスのうち4分の1、食品ロス全体では約8分の1と大きな割合を占めています。
年度 | 事業系食品ロス(万トン) | ||||
合計 | 食品製造業 | 外食産業 | 食品小売業 | 食品卸売業 | |
令和4年度 | 236 | 117 | 60 | 49 | 10 |
令和3年度 | 279 | 125 | 80 | 62 | 13 |
令和2年度 | 275 | 121 | 81 | 60 | 13 |
参考元:環境省「食品ロス量の推移」
外食産業の食品ロスは令和2年度から約25%減少しています。しかし、発生量でみると令和4年時点で60万トンと、決して少ない数値とはいえません。
また、事業系食品ロス全体の減少率は15%未満です。8年後(令和12年度)の食品ロス半減の目標を達成に向けて、外食産業でもますますの削減努力が必要といえるでしょう。
食品リサイクル法への対応
飲食店事業者は、食品リサイクル法に従って食品廃棄物を減らす義務があります。食品リサイクル法は、食品メーカーや飲食店など、食品を扱う全ての事業者を対象に食品廃棄物の抑制や減量、再生利用を促す法律です。
年間100トンを超える食品廃棄物が発生する事業者は、農林水産省に対して報告書の提出をしなくてはいけません。
また、取り組みが不十分だったり虚偽の報告を行ったりした場合は、事業者名の公表や50万円以下の罰金といったペナルティが課せられます。
参考元:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律
とくに事業者名が公表されると、社会的な信用を失い事業の継続が難しくなるリスクが高くなります。
飲食店事業を継続するためには、食品ロスは無視できません。食品リサイクル法にのっとった食品ロス削減に努めていきましょう。
飲食店での食品ロス削減のメリット
食品ロス削減の「目標」や「義務」を知って、食品ロスの問題について重たく感じた事業者様も多いことでしょう。食品ロス削減には、飲食店事業の運営にとって3つのうれしいメリットがあります。
【飲食店が食品ロス削減するメリット】
- コスト削減
- 顧客満足度アップ
- お店のイメージアップ
ここからはこれらのメリットについて詳しく解説していきます。
原材料費や廃棄コストの抑制
飲食店を運営するにあたってある程度のコストはやむを得ません。しかし、食品ロスを削減することで、廃棄費用や原材料費の抑制が可能です。
ゴミを処分するには、費用がかかります。食品ロスを出して廃棄物が多くなると、廃棄費用も高くなります。しかし、食品ロスを削減して無駄な廃棄物が減れば、廃棄コストを削減できます。
飲食店の食品廃棄に多いのは、お客様の食べ残しばかりではありません。消費期限がきてしまった食材も、調理されることないまま廃棄処分されます。
使い切れなかった食材は廃棄費用がかかるのはもちろん、仕入れ費用も無駄にしています。在庫量や料理の注文数を見直して原材料の発注数を調整すれば、原材料費もカットできるでしょう。
顧客満足度の向上
食品ロス削減は、店の在庫管理の強化に繋がります。店の在庫が適正量になると、鮮度のよい食材を使用した高品質の料理の提供が可能になります。
同価格で質の高い料理が提供できれば、顧客満足度は向上します。無駄な材料費や廃棄費用がかからなくなった分、以前より安い価格で提供できるようになるかもしれません。
また、無駄な在庫が減ると整理する手間が少なくなるため、店内の清掃やサービスなどに人員を配置できます。
今まで以上に清潔な店内で質の高いサービスや料理を提供すれば、お店の評判が上がるに違いありません。
環境保護によるイメージアップ
飲食店が排出する生ごみは、臭いや害獣・害虫など周辺の衛生問題にも大きく関わっています。
食品ロス削減によって排出する生ごみを減らせれば、店舗周辺の清潔さを保つだけでなく、地域との関係もよくなるはずです。
また、食品ロス削減への取り組みは、環境問題を意識している企業としてイメージアップに繋がります。食品ロス対策をすることによって、ブランドイメージの向上はもちろん、新規顧客やリピート客の獲得のチャンスが増えることでしょう。とくにSDGsの意識の高い若い年代層から大きな支持を得られるはずです。
ただし、環境問題へ取り組む企業は今後どんどん増えていきます。いい企業イメージを獲得するには、いちはやく食品ロス削減に乗り出すことが大切です。
飲食店での食品ロスの原因と対策
飲食店には、食品ロス対策をする義務があると同時に多くのメリットあるとわかりました。飲食店が食品ロスをする大きな原因は、以下のようなものがあります。
- 仕入れ・仕込みの過剰
- 不適切な保存・管理
- 調理・提供ミス
- 顧客の食べ残し
4つの原因に対する対策をご紹介しましょう。
仕入れ・仕込みの過剰
仕入れ・仕込みが過剰になる要因 | 対策 |
|
発注量や売上の予測の正確さを向上させるためにPOSシステムを導入する |
飲食店でクオリティの高い料理を提供するために、鮮度の高い食材は欠かせません。しかし、来店客数の予測見込みが甘いと、無駄に多くの仕込みや材料の発注をしてしまい、食品ロスが発生します。
