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インタビュー実施日:2024.6.7/2024.6.20

サンフレッチェ広島様

サンフレッチェ広島メソッドの継承と進化

アカデミーから多くの名選手を輩出し、ホームグロウン選手数はJリーグクラブでは最多の15名(2024シーズン時点)のサンフレッチェ広島。
昨今のデジタル化の波に乗るため、昨年度からMethod BASEを導入しこれまで積み上げてきたサンフレッチェ広島メソッドの継承と進化に取り組んでいる。
今回、育成部部長の沢田 謙太郎 氏と各カテゴリー(ユース、ジュニアユース、ジュニア、レジーナ)を担当されている指導者の皆様にお話を伺った。

データを活用しながらサンフレッチェ広島メソッドのアップデートにつなげていく

サンフレッチェ広島
育成部部長
沢田 謙太郎 氏

Q. スポーツ育成支援プラットフォーム(以降:MethodBASEと記載)の導入きっかけを教えてください。

沢田さん:
 私が育成部長に就任した当時すでに、JリーグからJクラブのアカデミー組織が段階的にステップアップするために開設した新しい認定制度である「Jリーグアカデミークオリティースタンダード(通称:JAQS)」により、これまで以上にスタッフと選手の管理運営を推進していく必要性がありました。その管理ツールとしてアカデミーでは、MethodBASEとは違うツールを活用していましたが、指導者ごとに利用状況にばらつきがあり、指導者個人ごとにトレーニング計画や選手管理がされていました。そのようなタイミングで、NECからMethodBASEの提案があり、このツールを使うことでJAQSへの対応もできること、加えて各種データの蓄積とチーム内外での情報共有ができると感じたため、導入を決めました。
 また、スポーツ業界全体を見ても、データの重要性は段々と謳われてきており、時代に追いつくためにデジタルツールは必要不可欠でした。しかし、データがあっても、それを活用できないと意味がありません。例えば、フィジカルデータやトレーニングデータを取得していても、それを指導者や選手に還元できなければデータを活用したことになりません。そのため、過去のサンフレッチェ広島のスタッフの方々が積み上げきたものをベースにしながら、データをうまく融合させることで、サンフレッチェ広島メソッドをアップデートしていける。それを実現できるのがMethodBASEです。

MethodBASEを導入し、指導者間の距離を縮めることができるように

ユースコーチ:池田 康平 氏
JYU15コーチ:関原 凌河 氏
JYU13コーチ:柴﨑 晃誠 氏
Jr.U12監督:平繁 龍一 氏
Jr.コーチ:東野 広太郎 氏
レジーナJY監督:山本 侑生 氏
サンフレッチェ広島工大高JY監督:
山下 健太 氏

ー ここからは現場で活躍されている指導者の皆様にも話を伺っていきます
Q. 実際にMethodBASEを導入してみて変化はありますか?
池田さん:
 ユースは、ジュニアユースやレジーナの拠点とは別の場所で活動しているため、MethodBASEで活動内容が共有されている点は非常に価値と感じています。さらに、トレーニングを計画する際に他の指導者が作成したトレーニングを参考にできる点も指導者のスキルアップに繋がると思います。また、他の指導者が選手に感じたコメントを残すため、あの時こう考えていたんだとか口頭ではわからない部分も把握できます。

山本さん:

 サンフレッチェ広島の指導者はMethodBASEをより細かく予定や振り返りを入力する印象があり、システムとしての価値を発揮していると感じます。また、各カテゴリーごとに試合結果や動画を格納しているので、すぐに他カテゴリーの試合内容が共有できる点もメリットと感じています。

柴﨑さん:
 今年から選手を引退し指導者になり、指導者としては右も左もわからない中、MethodBASEを通じて他の指導者の練習メニューを参考にできるのは価値と感じています。また、指導者になりたてで練習メニューの構築はもちろん、PCスキルでさえハードルがありましたが、こういったシステム上で簡単に見れたり、身近に聞ける人が居るのは安心感があります。

東野さん:
 柴﨑さんと同じく、今年から指導者をしていますが、指導の際のポイントや選手に意識させることもわからないため、練習以外の時間で参考にできる情報があるのは非常に有難いです。また、担当しているジュニアU10は、週に2回の練習回数で他カテゴリーと比較すると少なく、他の指導者の指導を見れる機会も少ないため、システム上で他カテゴリーの状況を参考にするのは価値を感じています。

平繁さん:
 ジュニアU12は、今年からMethodBASEを使い始めています。ジュニアU12は、ジュニアユースに繋げることが一番の目的です。そのため、ジュニアユースU13が現在どういう練習やテーマでやっているかを即時に把握できることにより、練習計画策定の参考にしています。また、練習を計画して、選手に関する情報を入力することもあるので、期間が経ったときにデータとして振り返れるようになると非常に有益であると感じます。

関原さん:
 沢田さんがジュニアユースの練習を担当するときもあり、練習中に考えたことや感じたことをMethodBASEに入力してくれているので、共有やコミュニケーションの観点でかなり助かってます。自分とは違う考え方や思考がわかるので、選手の働きかけの際に参考にできる点も価値に感じています。

