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QSCとは?概要から具体的な事例までを詳しく解説

成功を収める大手飲食店が共通して実践している取り組みの一つに、「QSC」が挙げられます。QSCについて耳にしたことはあるものの、詳しい内容や具体的な実践方法までご存じでない方もいるでしょう。

そこで今回は、QSCの概要やなぜ重要視されているのか、ファミリーマートで導入されているQSCの事例、マクドナルドなど大手飲食店の事例も詳しく紹介します。

また、最後にはQSC施策の一つとして取り入れたい「NECモバイルPOS」も紹介します。

自店舗の顧客満足度や売り上げに課題を感じている飲食店オーナーは、ぜひ最後までご覧ください。また小売店がQSCを実践する際にも役立つ内容となっていますので、小売店オーナーも参考にしてください。

QSCとは

QSCとは、Quality(クオリティ)・Service(サービス)・Cleanliness(クレンリネス)の頭文字を取った言葉で、顧客満足度の向上を目指す飲食店にとって重要な行動指標です。

QSCは、1955年にマクドナルドの創設者が提唱して以来、多くの飲食店で導入され続けています。

以下では、クオリティ・サービス・クレンリネスについて紹介します。

参考元:new window食品安全・品質への取り組み | マクドナルド公式

クオリティ

QSCにおけるクオリティとは、「提供するサービスの質」を指します。飲食店の場合には、食材選びや調理法、提供スピードなどの徹底により、料理のおいしさを追求することです。

またクオリティは、価格とのバランスも考慮する必要があります。特に提供するサービスの質に対して、価格が見合っていない場合には、顧客離れにつながるため注意が必要です。

いくら店舗の内外装が魅力的でも、料理の質が低い場合や質に対して価格が高すぎる場合には、顧客が定着することはありません。一方でいつ来店しても、質の高いサービスを最適価格で提供できれば、顧客満足度の向上につながり、リピート客の獲得が可能となります。

品質管理・在庫管理体制を徹底し、顧客がいつでも安心・安全に利用できる店舗作りを目指すことが重要です。

サービス

QSCにおけるサービスとは、「接客の質」を指します。従業員に勧められた結果、購入する予定のなかった商品を購入した経験がある方もいるでしょう。接客の質が高ければ、商品との相乗効果で、売り上げアップにつながります。

QSCのサービスを実践するには、「接客の5大原則」にある「挨拶・表情・態度・身だしなみ・言葉遣い」を押さえることが重要です。たとえば、「顧客の入店後はすぐに声をかける」「ピーク時にも笑顔を絶やさない」などが基本的な実践内容です。5つの原則を押さえることで、接客スキルの有無に限らず、顧客によって心地よい接客サービスの提供が可能となります。

接客の5大原則をはじめ、サービス力向上のための施策を実践する際は、接客を担当する従業員から理解を得るための仕組み作りが成功を左右します。

クレンリネス

QSCにおけるクレンリネスとは、「店の清掃の質」を指します。より多くの顧客を獲得するうえでは、魅力的なサービスと接客のほかに、店内の清潔感・衛生管理も徹底する必要があります。

たとえば、「定期的にトイレを清掃する」「レジ周りの整理整頓をする」などがクレンリネスの例です。

近年は感染症の影響もあり、顧客満足度やお店選びに店舗の清潔さを重要視する傾向があります。おいしい料理や丁寧な接客の飲食店でも、店内が不潔なら利用しないと考える方が増えてきており、クレンリネスの項目の重要さが増しています。

QSCが重要な理由

飲食店や小売店にとって、QSCの行動指標が重要な理由は、主に下記2つです。

  • 売り上げ向上につながる
  • 顧客満足度が上がる

QSCは各項目の改善・向上をすることで集客のしやすさに結びつき、店舗の売り上げにも影響を与えます。近年はSNSの口コミにより、よい接客やフォトジェニックな料理がすぐに広まるようになりました。そのためQSCを極めれば、様々な面で店舗の存在が広く認知され、売り上げアップにつながります。

加えて、QSCを高く保つと顧客満足度が向上します。常に清潔感あふれる店舗で、顧客が求める以上に質の高いサービスを提供し続ければ、心地よい環境とサービスに共感が集まり、リピーター獲得が可能です。

