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荒れた田んぼを再生し、様々な生きものが暮らせる環境を再生する。そのために社員と家族で、田植えからお酒造りまで行い、自然からの恵みを学び体験する。そんなNECグループの「田んぼ作りプロジェクト」が2023年4月で20年目に入りました。かつて大人の腰ぐらいの背丈だった子どもは今や大学生になり、とある社員にとっては「NEC生活で最も長いプロジェクト」に。この一大プロジェクトを続けられた背景にある「NECのDNA」とは。
2004年発足 生き物は、少しずつ帰ってきた
野生のトキが帰ってくる環境づくりに取り組む「NEC田んぼ作りプロジェクト」がスタートしたのは2004年4月。茨城県の霞ケ浦流域の環境保全に取り組む認定NPO法人アサザ基金と協働で、茨城県石岡市の田んぼから始め、2010年からは牛久市のNEC田んぼへ活動を広げて続けています。目的の一つは、一度は荒れ果てた田んぼの再生を通じて里山全体の生物多様性を取り戻すこと。長年の活動が実り、今ではアキアカネやオオシオカラトンボ、ニホンアカガエルなど、里山の豊かな生き物たちがすめる環境にまで回復させています。



今でこそSDGsという言葉は常識となっていますが、プロジェクト開始当時は、企業としては先駆け的な取り組みでした。「持続可能な社会の実現」をめざすことは、NECのPurpose(存在意義)として脈々と受け継がれています。生物多様性の回復には、NECの技術も貢献。センサーで観測したデータと生態系との関係を分析するなどICTを活用した実証実験の場にもなっています。
このプロジェクトには生物多様性の保全に加え、もう一つの大きな目的があります。春は田植え、夏は草取り、秋は稲刈り、冬は酒仕込みという体験を通じて、NECグループ社員とその家族が自然の営みを体感し、学ぶことです。
「学ぶ」目的を看板にしつつも「楽しむこと」が前面に出た体験型のプロジェクト、「子どもが自然に触れ合う機会を」という気軽な気持ちで我が子を連れて参加する社員も多くいます。



「里山の緑、鳥の鳴き声、見たことのない虫。ぜんぶ新鮮でした」。父親に連れられて参加した田中勇輝さんは、初めて田んぼに行った小学校1年生のときのことをよく覚えています。あれから十数年、彼は今、農学部で食糧問題や環境問題を学ぶ大学生になりました。どこか導かれるようにして選んだ進路には、田んぼでの経験が影響していました。
小学校の頃 田んぼの原体験が、今の学びにつながった
自分より背の高いヤブを刈ったこと、湿地に足がはまって抜けなくなって、大人に引っこ抜いてもらったこと。家の近くでは見たこともない虫や植物の名前を教えてもらったこと。東京育ちの勇輝さんにとって、小さなころの自然の思い出は田んぼプロジェクト一色でした。


楽しい経験が、「学校で学んでいることとリンクし始めた」のは中学生になってから。そして2022年春、大学の農学部に進学したのも、こうした原体験が後押ししてくれました。
「耕作放棄地がひとつできると、里山は破壊され、生態系は壊れる。行政でも簡単には太刀打ちできない事態に、一企業が入って再生に取り組むことがどれほど大変で根気のいることか。田んぼで遊んでいたあの時代があったからこそ、今、ストンと理解できます」。勇輝さんはこう続けます。「これから社会人になって、自分も家族ができるかもしれない。これからも10年、20年と後の世代にもつなげていかないといけない活動ですよね」
農学部では食料や環境問題など農業政策にかかわることを専攻。それはまさに田んぼプロジェクトで学んだことです。十数年前、勇輝さんを田んぼプロジェクトに連れて行った父親の田中徹は「思い出作りのつもりで連れて行ったのが、今、こんなことを言うようになり、自分の学びに結び付けてくれた。思わぬ副産物ですね」と目を細めます。

あきらめないでやり続けること NECだからこそ
2004年のスタート時から、参加し続けている社員もいます。「気が付いたら20年たっていた。あっという間でしたね」と話すのは、家族で参加してきた廣瀬稔。「お酒がパチパチはじける音、新酒の香り、蔵の中のひんやりした感じ。自然の営みを、五感で感じられる場所。私にとって、このプロジェクトはそういう場でした。そこに集う人にまた会いたいな、と思って、ただただ楽しんでいるうちに時間が経ちました」と話します。
もうすぐ60歳を迎える廣瀬にとって、田んぼプロジェクトは「私のNEC生活で最も長いプロジェクト。あっという間に感じる一方で、長く続けなければ意味がない、すごい覚悟で始めたプロジェクトだな」と20年前に感じたこともよく覚えています。「あきらめないでずっとやり続けること。それってNECのDNAなんじゃないかと思います」。OBになっても、ずっと参加し続けたい。そう願う彼にも、NECのDNAがあるのかもしれません。

田んぼプロジェクトの延べ参加者は17000人を超えます。地球環境、社会、暮らしの将来像を描いたNEC 2030VISONを実現するために。そして、NECがPurposeに掲げる持続可能な社会の実現に向けて。その志とDNAは、ベテランから若手まで、社員一人一人と、その家族にも受け継がれ、つながっています。