仕入れや仕込みを適正に行うには、的確な在庫管理や来店客予測が必要です。しかし、紙面やExcelなどを用いて人力で管理をしていくのには、限界があります。大規模の店舗になるほど時間と手間がかかるでしょう。
仕入れ・仕込みの食品ロス問題解決には、POSシステム導入が一番の近道です。
POSシステムでは、バーコードでの在庫管理や、曜日・天候による客数・客層、売上など店のあらゆる情報を管理・参照できます。POSシステムを導入すれば、手間なく適切な在庫数や仕込み量をキープできるので、効率のよい食品ロス削減が可能になるでしょう。
保存・管理の問題
不適切な保存・管理になる要因 | 対策 |
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賞味期限や消費期限を把握せずに多くの在庫を抱えていると、期限までに食材を使え切れずに廃棄することになります。期限を守っていても保存方法が正しくないと、食材は傷んでしまうでしょう。
保存・保管の時点で食品ロスを削減するには、在庫の保管方法と先入れ先出しをスタッフ全員に徹底しましょう。正しい環境で賞味期限の早い順に在庫を使うようにすれば、期限切れになるのを防げます。
ただし、在庫が多すぎると、どんなに正しい保管方法を励行しても食材の廃棄を防ぎきれません。賞味期限切れ・消費期限切れの食材を無くすには、常に適正な在庫量をキープすることが大切です。
先にもお伝えしたとおり、POSシステムでは簡単に在庫把握ができます。また、自動発注機能を搭載しているシステムを導入すれば、無駄な発注を心配する必要がなくなるでしょう。
調理・提供時のミス
調理・提供時のミスの要因 | 対策 |
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オーダーミスや調理失敗による料理の再利用は難しいです。再利用できない料理は、お客様に提供されることなく廃棄されます。
注文間違いや調理ミスは人的ミスのため、ベテランのスタッフでも起こり得るでしょう。少しでも減少させるには、定期的な研修によってスタッフをスキルアップさせることやオペレーションの改善が重要です。
また、料理が一番おいしいのは出来立てに違いありません。複数の料理を一度に提供すると味が落ちてしまい、食べ残しの原因になります。盛り付け用に使われている食材も食べ残しが過剰な場合は削減を検討する必要もあります。
料理の提供速度や盛り付けは、オペレーションの見直しで改善できます。オペレーションを変更したときは、スタッフに研修を行って内容を徹底するようにしましょう。
顧客の食べ残し
顧客の食べ残しの要因 | 対策 |
不親切なメニュー |
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メニューに料理の名前だけが並んでいても、どのような料理なのか、どのくらいの量なのかなどイメージしづらいです。メニューに説明や写真を入れるようにすれば、お客様は料理をイメージしやすく、オーダー量を検討しやすくなります。
また、料理のサイズを選択できるようなメニューも、食品ロスを減らすいい手段です。SサイズやMサイズなどのサイズ分けがあれば、お客様のオーダーしたい品数やお腹の減り具合によって、ベストな量を選べます。
さらに、お客様へのインセンティブの提供も効果的です。たとえば、完食したお客様には次回来店時の割引クーポンを配布するようにすれば、過剰な注文による食べ残しを防げるでしょう。
飲食店の食品ロス削減対策には、食べ残した料理をお客様に持ち帰ってもらうという方法もあり、食品リサイクル法でも推奨されています。ただし、調理して時間の経過した料理には食中毒のリスクもあるので、食べ残しの持ち帰りには慎重にならなくてはいけません。清潔な容器の使用やお客様に食中毒のリスクの説明などを徹底し、トラブルが起きないようにしましょう。
食品ロス対策でコスト削減と環境保護を実践しましょう(まとめ)
食品ロスは、日本だけでなく世界規模での問題です。日本では「2030年度までに2020年度の半分まで減らす」と目標設定しています。
飲食店を含む外食系産業で発生している食品ロスは、日本全体の食品ロスの8分の1です。また、食品リサイクル法で義務付けられているため、飲食店事業者は率先して食品ロス削減対策に取り組む必要があるのです。
飲食店が食品ロス対策をすると、以下のようなメリットが得られます。
- コスト削減
- 顧客満足向上
- イメージアップ
ただし、食品ロス対策へ取り組む企業は今後増加していくので、いちはやく着手する必要があります。
NECが提供するサブスクリプション型POSシステム「NECモバイルPOS」は、飲食店事業に特化した機能が充実しており、在庫や売上管理、会計業務などの効率化・簡便化が連携強化することで可能になります。在庫管理が適切に行えれば、食品ロス対策にも繋がり、環境対策や経営など多くの面でメリットが得られるでしょう。
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