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組織変革に「Microsoft Teams」活用

「すぐ聞く」「助け合う」風土を醸成

働き方改革の一環として意識改革や風土改革を掲げる企業は多いが、成果に結びつけることが難しいのが現実だ。NECでは、これまで事業部門ごとに配置していた機能を統合した新組織でこの難題に挑んでいる。この取り組みのために導入したのが「Microsoft Teams」である。これにより、部門内のコミュニケーションが深まり、社員の意識と組織の風土は大きく変わりつつある。

日常的なコミュニケーションをTeamsに移行

執行役員
CMO 榎本 亮

ほかの部署の社員と一緒に仕事をした際に、業務上の「ギャップ」を感じたことはないだろうか。例えば、同じ言葉なのに自分の部署とは別のモノを指していた、あるいは文書ファイルをサーバで共有する際にファイル名の付け方やフォルダの整理の仕方が全く異なっていたという経験をお持ちの方も少なくないはずだ。2018年の春ごろ、NECのマーケティング戦略本部は、まさにこうした状況に陥っていた。

 NECは現在、2017年4月にCMOに就任した榎本 亮の指揮の下でマーケティング機能の変革に取り組んでいる。2018年4月には、それまで事業部門ごとに配置していたマーケティング機能を集約する組織改革を断行。全社横断のコーポレート(本社部門)として設置されたのが、約300人が所属するマーケティング戦略本部とIMC本部である。

マーケティング戦略本部
主任 原 崇

同本部で主任を務める原 崇は「部署ごとに組織風土が異なっていたので、出身母体が違う社員間では気軽にメールで物事を頼めないような雰囲気がありました」と語る。

こうした状況に危機感を覚えた榎本がコミュニケーション改革に乗り出す。部門内の日常的なコミュニケーションには、電子メールに代えて「Microsoft Teams」(以下、Teams)を使うと宣言したのだ。コミュニケーションを活性化・円滑化することで、社員の意識と組織の風土を変えてマーケティング機能のパフォーマンスを高めることが大きな狙いだ。

トップの積極的な利用によって組織内に浸透

Teamsは、グループチャットやオンライン会議、ファイル共有などの機能を備えたコミュニケーション基盤。これらの機能をPCだけでなく、スマートフォンやタブレットからも利用できる。似たようなツールはほかにもあるが、全社員が日常的に利用している「Microsoft Office」と親和性が高い点を評価してTeamsを選定したという。

2019年の4月から利用の準備を進め、5月のゴールデンウイーク明けから本格的な利用を開始している。コミュニケーション改革で大きな役割を果たしたのがチャットである。個人向けのSNSツールでグループチャットを利用している方ならご存じだと思うが、メールとは伝達内容が大きく変わる。メールの場合は、社内向けでも文頭には「○○様 お疲れ様です」、文末には「よろしくお願いします」といった“形式ばった”ビジネス文章が並ぶことが多い。しかしチャットでは口頭の会話と同じようになるので、こうした文言を付けなくなる。「いいね」ボタンを押したり、ステッカー(画像)を返信したりするだけでも、相手に自分の意思を伝えられる。電子メールよりもコミュニケーションの敷居が下がり、表現もカジュアルになることがグループチャットの大きな特徴だ。

ただし、導入当初は戸惑う社員もいた。榎本の発言に対して、「いいね」ボタンを押してもよいかを事前に確認する社員もいたという。確かに、NECのような組織では、一般の社員が役員に対して、求められてもいないのに返信することには心理的なハードルがあるだろう。

しかし、誰もがフラットにコミュニケーションをとれるような風土にしなければTeamsのようなツールが組織に根付くことはない。これについて、榎本は次のように語る。

「新しいツールは上の者が使わなければ組織内に広がることはありません。経営層が率先して情報を発信していくことで、徐々に日常的なコミュニケーション手段として根付いてくるでしょう」

マーケティング戦略本部でも、トップである榎本が積極的に情報発信・共有を実践したことで、ミドルマネジメントもメールからTeamsに軸足を徐々に移行。並行してTeams勉強会の開催やTipsの定期投稿、部門内の状況共有をTeamsに移行することで、今では部内のコミュニケーション手段として完全に根付いたという。利用開始から3カ月たった7月の時点で、コミュニケーション総数は導入時に比べて180%増となったという。「すぐに聞く・軽く伝える・感謝する・助けの手をのべるなど、メールではできなかった多様なやり取りをするようになり、部門内のコミュニケーションが深くなったと感じています」と原は説明する。

「チーム」機能で情報の共有・活用の効率が向上

仕事の生産性も大きく向上している。情報の共有・活用の効率が飛躍的に高まったからだ。従来は、プロジェクトメンバーで情報を共有する際には、メーリングリストやCC(同報)機能でメールをやり取りしていた。文書ファイルをメールに添付している場合は、この管理は個人に任されていた。こうした環境では、メールのやり取りを追うだけでも長い時間を要する。自分が担当しているプロジェクトが1つだけならまだしも、複数のプロジェクトに参加していたら、情報を整理するのも骨が折れる作業となる。プロジェクトに新しいメンバーが参加した際にも、それまでの経緯やポイントを理解するのに一苦労してしまう。

複数のプロジェクトに参加していても、
「チーム」機能によって案件ごとに情報を整理できる

こうした問題を解決したのが、Teamsが搭載している「チーム」という機能だ。チームとは、部門やプロジェクトの参加メンバーのように限定されたユーザの間で情報を共有するための機能のこと。チームへの投稿は時系列で一覧表示されるので、いつでも状況を追うことが可能になる。マーケティング部門全体では、約60ものチームが設定されている。メールで添付していた文書ファイルは、Office 365に含まれているSharePointで統合的に管理できる。Teamsからシームレスに連携して文書を開き、複数人で同時に編集することが可能だ。

原は「意思決定のスピードが上がったこともTeamsの導入効果です」と評する。いつでもどこでもスマホからカジュアルなコミュニケーションができるので、情報の流通するスピードが格段に速くなったからだ。

Teamsを導入したのに活用が進まないと嘆く企業も多い。どうすれば利用が促進され、コミュニケーションの密度が高まり、情報共有や生産性が高まるのか、その道筋が見えてこないわけだ。今後、NECではこうしたTeamsユーザ企業の課題に対応すべく、日本マイクロソフトと共同開発し現在提供中の「NEC 365」の中に、自社やユーザ企業での導入、運用を通じて得られた知見を取り込み、Teamsの運用、利活用を支援するソリューションを提供していく予定だ。


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