したがって、顧客満足度の高い繁盛店を目指すのであれば、QSCの向上が不可欠といえます。

QSC向上を実現するためにすべきこと

飲食店や小売店がQSC向上を実現するために取り組むべきことは、下記の3つです。

  • 自店舗の現状を確認する
  • 改善案の策定・実施
  • 従業員の満足度を高めることも大切

QSC向上のためには、顧客の不満につながっている自店舗の問題点や課題を把握し、従業員の理解を得ながら改善を目指すことが重要です。

以下では、取り組むべき内容を詳しく紹介します。

自店舗の現状を確認する

店舗のQSCを高めるためには、まず下記2つを活用し、現状を把握することが重要です。

  • アンケート
  • POSシステムで収集したデータ

アンケートは、顧客視点で店舗におけるQSCの達成度合いを知るうえで役立ちます。低評価のQSC項目を可視化することで、顧客満足度に影響するサービス内容を的確に改善可能です。

また、POSシステムで収集したデータは、QSCのクオリティを見直す際に役立ちます。POSシステムでは注文されたオーダー数を自動集計できるため、顧客ニーズから外れているメニューを簡単に把握できます。

主にアンケートでは定性的に、POSシステムのデータでは定量的に低評価の項目を見つけることができるため、両方とも活用して正確な現状把握をしましょう。

改善案の策定・実施

自店舗の問題点が明らかになれば、QSCの項目別に改善案を策定し、実施しましょう。

  • クオリティの改善:調理法の改善、ホールとの連携
  • サービスの改善:マニュアル作成、研修の徹底
  • クレンリネスの改善:掃除の回数とやり方を見直す

飲食店のクオリティを改善する場合には、料理自体を見直すだけでなくホールとの連携も重要です。ホールとキッチンがスムーズに連携できれば、ベストタイミングで料理の提供が可能となり、顧客満足度の向上につながります。

またサービスに関しては、研修の実施が改善策として有効です。ロールプレイング形式でさまざまな接客シーンをシミュレーションすることや、良い接客の事例等を共有することで、接客レベルを向上できます。

クレンリネスを改善する場合には、掃除の回数を増やすだけでなく、手順や基準などを定めることで、きれいな状態を長く維持できます。

従業員の満足度を高めることも大切

QSC向上のためには、従業員の満足度(ES:Employee Satisfaction)を高めることも大切です。従業員が働いている店舗に満足していれば、改善案に協力的だったり、さらなる改善案を提案してもらえたりすることもあります。

そのためQSC向上を目指す際には、下記のような従業員の働きがいにつながる制度や取り組みを導入しましょう。

  • 接客レベルが高い従業員を表彰する
  • パート従業員を社員登用する
  • 育児休暇制度などの福利厚生を充実させる

特に従業員の表彰や社員登用は、接客に定評がある大手百貨店や従業員のモチベーションが高い会社などでよく採用されています。

従業員の貢献度に見合った評価や処遇を与えれば、対象の従業員のモチベーションがアップするだけでなく、素晴らしい接客のノウハウの共有がしやすい環境となり、丁寧な接客につながります。

従業員にもアンケートを実施し、職場環境の改善に取り組むことが、QSC向上の近道です。

【具体例】QSC向上のためのチェックシートの活用

QSC向上のためには、チェックシートの活用が有効です。チェックシートとは、QSC向上につなげるための行動や基準をまとめたリストです。QSCを実践する従業員へ評価内容を共有することで、スムーズな改善が可能となります。

料理や接客に定評がある大手飲食店では、品質管理や作業項目について細かく決められたチェックシートが存在します。

以下では、クオリティ・サービス・クレンリネス別にチェック項目例を見ていきましょう。

クオリティに関するチェック項目例

▼クオリティに関するチェック項目例

調理
  • マニュアル通りの手順で調理している
  • 調理器具は正しく洗浄され、使われている
  • 食材の鮮度(消費・賞味期限)は毎日チェックしている
  • 食材の温度管理は食品衛生法やHACCPが定める基準に沿っている
  • 食材の衛生管理は十分である
見た目
  • 料理の盛り付けやボリュームはメニューと相違がない
  • 顧客が使う食器に傷や汚れはない
  • マニュアル通りに料理や食器を配膳している
  • 配膳前に異物が混入していないか確認している
提供
  • 料理の提供スピードは適切である
  • 出来たてのものを提供できている
廃棄
  • 食材の廃棄量は食品リサイクル法に基づく基準に収まっている
  • 廃棄方法は自治体の基準に沿っている

