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学生のみなさんへ2024インタビュー:渋谷 恵
2024年2月27日
社会心理学を医療DXへ活かす

バイオメトリクス研究所
研究員
渋谷 恵
社会心理学を専攻し、人間科学で修士号を取得。その後、博士課程に進むと同時にNECへ入社。心理学の知識や手法を活かして医療の現場でソリューション課題探索に従事するほか、生体情報を活用したストレス推定と行動変容の研究を進めている。2023年1月からは1年間、海外留学制度を使って客員研究員としてアメリカの大学へ赴任した。
文理融合を進める研究職としてNECへ
私が学生時代に専攻していたのは社会心理学です。大学受験のルートで言えば文系ということになります。文系の研究職を採用する企業は日本ではまだ少ないので、すこし珍しいかもしれません。私が研究職で仕事を探していた頃は、ちょうどNECの研究所が学生向けに文理不問で開催していたワークショップという面白い試みをしていて、そこに参加したことをきっかけに、入社に至りました。
NECに入社後はストレス推定のほか、病院ソリューション課題の探索という研究を続けてきました。ストレス推定では、生体情報をもとにストレスを推定し、ユーザーにストレスを緩和する適切なフィードバックができるようなシステムの構築をめざしています。NECのバイオメトリクス技術と深く関係する研究です。
一方で、病院ソリューション課題の探索では、アメリカの医療機関等で広く採用されている「バイオデザイン」という手法を用いています。どんな技術や製品を作れば、医師の方々の労働時間の削減に寄与できるかといったインパクトを測定し、数値化するものです。医師の方について回って、どういう行動をしているか、どんな作業にどれくらいの時間を使っているかをストップウォッチで計ったりしていましたね。これは心理学の行動観察や質的研究が応用できる領域なので、勉強してきた知識を使ってうまく貢献することができたと感じています。
こういった仕事内容を話すと、よく友人からは「コンサルみたい」と言われるのですが、少しだけ異なる気がしています。なぜなら、コンサルティングと違って自分の仕事内容で論文投稿に挑戦したり学会にも積極的に参加できるからです。実際、私も機械学習・AIを専門とする研究者がつくったアルゴリズムを応用して実験することで、論文にまとめています。自分の名前で実績をつくりたい方には、向いている働き方なのではないかと思います。
海外留学制度を使って、1年間アメリカへ

私は修士を取得後、博士後期課程入学と同時にNECへ入社しました。博士号も取得したかったのですが、まずは就職して経済面を安定させようと考えたのです。単位取得のための課題は、GW(ゴールデンウイーク)、夏季休暇、授業への出席は時間休を使って両立してきました。新型コロナウィルスの流行を機に会社のリモートワーク化や大学のオンライン化が進んだこともあり、2022年には単位を全て取りきることができました。今は論文をまとめて博士号を取得しようとしているところです。論文には会社の研究成果を使うことができるので、研究職に就きながら博士号取得をめざすというのも、決して不可能な道ではないと思います。
また、昨年は1年間、会社の制度を使ってアメリカへ留学しました。会社には一定期間、国内・海外の大学に留学できる制度があり、研究所でも毎年留学希望者を募集しています。一般的な留学と違って客員研究員として大学に受け入れていただけるので、交渉次第ではアカデミアの第一線で活躍している現地の教授たちと密に連携することができます。ストレス推定の研究を進めるうえで、とても貴重な経験となりました。
さらに、留学にあたっては会社が資金を援助してくれます。客員研究員としての受け入れ費用は会社が出してくれますし、現地での滞在に必要となる費用も支給されます。商社の駐在のような仕組みなので、非常にありがたかったですね。いまアメリカは物価も高いので、自分だけでは留学なんてできなかったと思います。
周りから異分野の知識を学べる環境

AIや機械学習などの専門知識は、入社してから周りの方々に教えていただくことが多かったですね。社内では、まるで学会のような技術交流会や研究所内ポスター発表なども度々開催されています。研究発表している人のところへ行って話を聞いたりすることもできるので、さまざまな技術を学びやすい環境です。もちろん、自主的に勉強を進めて行きました。ある程度の知識がなくてはチーム内で対話できませんから。大学では勉強できなかった分野なので、勉強するのは楽しいですね。
また、私の立場としては、研究の倫理面をしっかりと遵守することを意識していきたいと考えています。文系の人間科学を専攻すると研究に伴う倫理審査は必須なので、この辺りも学生時代の専攻が役立っています。人を扱うデータが多いので、データの収集にご参加いただいた方にはできるだけ不快な思いをさせないようにしたり、負担を減らしたりすることは常に気をつけているところです。技術の精度を上げるためにたくさんのデータを収集することはもちろん大切ですが、こうした倫理面のバランスも考えることも極めて重要な点だと考えています。
今後は、せっかくアメリカへ留学も行けたので、グローバルな感覚をキープしていきたいですね。NECの海外研究所でも、機会があれば是非働いてみたいと思っています。

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休日何してる?
アメリカは日本と食文化が違うので食べたいものを食べるために、料理をするようにしました。小規模で安価な実験という感覚で楽しんでいます(笑)大規模な実験ではサーバーを買ったりするのに莫大なお金が必要になりますし、そのぶん失敗すると落ち込んでしまいますが、料理にかかるコストは高くても1000円~2000円です。失敗しても、食べられるので小さい実験として楽しいですよね。他にもたくさん趣味はあって、メタルや深夜ラジオが大好きで、よく聴いています。

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