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改めて考える“顧客体験価値”の重要性。取り組みのポイントと事例も解説

公開日:2024年3月28日

ライフスタイルの変化やテクノロジーの発達により顧客接点が多様化している環境で、企業が事業成長・売上拡大を目指すために、「顧客のロイヤルティを高めたい」「自社サービスのレベルを向上したい」というニーズが強くなっています。ここで注目されるのが、「顧客体験価値」という考え方です。顧客体験価値の基本から、その重要性、顧客体験価値を高めるためのポイントまで詳しく解説します。

顧客体験価値とは?

まず「顧客体験」とは、顧客が商品やサービスを閲覧・購入・使用・問い合わせする、といった流れのなかで得られる体験・経験のことです。提供する商品の機能だけではなく、それに付随する顧客の一連の体験にもフォーカスすべきと、マーケティングにおいて重視されてきました。
「顧客体験価値」とは、さらに踏み込み、顧客体験から得られる価値のことを指します。なかでも主に、期待・喜び・楽しさなどの心理的価値が重要とされ、「商品・サービスを提供する」のみに留まらず、「その商品・サービスから得られる、ポジティブな印象・感情」まで含めて提供することを意識する企業が増えています。

顧客体験価値が重要な理由

商品・サービスの差別化・競争力強化

顧客体験価値が重視される背景として、様々な市場が成熟し、商品単体での差別化が難しくなっていることがあります。また、One to Oneマーケティングやパーソナライズも普及し始め、エンドユーザは「自分のために最適化された情報」に接する機会が増えています。この流れのなかで差別化を図るためには、いかに顧客1人ひとりにあわせたアプローチをおこない、顧客にとって高い“価値”を提供できるか、がより重要になっています。

顧客の「ファン化」

企業としても、ビジネス拡大のために既存顧客の愛着度・ロイヤルティを高め、顧客を「ファン化」したいというニーズが高まっています。SNSなど消費者の発信力が強まっている今、継続して商品・サービスを購入・利用してくれる、クチコミなどで新たな顧客へとつなげてくれるファンの育成は重要な課題です。ここでも、初回購入から、購買促進、企業・商品への熱意あるファン層へのランクアップのための施策、アフターフォローなどの「顧客体験価値」が鍵を握ります。

デジタルとリアルの融合

デジタルデバイスやスマートフォンの普及もあり、Webサイト・ECサイト・SNSなどデジタル(オンライン)での顧客接点も重要度が高まっています。「Webサイトで商品を調べて、店舗で購入する」「店舗で商品を見て、ECサイトで注文する」といった購買行動も珍しいものではなくなっています。リアル(オフライン)とデジタル(オンライン)を融合し、どの顧客接点でも顧客データを連携して、つながりのある体験を実施することで、トータルで“顧客体験”の価値を高めることが求められています。

事業間の連携強化

近年、M&Aなどにより、複数の事業体を同じグループ内に保有する企業が増えています。マーケティング活動においても、事業単体でおこなうのではなく、事業間のクロスセル・アップセルを目指すため、サービス・事業を横断した活動が求められます。ここで重要になるのが、企業としての視点だけではなく、顧客体験価値をベースとした活動をおこなうことです。事業ごとに持つ顧客の情報を統合することで、顧客の理解が深まり、より顧客に寄り添った施策・サービス提供が可能となり、顧客満足度が向上し、事業がより成長していくというサイクルが生まれます。グループ全体で最適なサービス提供を目指すためにも、顧客体験価値の観点は欠かせません。

顧客体験価値がもたらすメリット

顧客体験価値がもたらすものは様々ですが、最終的に得られるメリットとしては企業の「事業成長・売上拡大」に集約されると言えるでしょう。
顧客にとって価値のある体験を提供できれば、信頼獲得・ブランドイメージ向上、そして商品・サービスの差別化につながります。顧客体験価値を高めるには、顧客を深く知り、ニーズにあわせて適切な情報提供・施策をおこなうことが欠かせません。こういった顧客1人ひとりに個別最適化された施策・サービス提供がファンを育成します。さらに、顧客を軸に事業間の連携を強化することで、より効果的なアプローチも可能になります。様々な取り組みが最終的に事業成長・売上拡大に大きく貢献するのです。

顧客体験価値を向上するためのポイントと注意点

業務・課題の整理

顧客体験価値向上を目指す際、初めにおこなうべきは、社内の業務プロセス・課題の整理です。マーケティングのパーソナライズ化など、個別の施策から進めることも可能ですが、まずは、現状の業務プロセスがどうなっているのかを把握、そのなかでの課題を整理したうえで、事業全体として目指す方向性を明確に定め、全体での戦略に沿って進めることが重要です。