クオリティのチェック項目では、自店舗のマニュアルのほかに各法令の基準を取り入れることで、より高いレベルを目指せます。

サービスに関するチェック項目例

▼サービスに関するチェック項目例

予約
  • 予約時の電話対応は丁寧な言葉遣いでできている
  • スムーズに予約案内ができている
入店案内
  • 「いらっしゃいませ」の声かけを積極的にできている
  • 顧客の待ち時間を極力なくせるようにスムーズな入店案内ができている
商品提供
  • 顧客に合わせておすすめ商品を案内できている
  • 新作商品でも適切な説明ができている
  • 従業員同士の私語は控え、顧客のことを気にかけている
退店対応
  • 「ありがとうございました」などの声かけを積極的にできている
  • レジ対応はスムーズである
クレーム対応
  • マニュアル通りに謝罪できている
  • クレーム発生後は速やかに責任者や本部へ共有している

サービスに関するチェック項目では、予約・入店案内・商品提供・退店対応・クレーム対応ごとに項目を設ける点がポイントです。

クレンリネスに関するチェック項目例

▼クレンリネスに関するチェック項目例

内装設備(顧客が主に使用するもの)
  • テーブルや椅子を壊れた状態で放置していない
  • テーブル上にあるタブレット端末や調味料などの小物は使える状態になっている
  • トイレや洗面台は定期的に掃除され、清潔な状態が保たれている
  • マニュアルの感染症対策に沿って備品を整えている
内装設備(従業員が主に使用するもの)
  • レジ周りは整頓されている
  • カウンターにホコリがかぶっていない
従業員の身だしなみ
  • 髪に清潔感がある
  • ユニフォームに臭いやシワがついていない
外装設備
  • 駐車場や店舗周辺にゴミが散乱していない
  • 店舗前にある看板やのれんも点検している

クレンリネスのチェック項目には、店舗の見た目(内外装設備)と従業員の身だしなみに関する項目を設けましょう。

QSC+αでよりよい店舗作りを

QSCは、大手飲食・小売店において当たり前の考えになりつつあります。そのため近年ではQSCにさらに付加価値を追加し、競合優位を高める企業が増えてきています。

下記3つがQSC+αの例です。

  • QSC+A(アトモスフィア=お店の雰囲気)
  • QSC+V(バリュー=来店する価値)
  • QSC+H(ホスピタリティ=おもてなしの心)

以下では、それぞれの考え方や実践方法の例を紹介します。より良い店舗作りを目指すためにも、プラスαの取り組みを積極的に取り入れましょう。

QSC+A

QSC+A(Atmosphere)とは、QSCに加えて「店舗の雰囲気」を付加価値として提供する考え方で、具体的には店舗の内外装や従業員の雰囲気の統一を目指します。

QSC+Aを実践するには、店舗のコンセプトに合わせた雰囲気作りが重要です。

  • 店舗外装はひと目でお店のコンセプトがわかるデザインを採用する
  • 内装素材・照明・インテリアをコンセプトと統一する
  • コンセプトに合わせて従業員のユニフォームやふるまい方を決める

独自の雰囲気を提供できれば、店舗の雰囲気に共感してもらえ、リピート客の獲得につながります。

QSC+Aを取り入れる際には、店舗コンセプトを明確にしてから内外装や従業員のことを決めていくとスムーズです。

QSC+V

QSC+V(Value)とは、QSCに加えて「店舗へ来店する価値」を提供する考え方で、競合にはない独自サービスの提供を目指します。

QSC+Vの取り組み内容の例は、下記の通りです。

  • 常連の顧客が参加できるオンラインサロンを開設する
  • 支払い手段の多様化に合わせてキャッシュレス対応を進める
  • 利用ごとに店舗で使えるポイントが貯まるポイントシステムを導入する

特に競合が多いエリアでは、QSC+Vの考え方を取り入れ、自店舗ならではの価値を提供することで、競合のなかから選ばれる店舗になります。

QSC+Vを実践する際には、まずアンケートやPOSシステムのデータを分析し、自店舗が提供できる価値を把握することから始めましょう。

QSC+H

QSC+H(Hospitality)とは、QSCに加えて「おもてなしの心」を提供する考え方です。顧客に喜んでもらうことを第一優先として、マニュアルにはない配慮の行き届いた接客を目指します。

QSC+Hの例としては、下記が挙げられます。

  • 常連客の誕生日で頼まれていないがプチバースデーケーキを用意する
  • 小さな子ども連れの家族に取り分け皿や子ども用のスプーンを渡す
  • 杖を突いて歩いている方や車イスの方が店を出入りするときにドアを開ける

