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AIとバイオの融合で感染症を防ぐ NECグループの新たな誓い

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創薬には少なくとも10年近くの歳月がかかり、成功する可能性は限りなく低い――。こんな常識は、人工知能(AI)の力を使った創薬によって過去のものになるかもしれません。製薬会社やバイオベンチャーを中心に広がりつつある、短期間で安全かつ効果的な医薬品を生み出すためのチャレンジ。専門性と難易度の極めて高いこの領域で、異質な存在感を示すのがNECグループです。デジタルテクノロジーとバイオテクノロジーの両輪を操るグループ力でワクチンを生み出し、感染症の克服という人類にとって重大な課題の解決を目指します。

2023年のノーベル生理学・医学賞の対象となったメッセンジャーRNA(mRNA)。タンパク質の設計図となる遺伝情報の貯蔵庫であり、この活用によって製薬会社は短期間でのCOVID-19ワクチン開発に成功しました。従来の創薬では手段の限られていた「設計」というアプローチは、測り知れない可能性を秘めていることがわかります。

安全で効果的なワクチン候補を設計

NECグループはAI技術を駆使して、安全で効果的に病気を予防できるワクチン設計に取り組んでいます。通信やデジタル分野を主な生業にしてきましたが、決して向こう見ずな挑戦ではありません。その大きな理由は2019年にグループ入りしたNEC オンコイミュニティ(NEC OncoImmunity=NOI、本社:ノルウェー、オスロ)にあります。

NOIはNECグループの米欧印の研究所と並び、AIと生物学の双方について知見をもつ、いわばデジタルとライフサイエンスの架け橋です。特徴的なのが、がんによる変異細胞を予測する独自の「ネオアンチゲン予測技術」。これは、がんワクチンの実用化に向けた臨床試験(治験)の初期段階、そして感染症に対する広範なワクチンについて前臨床段階に到達するなど、着実に成果を積み上げています。
コンピュータ―・サイエンスと計算生物学をキャリアの背景にもつNOIのマリウス・ゲオルゲ主席バイオインフォマティシャン(生物情報学者)は「最先端技術を駆使し、異なる領域の専門家同士が力を合わせる。これによって病気と戦うことが私の目標であり原動力だ」と語ります。

NOIはAIと生物学双方の知見を活かしてワクチン設計に取り組む

NECグループはCOVID-19の流行を機に、がんワクチンの設計に使う技術を感染症ワクチンに転用することを決断します。NOIのサベリオ・ニッコリーニ最高執行責任者(COO)は「免疫細胞を活性化させて異常な細胞を攻撃するという基本原理は、がん細胞もウイルスに感染した細胞にも通じる」と語ります。そのうえで「がん領域ではNECとNOIの技術を組み合わせて個別化がん免疫療法の開発にも取り組み、一方で感染症領域では技術をさらに強化するための検証が進行中だ」と、各々の領域での進歩を語ります。

ワクチン設計の仕組みはこうです。まずウイルスのたんぱく質の情報をもとに免疫が攻撃するための「目印」をAIに推定させます。そしてAIは目印の中でも免疫を強く活性するものを見つけ、さらにその中からより多くの人口をカバーできる目印の組み合わせを特定します。ここで重要なのは人体に悪影響を及ぼす部分は取り除くこと。こうした設計のもとで作ったワクチンは複数のウイルスに対して防御機能を持つことや安全性が期待されます。

NECグループは製薬企業や研究機関と密に連携することでAI由来のワクチンを社会に届けることを目指しています。スーパーコンピュータに代表される最先端のコンピューティングリソースと先進的なAIの開発・運用の豊富な経験を活かし、医療の進歩に貢献する。1社では難しくても、グループで力を合わせれば、世界が直面する課題に取り組めます。

グループ内外との連携を拡大

世界各国に拠点をもつグローバル企業であるNECグループでは、ワクチンの研究開発においても国を超えた協力体制を敷いています。独ハイデルベルクや米プリンストンにあるNECの研究所、日本のNEC本社などの間でのコミュニケーションは様々な知見の共有や学習に役立ちます。外部の研究機関や製薬企業との連携においても、NECがもつグローバルなネットワークやリソースは有効活用できるはずです。

NOIにとっては、グループ入りしたばかりのころはグローバル企業だからこその戸惑いもあったといいます。ゲオルゲは「適切に仕事を進めるうえでアプローチすべき人を見極めることが難しかった」と当時を振り返ります。しかしながら、互いを知り、コミュニケーションを重ねるうちに「ワンチームの力を実感することが何度も生まれていった」といいます。例えばある共同研究でのこと。NEC本社のメンバーが関係者間との連絡や調整を担い、NOIは技術開発に専念。こうした役割分担が、相互理解の促進と効率的な業務運営をもたらし、目標を上回る成果創出につながりました。

また2022年4月、NECグループは新型コロナウイルスとその近縁種ウイルスを含むベータコロナウイルス属全般に有効な次世代ワクチンの開発を始めました。パートナーは感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)。彼らは伝染病やその大流行(パンデミック)の脅威に対してワクチン開発を加速させるための、国際的な枠組みです。その選考プロセスは非常に厳格であり、徹底的な技術検証と将来性の審査を経て初めてパートナーとして認められます。NECグループのようなIT企業に対してCEPIが研究資金を提供することは稀であり、彼らからの支援はNECグループがワクチン開発の発展に大きく貢献できるとの期待の表れと言えるでしょう。

COVID-19は人類を脅かす最後のコロナウイルスではないはずです。CEPIの『広範防御コロナウイルスワクチン(BPCV)プログラム』のリーダーであるナディア・コーエン氏は「NOIはAIを携えたバイオ技術での豊富な経験を持ち、複数のコロナウイルスを標的とするワクチンの抗原をより的確かつ迅速に同定・選択できる。ウイルスの脅威への備えに役立つだろう」と話します。

そして2023年12月、新たなプロジェクトが始まりました。最も困難な試みの一つとされる、インフルエンザに対する「ユニバーサルワクチン」の研究開発です。これは複数のウイルスに対して有効であり、幅広い人口をカバーできるワクチンのこと。現在のアプローチのほとんどは、個々のウイルスに対して有効な複数のワクチンを混ぜるものです。NECのAI創薬統括部の小野口和英は「理論的には100種類のウイルスに対しても1つのワクチンで対応できる可能性を秘めている。このプロジェクトを通じて、NECがワクチン開発のゲームチェンジャーであると証明したい」と話します。

NECグループはPurpose(存在意義)に「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指す」と掲げています。より優れたワクチンの設計ができれば、より多くのウイルスをターゲットにできます。ひとつのワクチンが、複数の病から人々の健康を守り安心を生む。そうした姿を思い浮かべると、社会に届けられる価値の大きさは容易に想像できます。

ワンチームで社会に貢献する

AIの力をもってしても、決して成功が約束されているわけではありません。ですが、最先端の知見と、それをもつ人々が全力を尽くすことにより、成功の可能性は高まるはずです。ゲオルゲは「自分の研究や知識が社会のために役立つと実感できることが、一番のやりがいだ」と話します。
世界中の人々の健康に貢献したいとの強い信念は、プロジェクトにかかわる全員の心に根付いています。研究機関や製薬企業といったパートナーも含め、それぞれの専門性を結集して共創を推進することが、より明るい未来社会を築くための力強い一歩になるのです。

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