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セキュリティでも注目される「データドリブン」
社員の意識や実践に
どのような変化をもたらすか

NEC Cyber Day’23 夏 Review

サイバー攻撃への対応は、あらゆる企業に共通する経営課題である。損害を防ぐため、そして、悪質な犯罪行為を許さないためにも、社会全体で知見を共有し、適切に対処したい。自身の経験や蓄積した知見を余すことなく顧客や社会に還元し、それを実践しているのがNECである。同社が開催したオンラインイベント「NEC Cyber Day’23 夏」では、これまで明かしていなかった実践例を紹介。NECが実践しているデータドリブンなサイバーセキュリティ経営とは、果たしてどのようなアプローチだろうか。

あらゆる企業が被害に遭うリスクに直面している

NEC
執行役 Corporate EVP
CIO(Chief Information Officer)
CISO(Chief Information Security Officer)
小玉 浩氏

サイバー攻撃の数は年々増加し、被害に遭う企業の割合や被害総額も増加の一途をたどっている。これまでサイバー攻撃の悪質化を示すために「数分ごとに新しいマルウエアが誕生している」と表現されることがあったが、生成AIの登場などによって「分」は「秒」に変わるという指摘もある。もはや異次元のスピードである。

様々な調査もそのことを如実に示している。中には2021年の世界のサイバー攻撃の被害総額は、もはや日本のGDPを超えているという調査もある。「億」「兆」など、非現実的な数字を見て、サイバー攻撃を自分事には思えないという人もいるかもしれない。しかし、サイバー攻撃は、規模や業種に関係なく、あらゆる企業が被害に遭う可能性がある。例えば、近年、被害が拡大しているサプライチェーン攻撃では、防御が堅い大企業ではなく、侵入が容易と思われる比較的規模の小さな関連会社に侵入し、それを踏み台にして大企業に到達することも少なくない。また、かつては安全と思われていた工場などのOT分野でもリスクは顕在化している。

では、対策はどのように行うべきか。まず重要なのは、経営者をはじめとする経営層がサイバー攻撃のリスクを理解し、リーダーシップを取ることである。経済産業省が「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」を策定し、サイバーセキュリティ対策が社会からの要請であり、適切な投資や対策を実践することを求めた狙いもそこにある。

経営トップから新入社員まで全員が同じ情報を確認

NECも、このサイバーセキュリティ経営ガイドラインをセキュリティ対策のベースに据えているという。

「NECのサイバーセキュリティ対策の背骨であり、基本方針・規定・体制を定めている情報セキュリティガバナンスは、サイバーセキュリティ経営ガイドライン、経団連のサイバーセキュリティ経営宣言、そしてISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項を定めたJIS Q 27001(ISO/IEC 27001)をベースとしています。それに沿って、サイバーセキュリティフレームワークを定め、NEC自身の対策、グループ企業やパートナー企業などを含めたサプライチェーン全体の対策、そして、プロダクトやサービスの企画・設計段階からセキュリティ対策を組み込む『Security by Design』によるお客様向けの対策を、それぞれ実践しています」とNECでCIOとCISOを兼任する小玉 浩氏は言う(図1)。

図1 NECグループのセキュリティ全体像
国が示すガイドラインや国際規格などを踏まえて、網羅的かつ包括的な対策を行っている

最近の取り組みでは、以前はグループごとに整備していた基本方針をNECグループで統一したり、3段階で行っていた情報の秘密区分を5段階の規定に改訂したりしながら、継続的なセキュリティ強化を図っている。また体制面では、CISOをトップに置き、サイバーセキュリティだけでなく、リスク・コンプライアンス、経済安全保障など、各分野の専門部門が連携した管理体制を構築。管理を徹底するために各部門や海外の現地法人にも責任者を置いている。

このような一連のNECのサイバーセキュリティ対策の中で、ひときわ目を引くのが「データドリブン」なアプローチだ。

「NECのサイバーセキュリティフレームワークは、一人ひとりの高い意識と正しい行動によって全員でセキュリティ対策に取り組む『アウェアネス』、刻々と変化する攻撃情報を素早く入手し、早期の対処につなげる『インテリジェンス』、そして、万が一被害に遭った場合も早期に検知・対処・復旧を図る『レジリエンス』を3つの柱に据えています。データドリブンなセキュリティ対策で、これらを効果的に実践しています」と小玉氏は話す。

その象徴がサイバーセキュリティダッシュボードだ。画面例のようにサイバーセキュリティに関する情報をまとめたダッシュボードを開発し、経営トップから新入社員まで、広く公開しているのである。「サイバーセキュリティにおいて、状況を可視化し、例えばNECグループが受けている攻撃の数や種類を可視化します。『こんな文面で詐欺行為をしかけてきた』と不正メールの内容も知ることができます。また、発見されたリスクと対処すべきアクションも一覧で表示されます。ほかにもペンテストを通じた第三者機関による評価、競合他社との比較、ランサムウエアに感染するリスクなどが一目で分かるようになっています」と小玉氏は話す。

