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スパコンをリアルタイムで活用し津波被害推計 NECがつなげたシステムが全国に拡大中

あのとき、津波の被害をもっと早く予測できていたら救える命があったかもしれない。2011年の東日本大震災をきっかけに立ち上がったプロジェクトが、世界初のシステムの実用化を実現し、全国の沿岸に拡大しています。その名もリアルタイム津波浸水被害推計システム。スーパーコンピュータ(スパコン)を地震発生時に利用し、被害予測をリアルタイムで配信するこのシステム。原動力には、NECグループと産官学の熱い想いがありました。

「私たちの力で何ができるか」スパコンのレンタル、画期的な発想

2011年3月、東京。テレビに映る津波。増える犠牲者の数。「現地で何が」「支えに行きたい」。多くの人と同様にもどかしさを抱えていたのが、NEC本社にいた撫佐昭裕(むさ あきひろ)でした。

「自分にも何かできることがあるはず」。そう思い立った撫佐にとっての最初の武器が、入社以来ずっと開発に携わってきたスパコンでした。

この頃は津波も含めた災害関連のシステムとは無縁だった撫佐は、知己の研究者に「スパコン使って何かできることはないか」と相談。返ってきた答えは「何十億円もかかるスパコンをいつ起こるか分からない災害のために買うことはできないだろう」。

けんもほろろに思えるこの言葉が、意外な突破口になります。「買えないなら借りればいい」。大学が持つ研究用スパコンを、災害時だけレンタルする。この発想は後に特許を取得するほど画期的なもので、これによって数年~数十年に1度の巨大地震のためだけにスパコンを所有する必要がなくなり、地震発生時だけ借りる現実的なやり方に道が開けたのです。

スパコン実用化を探る中、東北大学災害科学国際研究所の越村俊一教授の研究との出会いも重要なポイントでした。津波浸水被害のシミュレーションそのものは、越村教授のチームの研究。リアルタイムでシミュレーションができれば、実態に即した対応ができます。救援隊や物資が迅速に対応できていれば助かる命が増えるはず。事実、2011年の津波では、溺死のほかにも陸上に逃げた後に低体温症などで亡くなった人がいることも報告されています。越村教授チームの情熱とともに、撫佐は実用化に向け奔走します。

「社会の役に立ててこそ」東北大の研究、実用化につなげたNECの力

「優れたシミュレーション技術も、社会の役に立てないと意味がない」。撫佐は語ります。

津波の浸水被害をリアルタイムで配信する。その処理工程は実は複雑です。地震の検知や断層モデルの推定、そして津波浸水シミュレーションや被害予測。さらにそれを見える化し、配信しなくてはなりません。

従来なら1日以上かかる処理を「リアルタイム」にできるようにしたのはNECの力があってこそ。「スパコンのレンタル」を突破口に、シミュレーションと被害予測を一気に4分35秒にまで短縮。「動きを速くするだけならできる人は他にもいる。でも津波被害のシミュレーションまでつなげられたのは、彼がいたから」。撫佐がそう話すのはスパコンのプログラムの「チューニングのプロ」こと阿部孝志(NECソリューションイノベータ)。津波被害を想定する流体計算の知識も兼ね備えた人材として活躍しました。

一連の処理を一気通貫で行えるように、システムを「つなげる」役割を果たしたのも、NECの「人」の力です。スパコン、ネットワーク、サーバ、システムなどすべての工程で専門的知識を持つ佐藤佳彦(NECソリューションイノベータ)を始めとする人材が、複雑な工程をつなぎ「人の手が入らなくても全て自動で動くシステム」の実現に貢献しました。

左から佐藤佳彦、阿部孝志、撫佐昭裕

「一人でも多くの命を」 スパコンの活用の仕組みも社会に拡大

国も動きました。内閣府がこのシステムを採用し、2018年4月に運用をスタート。開始当初の対象は鹿児島県から静岡県の太平洋側の沿岸約6000キロでしたが、2022年度には太平洋側1万3000キロ、日本海側2700キロ、計1万5700キロまで拡大しています。実際の災害で救助や支援の正面にたつ政府や自治体がこのシステムを活用すれば、まさにリアルタイムで効果的な救助につなげることができます。

「スパコンは昔からF1カーと言われていたんです」とシステム実装に貢献した佐藤は話します。速くは走れるけど、実際の公道で走ることを想定されていない。研究用に特化された特別なマシン。「そんなスパコンを世の中の役に立つシステムとして実際に活用できるなんて、20年前は想像もしていなかった」といいます。スパコンの実用化の仕組みについて先駆け的な取り組みで、他の企業も続々と参考にしています。

東北大学や大阪大学、国際航業株式会社、株式会社エイツー、株式会社RTi-cast、そしてNECグループによる産学連携体制で、スパコンの能力を活かして現実のものとなったリアルタイム津波浸水被害推計システム。つないだNECの力。すべては、3.11からの「一人でも多くの命を救いたい」という志が原点でした。

あれからもうすぐ12年。システムの推計は今年度も、そしてこれからも、NECはじめとした産学連携体制で全国へ拡大し、津波災害から人々を守るために機能を強化していきます。

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