サイト内の現在位置

NEC Analytics Challenge Cup 2021の魅力とは?―最優秀賞受賞者インタビュー

NECでは、AI人材育成を目的として2017年より「NEC Analytics Challenge Cup」を開催。NECグループの枠を超え、連携企業・大学と切磋琢磨している。このコンテストの特徴は、モデルの予測精度を競うコンテストだけでなく、AIやデータのビジネス活用を推進できる人材育成を目的としたコンテスト部門を設けていることにある。今回は、このような人材育成を目的に開催した「最先端AI技術活用コンテスト」「アイデア企画コンテスト」「データ活用コンテスト」の最優秀賞受賞者の方々に対して、コンテストにかける想いやその魅力を聞いた。

最先端AI技術活用コンテスト 最優秀賞受賞者

小澤 英里奈さん NECソリューションイノベータ株式会社 デジタルソリューション事業部

アイデア企画コンテスト 最優秀賞受賞者

岩嶋 有里さん NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーション推進本部

データ活用コンテスト 最優秀賞受賞者

近藤 研二さん NEC デジタルサービスソリューション事業部

中田 一人さん NEC 第一官公ソリューション事業部

岩井 良典さん NEC 第一官公ソリューション事業部

最先端AI技術活用コンテスト

NECの最先端AIを活用した分析結果のビジネス価値を競う「最先端AI技術活用コンテスト」。今年度は、“SAiL”、“ルール発見型推論”というNECの中央研究所が研究・開発しているAIをテーマにNECグループ内で開催した。最優秀賞に輝いたのは、小澤 英里奈さん(NECソリューションイノベータ)だ。

―― 普段の業務内容についてと、コンテストに参加された動機を教えてください。

小澤さん:普段の業務ではMI(マテリアルズ・インフォマティクス)領域のデータ解析を担当しております。MIとはAIや情報処理技術を活用して、材料開発を適切かつ効率的に進める取り組みのことです。NECのセミナーで学んだルール発見型推論がMIに活かせそうだと感じており、今回のコンテストで実際に検証できると思って参加しました。

―― 今回のアイデア、データ分析の内容はどのようなものでしょうか。

小澤さん:ワインのオープンデータを用いて、材料開発を適切かつ効率的に行うための分析手順を考案・検証しました。従来の材料開発は、研究者の知識、外部情報などを基に実験計画を立て、膨大な研究費と手間をかけて実証を繰り返す必要があります。AIを活用することで傾向を適切かつ効率的に取得し、製造の手間・コストを最小に抑えられるのではないか、というのが着眼点です。

例えば、品質が10段階中7以上のワインを製造するための分析手順としては、

① 「各成分をどの値以上/以下にすれば、品質が7以上になるのか」という製造条件を、ルール発見型推論を用いて推定する。
② ①を満たしつつ、「各成分をどの値にすれば、製造の手間・コストが最小になるのか」を、最適化によって導き出す。
という流れです。

―― コンテストに参加されていかがでしたか。

小澤さん:ルール発見型推論のメリットを実感することができました。回帰分析では特定の成分を「多くすればいい」というところまでは分かりますが、その先の情報がわかりません。ルール発見型推論では、各成分が「どのくらい」必要かまで分かります。ルールとルールに当てはまる過去の実験データを確認することで、熟練者の暗黙知を数値化でき、新しい知見が得られやすいという利点も感じました。

また、今回考案した分析手順をベースとして、実際の業務データに応用できるようMIメンバーと改良に取り組んでいるところです。実際の業務に繋がる可能性が見えてきたことは予想以上の収穫でした。

―― 今後コンテストへ参加される方へのメッセージをお願いします。

小澤さん:私は入社4年目でこのコンテストに毎回参加しています。それは、データサイエンティストに求められるビジネス力、データ分析力、データエンジニアリング力のすべてが腕試しできるからです。今回もMI領域におけるお客様の課題をどう解決すべきか改めて考える機会になりました。他の参加者の方のアイデアが勉強になることも魅力ですので、ぜひ参加していただきたいと思います。

アイデア企画コンテスト

AIやデータ分析を活用した新サービスの価値を競う「アイデア企画コンテスト部門」。今年度は、連携大学・連携企業と共同開催という形式で、「わんちゃん、ねこちゃん」を幸せにするAIやデータ分析を活用した新サービスの企画と、その価値を競った。最優秀賞に選ばれた岩嶋 有里さん(NECソリューションイノベータ)の「高齢者のための癒し生きがいサービス」は、その優れた着眼点が高く評価された。