画面例 NECのサイバーセキュリティダッシュボード
グループの誰もが常にサイバーセキュリティの状況を可視化できる。

日々数千万に及ぶ攻撃を受け、それらをブロックしている──。本来、サイバー空間で行われているサイバー攻撃を目で見ることはできないが、それをダッシュボードを通じて可視化する。そうしてガラス張りになった情報は、社員の自律的なアクション、危機意識の醸成を促す。つまりNIST CSFの柱の1つであるアウェアネスにつながる。「一般社員がセキュリティ担当者の業務を理解し、より感謝するようにもなりました。そのことを通じてセキュリティ担当者のエンゲージメントも向上しています」(小玉氏)。

また、ダッシュボードを通じて全社員がフラットに同じ情報を参照することができるためスムーズなコミュニケーションが可能。このコミュニケーションが素早い情報入手と早期対処を目指す2つ目の柱であるインテリジェンス、そして、早期の検知・対処・復旧を図る3つ目の柱であるレジリエンスを支える。

このようなダッシュボードを実現できたのは、先ほど述べたようにNECがグループで情報セキュリティ基本方針を統一し、一貫した管理の基でITシステムの基盤・運用・体制を行っているからこそ。「国内外約12 万人の社員が同じインフラを利用しています。管理対象はハードウエア、ソフトウエア合わせて182 万資産となります」と小玉氏は述べる。

ほかにもNECは、クラウドサービス利用時の認証において、生体認証やAI がリスクありと判定した場合にだけ再認証を要求するリスクベース認証を駆使して、パスワードレスを実現し、セキュリティと利便性を両立している。

また、生成AIの活用で悪質化が進む攻撃に対応するために、NECもAIを積極的に活用。脅威検知、対策の自動化、対策立案などの実際の対策はもちろん、攻撃診断や調査、訓練・演習といったサイバーリスクアセスメントの領域でも有効活用している。「本年5月より、NECは生成AIを社内業務で利用しており、社員が安全・安心に使える体制と仕組みを2週間で構築しました。さらに世界トップクラスの日本語性能を有するLLM(大規模言語モデル)を開発し、生成AIビジネスを加速させるなどしています。セキュリティの分野でも生成AIの活用に取り組んでいます」と小玉氏は話す。

自身の経験を顧客のセキュリティリスクマネジメントに役立てる

NEC
セキュリティ事業統括部 統括部長
兼 NECセキュリティ 執行役員
後藤 淳氏,CISSP

NECの取り組みの中で、もう1つ注目しておきたいのが、自らをゼロ番目のクライアントとする「クライアントゼロ」の考え方を持ち、サイバーセキュリティ対策の中で試行錯誤することを通じて得た、活きた経験やノウハウなどを、顧客に還元しようとしている点だ。

「セキュリティ対応状況をスコア化し、トップダウンによる指示・改善 、ガバナンス強化を図る。全社的なセキュリティ対策の弱点を可視化し、投資と安全性のバランスを見極める。NECは、自身の実践を通じてサイバーセキュリティダッシュボード、ひいてはデータドリブンでのリスク対応の効果を体感しています。この経験とノウハウを生かして、お客様のセキュリティリスクマネジメントを支援するために『データドリブンサイバーセキュリティサービス』を提供しています」とNECの後藤 淳氏は話す(図2)。

図2 データドリブンサイバーセキュリティサービスの全体像
エンド・ツー・エンドでデータを起点にしたセキュリティリスクマネジメントの実現をサポートする

具体的には、顧客はセキュリティ関連のデータをNECに預ければ、ダッシュボードを通じてサイバー攻撃や対策の状況を容易に可視化し、サイバーセキュリティ経営に役立てられるようになる。日々の監視やインシデント対応をNECに任せることも可能だ。

さらにどのような攻撃を受けているか、どこが狙われることが多いか、どこに脆弱性が潜んでいるかなど、日々の運用監視・対処の中で蓄積した情報を基に、NECの専門家が改善策の提案や実際のシステム導入もサポート。「文字通りエンド・ツー・エンドでデータを起点にしたセキュリティリスクマネジメントの実現をお手伝いします」(後藤氏)。

デジタル技術が企業活動と切り離せなくなっている現在、サイバーセキュリティはIT分野の課題ではなく、重要な経営課題、ひいては社会全体の課題といえよう。NECは、適切にセキュリティ投資を行うことで改革に挑戦し、自身の実践で得られた知見や価値を顧客・社会へ還元するというサイクルを通じて、その課題の解決に貢献しようとしている。

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