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部活動の地域移行、NECがスポーツ人材やデジタル活用で貢献 指導者は先生だけじゃない

2024年の夏は、バレーボールや野球など人気競技の日本代表チームや日本選手が熱戦を繰り広げるだけでなく、競技人口の少ない競技でも日本勢が大活躍し、スポーツニュースも連日盛り上がりました。深夜のテレビ観戦で寝不足になった、という人も多いのではないでしょうか。一方で、スポーツのすそ野となる学校の部活動が今、大きな転換期に差し掛かっています。ここにある社会課題の解決に名乗りを上げたのがNECグループの取り組みです。部活動とNEC、結びつきがイメージしにくい二つの世界がどう交錯するのでしょうか。

少子化と教員の負担増…「地域移行」をスポーツ庁が提言

部活動は存続の危機ともいわれています。野球などチームに必要な人数が集まらないケースが増え、大会も減る一方。スポーツ全国中学校体育大会は2027年度から水泳やハンドボールなど9競技が行われないことが決まりました。理由は少子化に加え、部活動を支える教員の負担。教員の休日稼働や長時間労働に依存した運営は、成り立ちにくい時代となっています。

そこでスポーツ庁が提言したのが「部活動の地域移行」。まず休日の部活動を地域のスポーツクラブや団体に移行する取り組みです。教員の負担を減らすとともに、学校をまたいで生徒を集めるので団体競技もしやすくなります。学校の部活動とは違う競技もできるため、ケガのリスク低減や多様な動きの習得に効果的な「マルチスポーツ」の促進にもつながります。

スポーツ庁の後押しをうけて全国の自治体が部活動の地域移行の取り組みを始めたものの、部活動の受け皿を「地域でどうつくるか」についてはまだ模索段階です。こうした取り組みに、NECはスポーツ人材やITの活用で貢献しようとしています。

その一つが10月5日土曜日、NEC我孫子事業場ラグビーグラウンドで開催された「ブカツ未来アクションin我孫子」(主催:我孫子市教育委員会文化・スポーツ課、共催:NEC、明治アドエージェンシー、一般社団法人CORD PROJECT、ヤマダホールディングス、他)です。千葉県我孫子市の小中学生を対象に、部活動の地域移行やマルチスポーツ推進の一環として行われたもので、全5回の中の第1回。ラグビーや陸上のアスリートが指導者となる様々なトレーニングに30人近くが参加しました。

デジタル活用で指導者のノウハウ共有、指導者不足の解消に貢献

この取り組みのNECの貢献は二つあります。一つは指導者の派遣で、ラグビーチーム「NECグリーンロケッツ東葛」と女子バレーボールチーム「NECレッドロケッツ川崎」の人材が活躍します。我孫子のイベントではグリーンロケッツの選手に加え、ヤマダホールディングスから陸上競技の選手も参加。他の企業も参加する枠組みの中でNECが率先することで、引退アスリートも含めたスポーツ人材の活用を広げることも視野に入れています。

もう一つがNECの得意とするデジタルの活用です。指導者向けにNECが提供している、トレーニング動画や指導カリキュラムを体系化し共有するスポーツ育成支援プラットフォーム「Method BASE」があり、既にサッカーやバスケットボールクラブチームなどが使っています。指導者がこれまで属人的に使いこなしていた知見やノウハウを共有することで、より多くの人が使うことができます。NECで新規事業として地域課題の解決に取り組む先進DXサービス統括部では、このMethod BASEの機能に着目しました。このサービスを部活動でも活用すれば、指導者不足の解消や教員の負担軽減に役立てることができる、という構想です。まずはトレーニング方法の共有などに既存のシステムを利用し、今後は部活動に役立つ新機能やコンテンツの開発を進める考えです。

NEC 先進DXサービス統括部 小久保 貴啓
「Method BASE」(画面イメージ)

「自治体のヒアリングで、部活動の地域移行でカギとなる指導者の担い手が集まりにくいという課題が分かりました」と話すのは、このサービスを担当するNEC同統括部の小久保貴啓です。競技経験はあっても指導者経験がなく地域指導者に手を挙げにくいという人も多く、Method BASEでプロの指導のノウハウを共有することで、指導者が集まりやすい環境を整えることを目指しています。「将来的にはAIを活用して、個々の子どもたちのレベルに合ったコンテンツを推薦する機能も開発したい」と展望を話します。

地域からも大きな期待 デジタルとリアルのハイブリッドで貢献

地域で課題を抱える当事者たちに歓迎されています。今回イベントを行った我孫子市でも少子化は進み、部活動の種類が減っている学校もあります。

我孫子市教育委員会 文化・スポーツ課長
辻 史郎さん

我孫子のイベントを一緒に企画した我孫子市教育委員会の文化・スポーツ課長の辻史郎さんは「『入りたかった部活動が学校にないから仕方なく別の部活動に入った』という生徒もおり、子どもたちがやりたい競技に取り組める環境をつくってあげたい」と、子どもたちの機会を広げる取り組みに価値を見出しています。Method BASEの活用による指導内容の共有にも期待を寄せ、「今後はNECとともにデジタルコンテンツ一緒に作っていきたいですね」と語ります。

NECがもつスポーツ人材が「リアル」に現場に行くことと、トレーニング用のコンテンツやカリキュラムを体系化した「デジタル」のアプローチ。二つの強みをハイブリッドに活かすことで、子どもたちに機会を与え、社会の課題解決に貢献する。NECがPurpose(存在意義)に掲げる「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会」の実現に向けた取り組みは、一見NECの事業とは距離がありそうな「部活動」という側面からも、歩みを進めています。

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