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1分で100人以上認証し、混雑を回避
ゲートレス生体認証

NECの最先端技術

2023年5月8日

世界No.1の精度とスピードを誇る顔認証エンジン(注1)を核に、ウォークスルー顔認証やマルチモーダル生体認証などの多彩で先端的な生体認証技術を開発してきたNEC。今回は新たに、歩いている複数の人物を並行して認証する「ゲートレス生体認証」を開発しました。従来のフラッパーゲートや改札の考え方を根本から変える可能性もあるこのシステムについて、研究者に話を聞きました。

  • 注1:
    米国国立標準技術研究所(NIST)による顔認証ベンチマークテストでこれまでにNo.1を複数回獲得

カメラに映る大勢を並行して認証可能

森下 雄介
バイオメトリクス研究所
ディレクター
森下 雄介

― ゲートレス生体認証とは、どのようなシステムなのでしょうか?

森下:カメラに映る大勢の人物を同時に追跡し、顔が見えた時点で顔認証を行うというシステムです。本システムを使えば、ユーザーは認証デバイスにICカードをタッチしたり、決められたレーンに並んだり、顔をカメラに向けたりするような積極的な動作をする必要がありません。ただカメラが撮影するエリアを通り抜けていくだけでよいので、認証デバイスやゲートを設置する必要もなくなります。入退管理の概念を根底から変えるような新しいコンセプトのシステムであると考えています。

テーマパークや鉄道の改札、オフィスや工場の入退などのシーンでの混雑を防ぎ、スムーズで快適な入退管理が実現できると期待しています。

ポイントとしては2つあります。
1つは、カメラに映る人物を検出して一人ひとりを追跡するという点です。これによって、映像内の人物の認証が完了しているかどうかを見分け、漏れなく顔認証することができるようになります。

もう1つは、一瞬でも顔が見えたときに、すばやく高精度に顔認証をするという点です。顔が人物の陰に少し隠れているような場合でも、瞬時に認証できるようになっています。この2つのポイントを実現することで、リアルタイムに複数の人物を高精度に認証することができるようになりました。おおよその目安として、1台のカメラで1分間に100人以上の人物を認証することが可能です。

NECの生体認証技術を結集して開発

上村 純一
バイオメトリクス研究所
リサーチャー
上村 純一

― 個人の追跡はどのように実現しているのでしょうか?

上村:頭部を検出して追跡するというアプローチをとっています。顔は向きによる影響を受けやすく、追跡には不向きです。また、全身の情報を使うという方法もありますが、遮蔽物に隠れてしまったり、人同士が重なったりした場合には区別をつけにくくなるという問題があります。しかし、施設等に設置されているカメラは俯瞰での映像が多いため、頭部は比較的重なりにくい傾向にあります。そこで、頭部を使った追跡技術を開発していきました。これにより、人物が横を向いたり、後ろを向いたりした場合でも見失わずに追跡可能になっています。さらに、人や遮蔽物に隠れてしまった場合でも、次に現れたときには服装でマッチングする技術を採り入れることによって、高精度に一人ひとりを追跡できるような仕組みを仕上げていきました。


― すばやく高精度に認証するためには、どのような技術が使われているのでしょうか?

森下:NECの顔認証は世界No.1の精度を誇っていますが、ロバスト性も高く、顔の向きや遮蔽物にも強いという特長があります。マスクしたままでも認証可能です。この顔認証エンジンの特長を活かし、追跡した頭部がたとえ横を向いていても、陰に少し隠れているような場合であっても、高精度に認証できるようにしています。


上村:すばやくリアルタイムに認証するという点については非常に重要だと考えていて、細心の注意を払って構成しました。顔を認識したら瞬時に処理できないと、その人が通り過ぎていってしまうからです。本システムでは顔認証のほかにも、頭部追跡技術や人物照合技術などのさまざまなエンジンが走っていますが、各エンジンのプロセスに工夫を入れるほか、CPUとGPUを併用してうまく処理するなど、実装面での工夫も入れることで、リアルタイム性を担保しています。


森下:とはいえ、顔認証と各技術を単純に組み合わせるだけでは本システムは成立しなかったと思います。顔認証が完了した人としていない人をきちんと判別したり、追跡しながらうまく時系列で処理する必要もありましたし、各技術の振る舞いを熟知する必要がありました。世界トップレベルのさまざまな生体認証技術をもつNECだからこそ、社内で密に連携しながら構成できたシステムだったと思います。

実証実験によって、新しい入退システムを模索していく

― 今後、どのような展開を考えていますか?

森下:まずはさまざまなお客様と連携しながら、ゲートレス生体認証の価値や運用についての実証を進めていきたいと思っています。幸いプレスリリース後にはさまざまな方面からお問い合わせをいただけましたので、来年度は複数のお客様のご協力をいただきながら技術を高めていきたいと考えているところです。


上村:ゲートレス生体認証のコンセプトは完成しましたが、実証と運用はこれからです。より現実的なシステムの構成も考えていく必要があります。例えばこれまで運用されてきた駅の改札やオフィスエントランスのフラッパーゲートをゲートレス生体認証に置き換えた場合、どのように入場資格がない人を止めていくのか。お客様といっしょに新しい入退のかたちを探っていく必要があると思っています。


森下:そうですね。そういう意味では、他システムとの連携も必要になると思っています。いま上村さんが言ったように認証できなかった場合、現在私たちがつくったデモシステムでは、床面が光るなど、さまざまな表示を出して知らせるという方法を採っています。性善説に基づいて、ユーザー自身に気づかせるというかたちですね。ただし、この方法も一つのコンセプトに過ぎません。かわりにスマートフォンへ通知したり、警備員が止めるようにしたり、さまざまな運用形態があると思います。 

もしくは、テーマパークのような場所であれば入場ゲートだけ従来のフラッパーゲートを残して、中では全てゲートレス生体認証にするというような運用もあり得ると思っています。従来のゲートとゲートレス生体認証を組み合わせることで、現実的で利便性の高いソリューションが生まれる可能性もあるはずです。是非このあたりもお客様と議論を重ねながら、新しい可能性を探っていきたいと考えています。

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ゲートレス生体認証は、世界No.1の精度とスピードを誇るNECの顔認証エンジンを軸に発展させたシステムです。NECでは、これまでにもウォークスルー顔認証などのユニークで先端的な生体認証技術を開発してきましたが、同じカメラに映る複数の人物をもれなく並行して認証するシステムは、これまでになかった新しいアプローチです。顔認証のほか、頭部検出技術や人物照合技術、人型認証など、NECが開発してきたさまざまな生体認証技術を有機的に組み合わせてシステムを構築しています。

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