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見えていなかった“データの因果関係”を可視化 「なんとなく」から脱却するには? NECワークショップで学ぶ

企業活動の中で、商品に値段を付けて売る、顧客の反応を見てサービスや企業の運営方針を調整するといったことは当たり前にやることだ。しかし、それを「なんとなく」ではなく、明確な根拠に基づいて判断するのは難しい。市場調査をしても「理由は分からないがどうやらそうらしい」という結果が出ることもある。それでは次のアクションにつなげにくく、なかなか成果につながらない。

これに対して、なぜそのような結果が出たのかを明らかにするのが「因果分析」という技術だ。

例えば、ある洗剤の販売数を伸ばすため商品についてアンケートを取ると、消費者がその洗剤を買うのには「価格」「品質」「香り」「パッケージのデザイン」「ブランド」などさまざまな理由があることが分かる。因果分析の目的は、アンケート結果から各項目の因果関係を明らかにし、商品の改善案を導き出すことだ。

従来は、因果分析を行うには統計学やプログラミングなどの専門的な知識が必要だった。そんな因果分析を、専門的な知識がなくても手軽に扱えるようにしたツールがNECのAI技術を活用した「causal analysis」(コーザルアナリシス)だ。

同社は7月に、企業のIT部門や企画職などを対象に同ツールを活用するワークショップ「AIで共創するまちづくりのストーリー ~causal analysisで住み続けたい要因を紐解くハンズオン~」を開催。参加者はある自治体が公開しているオープンデータを使って因果分析を行い、結果を基に政策立案を体験した。

このワークショップはNECのユーザー企業が集まる「NECユーザー会」(NUA)の中でも、AIの事例研究などを行う分科会「NUAデータアナリティクス研究会」の月例会として開催したものだ。今回はそのワークショップの模様をレポートする。

ワークショップはオンラインで開催

自治体の「まちづくりアンケート」を分析して課題を洗い出す

ワークショップでは、さまざまな企業から集まったメンバーを「環境」「教育」といった5つのテーマごとにチーム分けし、自治体の課題を分析。住みやすいまちづくりのために重要な要素は何かを探る。因果分析に使ったデータは自治体が実際に収集した「まちづくりアンケート」。これは14のテーマについて市民に意見を求めたものだ。

各チームはcausal analysisを使い、以下のテーマに沿ってアンケートを分析した。

  • Aチーム:環境(緑の豊かさと水辺の魅力)
  • Bチーム:こども(安心して出産、育児ができる環境)
  • Cチーム:教育(小中学校における教育環境の充実)
  • Dチーム:シニア(高齢者が生きがいや役割を持ち、安心して暮らせる環境)
  • Eチーム:ダイバーシティ(あらゆる人が暮らしやすい環境)

今回は中でもシニアの課題を分析したDチームにフォーカスを当てて見ていく。約5人のチームメンバーはそれぞれ、causal analysisを操作する人、書記、完成した政策を発表するプレゼンター、施策がすでに行われているかを調べるリサーチャーなどに分かれて因果分析を体験した。

まずは、あらかじめCSV形式で保存されたまちづくりアンケートの結果をcausal analysisに読み込ませる。すると「病院が充実」「高齢者の生きがい」「住み続けたい度」といった要素が画面上に表示される。それぞれの要素は因果関係を示す矢印によってつながっており、画面上で要素や矢印を動かして整理することで、因果の構造を把握できる仕組みだ。

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「住み続けたい度合い」についての因果関係

高齢者の満足度を上げる方法を因果分析で探る

整理してできた図を見ると、高齢者にとっては「身近な病院・診療所が充実」していることが「高齢者の生きがい」へとつながっていくようだ。

参加者は「『近所で助け合う体制』が充実している方が生きがいにつながると思ったのだが」「病院が地域コミュニティーの場になっているのでは」「地域コミュニティーの場を病院以外にも作る必要があるのでは」などの意見が出た。

また、「地域で高齢者の交流活動が充実」という要素は「地域での助け合い」「自分に合った仕事・活動がある」といった多数の要素に矢印が伸びている重要な位置を占めるものだと分かった。