―― 普段の業務内容についてと、コンテストに参加された動機を教えてください。

岩嶋さん:新規事業開拓を10年ほど担当しております。4~5年前から温めていたアイデアが今回の企画コンテストで活かせると思いました。

―― 受賞されたアイデアの概要と、どこから着想されたのかを教えてください。

岩嶋さん:新規事業を考えるときは、誰かの役に立つこと、社会貢献に繋がることを念頭に置いています。特に高齢者のお役に立てる事業はずっと考えてきました。

今回のアイデアは、高齢者の方がねこを飼育する際、ねこ用トイレに設置したカメラから画像データをAI解析し、ねこちゃんがいつもの状態と違うという異変を察知したときに見守り会社に連絡がいくというものです。ねこの見守りをしつつ、健康分析を通じて、ねこちゃんと高齢者の関係や活動を推定、同時に高齢者を間接的に見守るというアイデアです。見守りサービスの多くは、個人情報の問題や離れて暮らすご家族がいない場合はどうするのかという問題がありますが、ねこちゃんを通じて飼い主の高齢者も見守ることができたらと考えました。

また、商店とも連携し、ご自宅に餌や生活用品、重たい買い物を配達することでご様子を伺えますし、そこで会話が生まれることもメリットです。私自身が保護猫の里親になったり、近所で孤独死された方がいたりなど、多くのことがきっかけとなって今回のアイデアが生まれました。

―― コンテストに参加されていかがでしたか。

岩嶋さん:これまで温めてきたアイデアを具体的に検討する機会になりました。「waneco(ワネコ)」(NECの愛玩動物コミュニケーションプラットフォームサービス)との連動も可能性として感じましたし、今回のアイデアのビジネス実現に向けて自治体の方とも協力し、マーケティングから始めたいと考えています。もしご興味のある自治体の方がおられたら、ぜひご連絡いただきたいです。

―― 今後コンテストに参加される方へのメッセージをお願いします。

岩嶋さん:普段はAIに直接の関わりがなくても、アイデア企画コンテストは参加できます。AIは課題を解決するためのツールの一つであり、「誰にとって、どのように役に立つか」が大切です。いまある様々な分析ツールをどう活用すれば社会がよりよくなるのか、今後もコンテストを通じて皆さんと一緒に考えていけたらと思います。

データ活用コンテスト

データを活用したビジネスアイデアを競う「データ活用コンテスト部門」。今年度は、連携大学・連携企業と共同開催という形式で、ペットサロンデータを分析した結果から導き出した結果のビジネス価値を競った。最優秀賞に選ばれたのは、近藤 研二さん、中田 一人さん、岩井 良典さんのNECチームだ。

―― 普段の業務内容についてと、コンテストに参加された動機を教えてください。

中田さん:AIコミュニティ勉強会を主宰したり、社内のブログに記事を書いたりしています。NEC Analytics Challenge Cupでは何度かファイナリストに選んでいただいており、開催されれば挑戦しています。

近藤さん:普段はデータ分析基盤開発のプロジェクトマネジメントをしています。コンテストは中田さんの勉強会で学んだ知識を腕試しするいい機会になっており、毎回ファイナリストに選んでいただいています。私にとってライフワークのようなものになっています。

岩井さん:以前は官公庁に向けてAI提案をしており、現在もデータ分析の勉強を続けているので、その一環としてコンテストに参加しました。中田さん、近藤さんから刺激を受けたいというのも動機です。

―― 今回のアイデア、データ分析の内容はどのようなものでしょうか。

中田さん:役割分担としては、近藤さんがビジネス提案のストーリーを作成し、実際にペットを飼っている岩井さんには顧客目線で意見してもらいながら、私がエンジニアとしてデータ分析を行いました。

近藤さん:資料のペットサロン白書によると、サロンの経営課題はスタッフ育成と人時生産性にあると感じました。そこで、スタッフ育成機会の増加→技術向上→顧客増加・離反防止→収益向上というよいサイクルを生むために、スタッフ育成時間の創出と人時生産性のアップを検討することにデータ分析の観点を設定しました。

中田さん:データ分析は、「郵便番号を基に施術回数や平均単価等を地図上に可視化」「店舗グループごとの人時生産性と客単価の分析」「曜日別の需給バランスの可視化」を行いました。その結果分かったことは、地域ではなく店舗グループごとに収益の差異があること、曜日別の需給バランスに偏りがあることです。これに対して、顧客に対する人時生産性の高いメニューの推奨、価格の見直しや稼働時間の短縮、AIを活用したダイナミックプライシング(変動料金制)の導入などの施策を提案しました。

―― コンテストに参加されての感想や、今後の目標などお願いします。

中田さん:実在する業界のデータを扱うことは貴重な体験でしたし、お客様の顔を想定しながらデータ分析を行うことができて勉強になりました。NEC外の参加者からも多くの刺激を受けました。今後も幅広くコンテストに参加していただき、切磋琢磨していきたいです。

岩井さん:今回のペットサロンもそうですが、Twitterデータなど身近なものがいつもテーマになっているので、興味をもって取り組んでいます。今後も挑戦していきたいと思います。

近藤さん:アイデア企画コンテストは、データ分析を行わなくても参加できる間口の広さがあるので、そちらもぜひ続けてほしいです。私自身、これからも最優秀賞を目指して頑張ります。

―― 皆様、本日はありがとうございました。

(2021.12.9 オンラインにて取材)

関連記事:NEC Analytics Challenge Cup 2021 開催報告