山下さん:
 これまでの指導者の方々の話を聞いていて、MethodBASEは指導者同士のお互いの距離を埋めるツールという認識です。また、データが蓄積されてきているので活用できるとより価値が増していく期待できます。

Q. 育成部部長としてMethodBASE導入前後の変化やどのような価値を感じていますか?

沢田さん:
 就任前もカテゴリー内の共有やADやカテゴリーの指導者同士の共有は、ホワイトボードやLINEを活用して行っていましたが、アカデミー全体での共有は行っていませんでした。そのため、MethodBASE導入後にアカデミー全体での導入が進み、ユースや他カテゴリーの拠点が違う中でのスムーズな情報共有や選手に対するフィードバック機能等を活用し、各指導者がメリットを感じてもらっていると思います。また、MethodBASEを活用することで、指導者の指導案や指導計画の作成が習慣化され、さらにデータとして継承できる点もメリットを感じています。昨今働き方改革も叫ばれている中、すべてのトレーニングや試合をみて勉強することは難しいため、サポート的な位置づけでMethodBASEを活用しながら、リアルでの活動を最大化していきたいと考えています。
 一方、デジタルツールが発展することで、デジタル上の知識やコンテンツだけで満足してしまうことも考えられます。それでは指導者の本質的なスキルが向上しない恐れもあり、個人的には現場に足を運び、指導者や選手自身が肌で感じることも忘れず取り組んでいきます。
 また、MethodBASEの価値として、提携クラブや提携外クラブへの展開による指導者養成等への貢献も非常に魅力的です。現在、提携クラブであるサンフレッチェくにびきFCやサンフレッチェびんごにもMethodBASEを活用してもらい、練習メニューや試合結果の共有を実施し、サンフレッチェFamilyとしての連携を強化しています。将来的には、提携外クラブへの展開を目指すことで、サンフレッチェ広島の育成メソッドを起点とした指導者養成を実現し、地域へ貢献していきたいと考えています。

最終的な目標は、広島から日本代表やプロサッカー選手を多く輩出すること

Q. MethodBASEを活用した各カテゴリーごとの展望をお聞かせください。
池田さん:
 最終的にはジュニアからユース、トップ昇格した選手が出た時にIDP(Individual Development Plan:個別育成計画)やトレーニング記録が蓄積され、可視化できるとクラブの財産になります。さらに、面談結果や怪我時の取り組みなどアカデミーの生活までわかれば、データ蓄積の価値が増すと考えます。


山本さん:
 レジーナとしては、現状トレーニングや試合の情報共有のみであるため、今後は選手情報の蓄積と活用をしていきたいです。また、 レジーナはユースの所属選手が少ないため、ジュニアユースの選手が上のカテゴリーで活動するなどカテゴリーを跨いだ活動が男子より多いため、個人にフォーカスしたデータ蓄積を進めていきたいです。

平繁さん:
 ジュニアは、レジーナと同様にトレーニングや試合の情報共有のみの活用であるため、今後は選手個人のデータ管理まで広げていきたいと考えています。

関原さん:
 これまでIDPの蓄積に取り組んできたので、今後はIDPのグレードアップはやりたいところです。また、選手が実施しているサッカーノートをMethodBASE上に置き換えて、練習の不明点や試合の振り返り、指導者から選手への試合映像の共有などのコミュニケーションの活性化に繋げていきたいです。そうすることで、選手個人のデータがより蓄積され、さらなる価値に繋がるのではないかと思います。


山下さん:
 これまでデータを蓄積してきたので、今後はカテゴリー全体の選手個人データの蓄積とデータ可視化などの活用を進めていきたいです。

Q. MethodBASEを活用したアカデミーまたは組織としての展望をお聞かせください
沢田さん:
 サンフレッチェ広島のアカデミーの目標として、トップチームで活躍する選手を数多く輩出すること、出来れば日本代表で活躍できるような選手、出来れば地元広島から育った選手が活躍してほしいです。そのためには、広島県内さらには中国地域全体でサッカーの競技力を上げる必要があります。これまで、サンフレッチェ広島として、指導者研修や講習会を開催していますが、今後もう一歩活動のレベルを上げていく必要があると感じています。MethodBASEは、チーム内だけでなく、チーム外や地域のコミュニケーションを活性化できるツールと捉えており、今後より活用していきたいと考えています。
 また、海外ではジュニアからトップチームまでが1つの環境に集まるスタンダードな地域が多いのが実情ですが、日本の多くはカテゴリーごとに拠点が異なり、分散している状況です。ただ、分散しているからこそ広がりが生まれるメリットもあり、分散の際には情報共有は必要不可欠となり、MethodBASEのようなツールの価値が増すと感じています。将来的には、ジュニアからトップチームまでが1つの環境に集まれる拠点を作りたいという構想もありますが、拠点の集中型と分散型を融合させながら、サンフレッチェ広島をよりよくしていきたいと考えています。

【お問い合わせ先】
NEC スポーツ育成支援プラットフォーム 事務局
nec-methodpf@eigu.jp.nec.com