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学生のみなさんへ2025インタビュー:柴田 大作

2025年3月19日

医療現場で広く使われる自然言語処理AIめざして

柴田 大作

バイオメトリクス研究所
主任
柴田 大作

医療言語処理の研究で博士課程修了後、大学の特任助教として2年間勤務。その後、2023年4月にNECへ入社。専門である医療言語処理の研究に取り組み、大規模言語モデルを活用した電子カルテシステムの製品化に貢献。医療文書作成の効率化による医療現場の働き方改革に取り組んでいる。ここで得た知見の論文投稿や学会への参加も積極的に取り組んでいる。

アカデミアの世界から産業界へ

私は特任助教として大学院に2年勤めた後、2023年にNECへキャリア採用で入社しました。アカデミアから企業に移ったのは、産業界からも医療言語処理に取り組んでみたいという気持ちがあったからです。企業ではどのような研究開発に取り組めるのか知りたかったので、転職を考えました。

数ある企業のなかからNECを選んだのは、学会で会ったNECの社員に話をうかがったことがきっかけです。私が取り組んできた医療言語処理にNECでも取り組んでいると聞いて、興味をもちました。実際、私は入社後もそれまでの研究テーマを引き継ぐようなかたちで医療言語処理の研究を続けています。

アカデミアとの違いを感じるのは、研究と実運用のバランスを考える必要があるということでしょうか。例えば病院で使うシステムをつくる際には、計算資源を大量に消費するような大きなモデルを使うことが難しい場合があります。全体のコストを考えながら、うまく最適化する必要が生じます。こうしたやり繰りは、企業で取り組む研究開発ならではのものかもしれません。

NECは病院に納入する電子カルテのベンダーでもあります。これは、医療言語処理の研究開発を進めるうえでは、非常に有利なポイントです。実際に病院で使われるカルテシステムと連携しながら製品化を進めることができます。事実、私も研究開発に参加した電子カルテシステムは、2024年4月に「MegaOak/iS」として販売されました。大規模言語モデルを活用して、医療文書作成を支援することのできるシステムです。こうして実際に医療現場でたくさんの人に使われるようなシステムを作ることができるのは、NECに来てよかったと感じることの一つです。

とはいえ、製品化が研究開発の終わりではありません。製品が実際に使われて、フィードバックをもらって、改良するというサイクルを続けていくことが重要であると考えています。

アカデミアでの研究との大きなギャップはない

医療言語処理は、医療現場で作成されるテキストや音声などのデータに自然言語処理を活用し、文書作成支援や診断支援を実現しようとする研究分野です。私は基本的にテキストデータを扱っていますが、医療現場の文書は独特で、カルテに記載される言葉なども非文法的で断片情報の羅列であることが多いのが実情です。そのため、専用のモデルをつくる必要があります。医療の知識やノウハウも必要なので、NECでは東北大学病院様をはじめとしたさまざまな大学や医療機関と連携しながら研究開発を進めています。実際の現場で作成されたデータを扱うことができるのは、機械学習を行う研究開発において恵まれた環境だと言えるのではないでしょうか。

こうした話をすると、現場での応用研究や製品化だけに取り組んでいるかのように聞こえるかもしれませんが、並行して論文も執筆し、学会への参加も続けています。入社から2年経とうとしているところですが、学会発表も行っており、もうすぐ3月にも発表を予定していします。学会での活動も続けられるということは強調しておきたいです。大学院で所属していた研究室などと関わる機会もあります。こうした状況があるので、アカデミアからのギャップというのはあまり感じずに研究に取り組むことができています。

「これだけは負けない」ポイントを一つつくる

NECの研究所の良いところとして、研究開発の「研究」に寄ってもいいし、「開発」に寄ってもいいというところがあると思います。自分の特性や希望に応じて、そのバランスを調整できるというのは良いことだと思います。こうした環境を生かして、何か自分の特色を出せるような研究者になれると良いですね。何か代名詞となるような研究テーマをもつ研究者は強いものです。私は医療言語処理の研究開発で特色を発揮しようとしていますが、学生の皆さんも何か一つ「これだけは負けない」というポイントをつくっていただけると良いのではないでしょうか。

とはいえ、いま取り組んでいる研究テーマだけに縛られる必要はありません。私のチームにも、これまで医療言語処理を専門で研究してきたという人は、実はそれほど多くありません。大半が他の研究テーマに取り組んできたという方ばかりです。自分が学習してきた知識や研究で培ってきたノウハウを活かして、企業に入ってから異分野で活躍する人もたくさんいます。NECには海底から宇宙に至るまでたくさんの研究テーマがありますから、自分が活躍できるテーマを是非見つけて取り組んでいただけたらと思っています。

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最近、筋トレを始めました。学生時代はバスケットボールなどをやっていたのですが、ここ数年の間はまったく運動できていなかったせいか体力の衰えを感じるようになったからです(笑) 時間のあるときに、息抜きを兼ねて筋トレしたり、ランニングも取り入れたりしながら、体力をつけようと取り組んでいます。

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