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学生のみなさんへ2024インタビュー:前田 和佳子

2024年11月6日

ディレクターとして大容量光伝送の未来に貢献

前田 和佳子

アドバンストネットワーク研究所
ディレクター
前田 和佳子

大学で通信工学を専攻し、修士課程修了後の2002年4月にNECへ入社。2003年から量子暗号の研究に従事する。その後、2008年から大容量光通信用信号処理LSIの研究開発に従事。2016年4月から2021年7月まで日本電気特許技術情報センターに出向して特許調査業務に就いたのち、2021年から量子暗号の研究に復帰。2023年4月には量子暗号研究グループのディレクターを務める。2024年4月からは大容量光伝送システム研究グループに移り、ディレクターを続けている。

社会に大きなインパクトを与える通信技術の研究

私はNECに入社後、大容量光伝送や量子暗号通信の研究に従事してきました。量子暗号は、絶対安全な暗号通信を提供する技術です。量子コンピュータはその膨大な計算量で現代暗号を無力化してしまいますから、量子暗号通信が実現できれば暗号解読とのいたちごっこ解放されるのです。こうした社会に大きなインパクトを与え得る技術の研究に携われることには、研究者として大きなやりがいを感じます。

大容量光伝送領域ではさまざまな技術を研究してきましたが、現在はNTT様が中心となって推進しているIOWN構想を支える技術を研究しています。IOWNとは、エレクトロニクス(電子)ベースではなくフォトニクス(光)ベースネットワークで世界中をつなごうとする構想です。ニーズに応じてコンピューティングリソースを最適化しながら、膨大な情報を瞬時に処理する次世代コミュニケーション基盤になり得ると考えられています。私のチームでは、この構想を支えるオールフォトニクス・ネットワーク実現のために重要となる小型で消費電力を削減できるNEC独自の波長変換技術を研究開発しています。

企業研究の醍醐味は、自分が研究開発した技術が社会で実際に活用されることにあると思っています。例えば私が開発に携わったLSIは、太平洋を横断する海底ケーブルの端局に使われています。日本からアメリカのサーバにアクセスする際には、きっと皆さんのお役に立っているはずです。事業部に技術を移管した後、最終的に実装されたと知るときは、本当に嬉しいものです。

2023年からはディレクターに就任してチームのマネジメントに取り組んでいます。一人の研究者として研究を追究することと、ディレクターとしてメンバーを取りまとめて研究を進めることには大きな違いがありますが、もともと一つの研究課題を突き詰めるというよりも、広く研究課題に興味を持って取り組むタイプだったので、性に合っているかなと考えています。

男女問わず働きやすい環境をつくる

マネジメント時に気をつけているのは、メンバーとできるだけポジティブに接することです。これには理由があって、子どもを預けていた保育園の先生方に衝撃を受けたからです。もう10年ほど前のことにはなりますが、とにかく何かにつけて子どもたちのことを褒める保育士さんたちの姿を見て、普段の会社のコミュニケーションとの違いに驚いたことを覚えています。チームメンバーを子ども扱いするというわけではありませんが、このコミュニケーションを見習おうと思ってから現在に至ります。

2010年に1年間産休と育休をとりましたが、当時から研究所にはいわゆる「マミートラック」のようなものはなく、男女分け隔てなく働くことができる風土があったと思います。逆に、分け隔てなさ過ぎて困ってしまったくらいです(笑) そうした状況もあって、2016年からグループ企業である日本電気特許技術情報センターに5年間ほど出向していました。しかし、現在はスーパーフレックスが採用されたり、リモートワークも拡充されたりしたことで、かなり働きやすくなったと思います。以前はもし子どもが愚図って朝5分でも遅れたら、半休を取得しなければなりませんでしたが、コアタイムがなくなった現在ではそのような心配もありません。

会社の風土も大きく変わり、滅私奉公的な働き方は否定されるべきものになりました。男性の育休も取得が推進されていて、手続きを含めて柔軟かつ手軽になっています。分割して育休を取得できるのも良いですね。私もよく男性のチームメンバーには出産時と保育園入園時に分けて取ると配偶者に喜んでもらえるよとアドバイスしています。

男女問わず、子育ても自分のキャリアも大事にしたいという研究者を応援できるような制度になってきたのではないかと思っています。

何事も「自分ごと」として考える研究者へ

ディレクターとして研究者に対して願うのは、何事にも「自分ごと」として取り組んでほしいということです。「(誰かが)こうすればいいと思う」ということではなく、常に自分ならどうするかという視点を持って前向きに取り組む研究者には、結果がついてくるものだと思っています。

これは、私だけの考えではありません。いま私が所属しているアドバンスネットワーク研究所の所長はフランス出身の研究者なのですが、言語体系の違いもあって、いつも主語を気にしていて、常々”I”で語ってほしいと話しています。「オーナーシップ」という言葉も強調していて、私も強く共感しているところです。

一方で、1人でできることは限られていますから、皆で力を合わせることも重要です。私も自分の子どもが小さくて手のかかる頃は、1人でできる作業の方がラクで良いなと考えたこともありましたが、手が離れて自分の時間ができてくると、チームのみんなとワイワイやりながら、一人ではできない大きなことをすることがとても楽しくなってきています。皆で切磋琢磨しながら研究に取り組んで、社会に大きなインパクトを与えられるような技術をこれからも開発していきたいと考えています。

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