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「地域で高齢者の交流活動が活発」が中心に

causal analysisでは、各要素の“強さ”を変更して因果関係にどのような変化が起きるかをリアルタイムにシミュレーションする機能もある。例えば、上で出た仮定を検証するため「地域で高齢者の交流活動が活発」のポイントを改善させると、「近所で助け合う体制」を経由して「高齢者の生きがい」のポイントがアップすることが分かった。

これらを踏まえて検討した結果、「交流が活発になれば関連して高齢者の生きがいも向上し、住み続けたいまちになる」という知見が得られた。

このことから参加者は、病院以外にもコミュニケーションの場を作り、交流を増やすことが、シニアも活躍できる住みやすいまちづくりに重要だと結論付けた。

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最終的なDチームの因果関係図

チームでデータ分析することの成果

ワークショップでは各チームが最終的に得られた結果と、立案した政策を発表した。

  • Aチーム(環境):生活圏や水辺の緑地化、住民参加型の清掃イベントを開催
  • Bチーム(こども):待機児童の解消、転入者のネットワーク作り
  • Cチーム(教育):デジタルツールを活用した学習支援、学校と地域のコミュニケーションを強化
  • Dチーム(シニア):病院以外の交流の場や、シニアと若い世代が交流できる行事を作る
  • Eチーム(ダイバーシティ):情報発信の強化、バリアフリーな公共交通機関の整備

審査の結果、最優秀賞は教育分野を担当したCチームに決定。Cチームでcausal analysisを操作した担当者は、その使い心地について「こうした可視化ツールは始めて使ったが、直感的で分かりやすかった」とコメント。他のメンバーからは「専門的なノウハウがなくて分析できる、各要素の強さの調整などもグラフィカルで、誰でも使えるのはよいと思った。会社内で共有したいと思う」と語った。

今回のワークショップを総評して、審査員から以下のコメントがあった。

本橋洋介氏(日本電気 AI・アナリティクス事業部シニアデータアナリスト)

「どのチームの結果も素晴らしかったです。こうした取り組みは、結果的に直感通りの結果になったとしても発見があるし、一致しなくても発見があります。実際の因果分析では各要素について相当掘り下げて仮説を立てた上で統計的な評価をしますので、その際に使えるツールとして面白いと思ってもらえれば幸いです」

渡部 睦氏(NECソリューションイノベータ 公共ソリューション事業部シニアプロフェッショナル 兼 日本電気 公共システム開発本部プロジェクトディレクター)

「証拠に基づいた政策立案は近年、実践も重視するという意味でEIPP(証拠に基づいた政策と実践)という概念に進化しています。因果関係を求めるのは難しいですが、causal analysisは対話的、実践的に使えるツールです。今回、議論してみて熱のあるものができたので、この取り組みは素晴らしかったと思います」

小泉昌紀氏(日本電気 コーポレート事業開発本部シニアエキスパート)

「今回は、短時間ではありましたが、仮説の設定から因果分析結果に基づいた施策検討までの一連の作業を通じて、データを活用したマネジメントサイクルを体験いただけたと思います。これを機会に、皆さまの会社の中でも、どの業務からデータを活用したマネジメントサイクルに取り組めるか考えてみるのも面白いですね」

活用範囲は政策立案以外にも

今回のワークショップを通じて、さまざまな方面からデータを分析し、仮説を立てていくという因果分析の手法についてはお分かりいただけたと思う。今回は住民へのアンケートを基に因果分析を体験したわけだが、実際の業務でも生かせるポイントはさまざまある。

因果関係の要素さえはっきりしていれば、上記のような施策に関わるものだけでなく、製品開発やマーケティング、顧客とのリレーション向上、人財管理、マネジメント、商品の販売といった分野でも応用できる。

NECでは今回のワークショップのような形も含めて、因果分析の実施に際してサポートを行っている。これまでの相関関係分析では導けなかった新しい要素も見えてくる因果分析。現状の分析に不満がある場合は、ぜひともcausal analysisの導入を検討してほしい。

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