データ基盤の整備

業務プロセス・課題の整理とあわせて鍵となるのが、データ基盤の整備です。顧客体験価値を向上するには、経験や勘などに頼るのではなく、データドリブンでの個別最適化、つまり、データを元にしたマーケティング施策・サービス提供が必要になります。特に、異なる事業・サービスを横断し、顧客を“1人の人”として理解してアプローチするには、顧客情報を統合したデータ基盤が欠かせません。
ここで鍵となるものを3つお伝えします。、社内の顧客情報を一元的に管理するための「ID統合」、デジタル・リアルあわせて顧客のすべての行動を分析するための「CDP(Customer Data Platform)」、リアル店舗などにおける顧客の認証などに用いる「生体認証」の3つです。これらの領域はリアルとデジタルの融合にむけたプラットフォームとして今後さらに重要度が増すと考えています。データ基盤として自社で目指すゴールにあわせて、いかに整えるか、がポイントとなります。

リアルデータ・デジタルデータを組み合わせた行動分析の説明図

顧客情報利用の“同意”管理

顧客体験価値向上では、顧客に関するあらゆるデータを活用することが鍵となりますが、同時に、顧客が情報の利用に同意しているかどうかを適切に管理しなければなりません。顧客のデータは当然、個人情報になりますから、データ活用にあたって顧客の同意は必須です。「店舗での購買情報は利用されたくない」「Aサービスでは同意したが、Bサービスでのデータ活用までは同意していない」など、不適切なデータ活用がないように細かく管理できる基盤を、早い段階で整えることをお勧めします。

顧客体験価値を向上させた事例

運輸業A社様

運輸事業を中核に、小売、不動産、レジャー、サービスなどの様々な事業を展開しているA社様で課題となっていたのが、顧客データのサイロ化です。事業ごとに個別にデータを管理しているため、「あるサービスを利用した顧客が、別のサービスも利用しているかどうか」なども把握できない状況でした。
そこで、顧客統合基盤となるCDPを構築、すべてのデータを集約・紐づけをおこなうことで、顧客の動向を一元的に把握し、サービス・事業の垣根を超えたマーケティング施策などが可能になり、顧客への新たな価値提供へとつなげられるように支援しております。

百貨店B社様

B社様では、店頭で利用するポイントカードのほか、ECサイトや会員向けアプリなどの様々なサービスを展開していましたが、IDや認証の機能は個別に構築しており、データをまとめて活用できない上、顧客の利便性にも問題がありました。
そこで、全サービスのID統合を実施。これにより認証機能も統合され、1つのIDで複数のサービスを利用できるように。さらに、会員情報とポイント情報が一元化されたことで、ポイントの相互利用も可能になりました。利便性の課題を解消したことに加え、顧客データの一元管理を実現し、今後のデータ活用が期待されています。

必要なITソリューションはもちろん、コンサルティングから支援

NECでは、企業の顧客体験価値向上を支援する様々なソリューションを提供しています。まず、全体の中核となるのが、ID統合を実現する「IDコネクトサービス」です。APIを用いて、複数サービスのIDを自然に統合し、エンドユーザは使い慣れたIDをそのまま利用できるなど、利便性を損なうことなく、デジタルとリアルのデータをつなぐ環境を構築できます。また、同意管理の機能では、サービス利用規約やデータ連携許諾などきめ細かな管理が可能で、顧客の同意に基づいたデータ連携を実現します。
そして、リアルデータ収集で効果のある生体認証サービスも展開。顔認証などを用いることで、デジタルとリアルの顧客接点を連携し、顧客情報の一元管理へとつなげます。そして、これらのデータをすべて管理するのが統合データベース「Treasure Data CDP」で、顧客情報の可視化・行動分析などを可能にします。このほか、NECが開発した高い日本語性能を誇る生成AI「Cotomi」も本格提供をスタートし、顧客体験向上の観点でも活用が期待されています。
顧客体験価値向上は、企業にとって大きなテーマとはいえ、課題・悩みも多岐にわたります。NECの強みは、ITソリューションの提供だけではなく、現状整理などのコンサルティングから実施できる点です。自社の課題や悩みについて、ぜひご相談ください。

NEC カスタマーエクスペリエンス

顧客体験価値の向上を目的に、分散した顧客情報を統合することで、一人ひとりの解像度を上げ、更なるパーソナルなマーケティングを可能にするサービスです。