サイト内の現在位置を表示しています。

~社団法人 共同通信社 様~

WebOTX - 導入事例

不眠不休のニュース配信サービスを支え続ける高性能、高信頼のサービス実行基盤

国内外のニュースをいち早く入手し、加盟社であるメディア各社に配信する共同通信社。同社では、2002年、ニュース配信を担う「配信ゲートウエーシステム」をメインフレームからオープンシステムへと移行した。日本のニュース配信サービスを支える中核として24時間365日の安定稼働が不可欠なこのシステムに、同社が採用したのがサービス実行基盤「WebOTX」を用いたNECの提案だった。その選択の背景、現在までの稼働状況を同社の小林 將訓氏に聞いた。

ニュース配信手順の移行に伴いシステムのオープン化に着手

日本を代表する総合国際通信社として,国内外で起きたニュースを取材・編集し,全国の新聞社,テレビ・ラジオの放送局に提供する共同通信社。そのニュース配信の中核を担っているのが,「配信ゲートウエーシステム」である。これは,同社内にある一般記事の電子編集システム,プロ野球や競馬といったスポーツの記録情報を処理するシステム,あるいは株価をはじめとする経済情報を処理するシステムなどから記事素材を受け付け,各加盟社へ専用線経由で配信するためのもの。日々,各地で起こる様々なニュースをリアルタイムに取り扱うため,24時間365日,止まることは許されない。

同社は,2002年12月に,その配信ゲートウエーシステムを,メインフレームからオープンシステムへ移行した。背景には,メインフレームの運用におけるランニングコストの肥大化に加え,各加盟社への配信手順の変更に柔軟に対応できるシステムを実現しようというねらいがあった。「当時,当社と加盟社は,4800bpsの回線速度による“C手順”と呼ばれる方式で接続されていました。しかし,新たな報道媒体としてWebが一般化したことや新聞紙面作成工程の電子化の進展などを受け,2009年の3月までに,64kbpsを最低保証としたMQ(Message Queue)方式,XMLをベースとしたニュース配信フォーマットであるNewsMLを採用した新手順にすることが決まっていたのです」と共同通信社の小林 將訓氏は説明する。このような事情に対応するためにも,オープンシステムへの移行は急務だったわけだ。

難易度の高い移行を確実にする検証方法の提案などに安心感

そこで,同社ではベンダー各社に提案を依頼。その際,最重要の要件として,システムの性能と信頼性を挙げた。というのも,当該システムはピーク時には1時間あたり45万件の配信を遅延なく処理する必要があるからだ。

その上で,同社では,各社から寄せられた提案を綿密に検討。結果,同社では,システムの中核に,サービス実行基盤「WebOTX」を据えたNECの提案を採用した。

選定の要因になったのは,NECが1世代前の配信ゲートウエーシステムを担当しており,そのミッションクリティカル性を熟知していたことに加え,現行で稼働しているスポーツ記録系システムの構築実績があったことがある。「さらに,今回のシステムは,構築後に加盟社側のシステムも変更しなければなりません。ですから,単に構築するだけでなく,旧手順と新手順を並行稼働させながら,全てのシステムを順次移行するなど,難易度の高いものとなります。それに対しても,NECは,プロトタイプによる具体的な検証方法を提案してくれるなど,総合的な観点で大きなアドバンテージがありました」と小林氏は話す。

このような経緯を経て,同社がNECへの発注を決定したのが2000年9月のこと。それから約2年をかけてシステム構築を行い,冒頭でも述べた通り2002年12月に新システムは稼働を開始した。

カットオーバー後,しばらくは,リスク回避の観点から,新システムを旧来のメインフレームの後方に設置。各種記事作成システムからの情報を新システムで受け取り,それをメインフレームに送信。そこから加盟社に配信するという形態をとった。その後,稼働に問題のないことが確認できた2003年12月に,同社は新配信ゲートウエーシステムからの直接配信を開始した。

zoom拡大図
配信ゲートウエーシステムの概要

JavaVMの多重化で障害を局所化 万一の際の速やかな復旧を実現

新配信ゲートウエーシステムの構成は,2台のクラスタ構成となっているDBサーバ,受編集サーバに加え,4台の配信サーバを設置。配信サーバについてはn対1のクラスタ構成としており,その内訳は,2台を新手順,1台を旧手順での配信,残りの1台を待機系としている。

「2台の新手順用サーバには,加盟社を2つのグループに分けて,それぞれのサーバに割り当てていますから,2つの新手順と旧手順,計3種類のパッケージが存在しています。それらパッケージは,障害などの状況に応じて,どのサーバ上でも動作可能となっており,極端に言えば1台で全てを動かすこともできます」と小林氏は,連続稼働を実現する仕組みについて説明する。

そして,DBサーバを除く全てのサーバで稼働しているWebOTXも,稼働から約5年を経た今日まで,安定したサービスの実現に貢献している。従来はメインフレームで実行していた高度なトランザクション処理をJavaベースで実現し,ミッションクリティカルなシステムを支え続けているWebOTXの性能と信頼性に対する同社の評価は高い。

「性能と信頼性はもちろん,WebOTXは,JavaVMの多重化などの独自の機能によって,仮にどこかのプロセスで障害が発生しても,全体を止めることなく一部分だけ再起動できるようになっています。また,パッケージを別のサーバに移動する際にも,サーバの再起動などを行う必要がなく,速やかな移動が可能。万一の際にもサービスへの影響を最小限にとどめ,速やかに復旧できる仕組みを持っていることは大きなメリットと感じています」と小林氏は強調する。

ほかにも,問題点の究明や解析に役立つ豊富なログの提供,あるいは国内製品ならではのトラブルシューティングなどの際のサポートの迅速さといった点でも,WebOTXは同社に大きな安心感を与えているという。

一方,加盟社側システムの切り替えも順次進められており,2009年3月には,計画通り全面的に移行が完了する予定だ。

「現在,配信する記事情報には,写真や動画など容量の大きなコンテンツを取り扱うことが強く求められるようになっています。あと数年すれば,現在のシステムの更改の時期を迎えることになりますが,次期システムでは,今回実現した性能や信頼性を踏襲しながら,そうしたニーズにも対応していきたいですね」と小林氏は述べる。

もちろん,NECも,そうした構想の実現を強力に支援する考えだ。