Japan
サイト内の現在位置
NECと慶應義塾、脱炭素社会の実現に向けて防災・減災による将来のCO2抑制量を金融商品化する新たなアプローチ「潜在カーボンクレジット」を共創
-社会実装を推進、2023年度のコンソーシアム設立を目指す-2023年2月6日
日本電気株式会社
慶應義塾
日本電気株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役 執行役員社長 兼 CEO:森田隆之、以下NEC)と、慶應義塾(所在地:東京都港区、塾長:伊藤 公平)は、産学連携を通じたオープンイノベーションによる脱炭素社会の実現に向けて、防災・減災による将来のCO2抑制量を算出・可視化し、金融商品化(クレジット化)することで市場取引を実現する新たなアプローチ「潜在カーボンクレジット」を共創し、社会実装に向けて推進していきます。
NECと慶應義塾は、将来の発生自体を防ぐことができない自然災害によるCO2排出とその抑制量に着目し、防災・減災によるCO2排出の抑制量をカーボンクレジットとして市場取引が可能なインセンティブに転換する今回の新たなアプローチにより、企業や政府、自治体などによる脱炭素に向けたESG投資の促進と防災・減災対策を目的とした投資の活性化に貢献していきます。今後、「潜在カーボンクレジット」の社会実装に向けて、防災ソリューションの拡充、CO2抑制量の客観性・透明性を確保するための研究、そしてカーボンクレジット市場取引を実現するための金融商品化の整備などを加速するため、業種・分野の枠を超えた企業や大学、政府、自治体などのパートナーを募り、2023年度のコンソーシアムの設立を目指します。
1.背景
昨今、地球温暖化により水害や森林火災をはじめとする自然災害が激甚化・頻発化し、自然環境と社会経済の両面で日本のみならず世界中に大きな影響を与えています。自然災害においては森林火災などの発生時のCO2排出だけでなく、津波や洪水などによる被災後のインフラ・建築物の再建等でも大量のCO2が排出されており、世界でのCO2年間排出量約335億トンのうち10%以上がこれらの自然災害による影響とされています。(注*)こうした中、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー対策によって地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を削減・抑制する「緩和(Mitigation)」への対応だけでなく、気候変動の影響に備える「適応(Adaptation)」への対応も脱炭素社会に向けた取り組みとして重要となっています。
現在、炭素の含有量に応じて税金を課す炭素税や、国や企業ごとに定めた温室効果ガスの排出枠を取引する排出量取引制度が欧州をはじめ各国に広がりを見せる一方で、自然災害による将来のCO2排出を想定した抑制量に対するインセンティブの仕組みの検討が進んでおらず、企業や政府、自治体などによる防災・減災を目的とした先進技術の開発やインフラや建築物の整備・導入、それらを下支えする積極的なESG投資に繋がりにくい状況にあります。
こうした中、NECと慶應義塾は、産学連携を通じたオープンイノベーションにより世界的な社会課題の解決に向けた共創活動を2021年から取り組む中で、「防災×カーボンニュートラル×工学」による新たなアプローチの検討を進めてきました。
2.「潜在カーボンクレジット」の概要
NECが取り組むリアルタイム津波浸水・被害推定システムやインフラ監視技術などの防災ソリューションの技術開発を通じて培ってきた実績・ノウハウと、慶應義塾の学術的知見と学際的な活動を組み合わせることで、「自然災害の被害発生率」や「被災による構造物の被害額」、「防災ソリューションによる減災率」などから将来のCO2排出の抑制量を算出・可視化し、現在の価値として金融商品化することで資金循環を可能とする新たなアプローチです。これにより、例えば、津波や洪水などの水害に対する防災ソリューションと、被災エリアの建造物の健全度などの情報を組み合わせてシミュレーションすることで、建造物の倒壊・再建の回避に伴う将来のCO2抑制量を可視化することが可能です。
これらの算出・可視化したCO2抑制量に対して、インセンティブが働くようにファイナンスの仕組みで金融商品化する取り組みを進めていくことで、企業や政府、自治体などによる脱炭素に向けたESG投資と防災・減災対策を目的とした投資活性化を推進していきます。


3.今後の展開
NECと慶應義塾は、脱炭素社会を実現するための気候変動対策となる今回の新たなアプローチ「潜在カーボンクレジット」の社会実装に向けて推進していきます。津波や洪水などの水害や、地震や森林火災などの自然災害への潜在カーボンクレジットの適用について検討を進めていくとともに、防災ソリューションの拡充やCO2抑制量の客観性・透明性を確保するための研究、そしてカーボンクレジット市場取引のための金融商品化の整備などを加速するため、業種・分野の枠を超えた企業や大学、政府、自治体などのパートナーとともに2023年度のコンソーシアムの設立を目指します。本コンソーシアムにおいては、早期に実証活動が実施可能な体制を構築し、各地の自治体とともに将来のCO2抑制量の検証を進め、金融商品の開発を推進していきます。
今回の発表にあたり、以下のエンドースメントを頂戴しています。
“防災大国である我が国には、社会のレジリエンスを維持するために防災はコストではなく必要な投資であるという概念が浸透しており、日本が議長国としてとりまとめた仙台防災枠組の優先行動にもそれが色濃く反映されました。気候変動により激甚化する災害に対しては、気候変動適応の領域において、国が具体的な対策を考え先行投資も開始しており、世界をリードしていると言えます。「潜在カーボンクレジット」は、気候変動の適応に取り組むステークホルダーの行動を市場を通じて可視化する仕組みです。ESG経営に注力する企業は、「潜在カーボンクレジット」への投資を通じて社会貢献活動を世の中に示すことができるので、この仕組みは経済により気候変動適応への行動変容を促す実効的なインセンティブとなる可能性を持っています。一般財団法人・世界防災フォーラムは、日本が世界へ向けて発信する気候変動適応への促進施策となりうる「潜在カーボンクレジット」の実現を、大変期待しています。”
一般財団法人 世界防災フォーラム代表理事
東北大学災害科学国際研究所 教授
小野 裕一
“GeSI (Global Enabling Sustainability Initiative)は、喫緊の社会課題に対応したデジタルソリューションの開発と実装の推進を目的とした、業界の壁を超えた持続可能な先進的イニシアチブです。わたしたちの世界をより良いものに変革するために、GeSI は、デジタルイノベーションの創出に責任をもって取り組んでいます。GeSIによる SMARTer2030 という調査では、ICT によって世界全体のCO2排出量の 20%を削減できることがわかっています。しかし、気候変動の適応の分野でのデジタル技術の貢献については、まだ十分な研究がなされていないと言わざるを得ません。NEC のような技術をリードする企業が、気候変動への適応に大きく貢献できるデジタルソリューションに革新と投資をもたらしているのは、非常に素晴らしいことです。GeSI は NEC とともに、実世界におけるデジタルソリューションの展開を強化・加速し、すべての人々が持続可能な暮らしを実現できるよう努力してまいります。”
GeSI CEO, Luis Neves
以上
- (注*)2023年2月6日現在、NEC調べ。
本件に関するお問い合わせ先
NEC デジタルテクノロジー開発研究所
E-Mail:pcc@lab.jp.nec.com

NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。
https://jpn.nec.com/brand/