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インターン体験記インタビュー:中島 明

2024年4月2日

インターンからNECと大学の共同研究へと発展

中島 明

セキュアシステムプラットフォーム研究所
研究員
中島 明

2023年に修士課程修了後、NECへ入社。学生時代から暗号研究に従事し、現在は秘密計算を中心としたデータセキュリティ領域での研究に取り組んでいる。

就職のことは考えず、勉強のためにインターンへ参加

NECのインターンを知ったのは、修士1年の5月頃に大学のメーリングリストに届いた案内でした。研究インターンシップという枠で案内がきていて、私が専攻している準同型暗号での募集があったんです。そこで、自分の専攻だし、勉強になるだろうと考えて申し込みました。当時はまだ就職ということも考えていなかったので、あくまでも自分の研究のために応募したというのが本当のところです。とりわけ、NECは暗号の分野で国際的に活躍されている研究者の方がたくさんいらっしゃいます。指導教官に相談したときも「NECの研究所なら勉強になると思います」と言われて勧められたことを覚えています。
私は当時九州に住んでおり、インターンにはリモートというかたちで参加しました。ただ、そのときは2021年の夏で、ちょうど東京オリンピックが開催されていた頃です。新型コロナウィルスの感染者数も広がっていた時期でした。当初はインターンの最初と最後には研究所へ訪問する予定だったのですが、状況を鑑みてフルリモートに移行し、PC端末の受け渡しから返却も宅配で行われました。採用面接や内定式もオンラインだったので、私がNECの社内に足を踏み入れたのは入社してからということになります。
とはいえ、インターン期間中はメンターの方がついてくださって、2日に1度くらい相談や進捗報告の機会がオンラインで設けられていましたし、チャットでも常につながっていましたので放置されているような感じはありませんでしたね。チームメンバーと雑談中心の1on1の時間もインターン期間中に設けていただきました。
もちろん現在はリモートだけでなく、出社して対面で仕事をすることもできます。実際、今年度インターンに来られた学生さんは社内で業務をしていた方も多かったようです。より刺激を受けられる環境になっていると思います。

初めての本格的な実装で感じた楽しさとやりがい

インターンの大まかなテーマは、募集時に提示されますが,具体的な取り組みの内容は配属先の状況と自分の興味やスキルを鑑みて、上司やメンターと相談しながら決めていきます。私の場合は、暗号の実装をメインに行っていきました。それに加えて、暗号方式の調査とゼミ形式の勉強会、改良検討も行いました。勉強会では、私が調査した暗号方式のアルゴリズムなどの情報をスライドにまとめ、チームメンバーの方に発表して指摘を受けたり質疑応答が行われたり、皆でアルゴリズムの改良を考えてみたりしていました。活発な議論が交わされて、とても刺激的な場になりました。
実装では、準同型暗号(暗号化したまま計算を行える暗号方式)の開発に取り組みました。本格的な実装は大学ではあまりやってこなかったので、とても新鮮な体験でした。暗号を実用的に実装しようとすると、色々と気を遣うべき部分があります。例えば乱数の生成では、ゲームなどの実装で使われるようなものは使用できなくて、きちんとしたセキュアなものを使用しなければいけません。私は学部まで数学専攻で、修士から暗号を本格的にやり始めた初学者だったので、そういった基本的な作法も出来ておらず、メンバーの方に指摘されて初めて習得しました。また、実用的な速度の追求も大事なポイントになりました。
当然のことながら、企業の研究では製品化や事業につなげることを目標にしていきます。このソリューションに使うなら、この暗号方式の方が得意だろうであるとか、逆にこの認証にこの方式は不向きだから違う方がいいなどの議論が繰り広げられます。社会実装をゴールに置いたこのような議論はとても刺激的でした。自分の考えた技術や実装した技術が、世のため人のためになり得るんだということを実感できて、とても楽しかったですね。もちろん、その気持ちは現在も変わりません。

インターン期間中のある1日をご紹介

8:30
業務開始(自宅でリモート)
調査および実装作業
12:00
大学の院生室へ移動・友人と昼食
13:00
院生室で,調査および実装作業
15:00
進捗報告
16:00
調査および実装作業
17:15
勤務終了

インターン時の研究から発展し、共著で難関国際学会へ

私の場合、インターン時に取り組んだ暗号の研究活動はインターン期間終了後も続きました。大学の研究室とも本格的に連携してNECとの共同研究という形をとることになったのです。その結果、本内容をまとめた論文が暗号系の難関国際学会であるESORICS '23に無事採録されて私も共著者として名を連ねることができました。(注1)先輩が現地へ向かって口頭発表を行っています。
NECのインターンでは、このように期間中の研究が学会発表に結びつくということも珍しいことではありません。今年度も、インターン実施期間中に学生の方が出した成果が、その学生さんの名前を著者に含むかたちで国内学会で発表されました。
また、直接的に研究内容がアカデミアでの成果に結びつかないとしても、インターンで学んだことは自身の研究の糧になります。私も、NECのインターンを通して暗号技術そのものについての知見を得ることができ、成長できたと思っています。実際、修士2年のときに発表した論文では、国内学会SCISの論文賞を受賞することができました。(注2)受賞式は今年1月に行われました。自分の研究の幅を広げたり深めたりするためにも、NECのインターンは良い機会になると思います。
インターン終了後エントリーが始まったことを知り、私もすぐに応募しました。面接では、私の場合は「NECに入社したら実現したいこと」について資料を作成しプレゼンするという内容でした。非常にスピーディに選考が進み採用をいただけたので、そのままNECへの入社を決めています。インターンはとても楽しかったですし、チームの方々も優しくて良い方だったので、NECに入社できるなら万々歳という想いでした。
NECの研究者には尊敬できる方たちが多いです。アカデミアで活躍して研究者として成果を長年残している方もいますし、周囲との調整や共創を進める力に長けた企業人としての力に秀でた研究者の方もいます。こうした職場で働けるのは、非常に刺激的でありがたいことだと思っています。

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