おもてなしの心で大切なことは、「目配り・気配り・心配り」です。3つの「配り」が身につくまでは、ある程度経験が必要になります。

そのため従業員の経験年数によらず、ホスピタリティを実現してもらうには、3つの「配り」に関するマニュアル作成から取り組みましょう。

QSCを実践する企業の事例

大手飲食・小売チェーン店では、従業員の教育プログラムやデジタルツールを導入することで、QSCレベルの向上を目指しています。

以下では、QSCを実践する企業の事例を3つ紹介します。

  • ファミリーマート
  • マクドナルド
  • すかいらーくホールディングス

どのような制度やツールを導入すれば、QSCの取り組みが成功するのか見ていきましょう。

ファミリーマート

大手コンビニエンスストアの「ファミリーマート」は、従業員の育成制度を充実させることで、効率的なQSC向上を実現しています。下記が育成制度の一例です。

  • SST:従業員がQSC向上を実践できるまで段階的に育成する資格制度
  • エクセレントトレーナー制度:優秀な従業員を本部社員へ登用する制度

SSTのトップ称号「ファミマスター」を取得した従業員は、本部社員として登用され、店舗のQSCレベル向上を主に担う「QSCトレーナー」として直営店へ配属されます。

つまり、SSTの講習を通じて従業員に十分なQSC推進力を習得してもらい、最終的に各店舗でQSCの指導者として貢献してもらう仕組みを構築しています。

ファミリーマートの資格・登用制度は、QSCのサービスを強化したい場合に参考にするとよいでしょう。

参考元:new windowストアスタッフ資格制度「SST」|わくわく働けるお店|FamilyMart Stories ファミマの物語|ファミリーマート
参考元:new window「エクセレントトレーナー」制度を導入 ~さらなる活躍の場を!優秀なストアスタッフを本部社員に登用~|ニュースリリース|ファミリーマート

マクドナルド

大手ファストフード店の「マクドナルド」は、「QSC&V」を徹底しています。「おいしさと笑顔を地域の皆さまに」をモットーに、下記4つの価値(バリュー)の提供を目標としています。

  • おいしいものをおいしく食べられる素敵な空間
  • 家族の笑顔がこぼれるくつろぎの場
  • いつ行っても楽しい場所
  • 車に乗ったままで買えるドライブスルー

バリューの提供により、顧客の満足につなげるために、品質管理基準や厨房機器の設計まで細かくマニュアル化しています。たとえば、レギュラーメニューを世界共通の品質で提供するために、食材を検討する「品質審査会」を定期的に開催し、基準の統一を徹底しています。

マクドナルドの「QSC&V」は、多店舗展開でQSCすべてをブラッシュアップする際に参考になる考え方です。

参考元:new windowレストラン・ビジネスの考え方 | マクドナルド公式

すかいらーくホールディングス

大手飲食チェーン店のガストを運営する「すかいらーくホールディングス」では、各チェーン店のQSC向上のために下記を実施しました。

  • 動画を活用した従業員トレーニングの強化
  • フロアサービスロボットやデジタルメニューブックの導入
  • 全店のPOSレジ刷新
  • 店舗のリモデルとリフレッシュ工事の実施

特徴として、ITツールを積極的に活用し、従業員のオペレーション負荷を大幅に軽減している点が挙げられます。

従業員の負荷が軽減されたことで、接客に注力できるようになり、結果として顧客満足度の向上に成功しました。実際QSC施策前の3か月間と比較し、施策後の3か月間で顧客からの高評価コメントが約10%増加しています。

当事例は、QSC施策の一環でITツールを活用する場合に参考になる取り組み例です。

参考元:new window事業報告|株式会社すかいらーくホールディングス スマート招集

QSC施策を取り入れて選ばれる飲食店にしましょう(まとめ)

QSC(Quality・Service・Cleanliness)は、繁盛店を目指す飲食・小売店にとって重要な行動指標の一つです。QSCが意味する「高品質なサービス・丁寧な接客・清潔な店舗」をすべて欠けることなく提供できれば、売り上げや顧客満足度の向上につながります。

QSCの実践方法としては、チェックシートの作成や従業員の接客研修のほかに、POSシステムなどのITツールの導入が有効です。

QSC向上のために、POSシステムの導入を検討している方におすすめなのが「NECモバイルPOS」です。

NECが提供するサブスクリプション型POSシステム「NECモバイルPOS」は、直感的でわかりやすい操作画面と、モバイルオーダーなど豊富な連携機能を有しています。操作性と連携性に優れることから、レジ業務を含む接客業務全体の効率がアップし、従業員に余裕が生まれ、QSC向上につながります。

「NECモバイルPOS」をQSC施策として取り入れて、選ばれる飲食店にしましょう。

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チェーン店しっかり理解して、多店舗展開に役立てましょう(まとめ)

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