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サプライチェーン上の人権・環境のリスクに先手を打つ サステナビリティを推進するNECの「旅」とは
2025年3月13日

人権や環境に関する企業の取り組みへの関心は年々高まっており、そのリスクは企業経営に大きな影響を及ぼすこともあります。今や、自社のみならずサプライチェーン全体でその意識が必要とされる時代。製品やサービスが生産者から消費者に届くまで人権や環境に配慮した企業活動が求められています。欧州などで法制化が進められる中、日本でも社会からの要請は厳しくなっており、日頃からリスクを特定して改善する取り組みは不可欠となっています。世界中に調達取引先を持つNECグループでも、たゆまぬ努力を重ねています。終わりなく続く「旅」にも例えられるこの活動。今回はこの旅路を歩む担当者たちの取り組みを紹介します。
調達取引先は「パートナー」 連携して高め合う
どのようにサプライチェーンのサステナビリティ推進に取り組むか。やり方は会社によってさまざまです。NECには中小企業を含め1万社を超える調達取引先があり、企業規模や事業内容も多岐にわたります。
事業部門と連携しながら調達取引先と日常的に価格や品質・納期などの交渉を行っているバイヤー達の隣で、一歩引いた立場から事業全体をみて調達取引先の人権・環境リスクを把握し、打てる手は先に打つ。こうした役割を担うのがNECのサプライチェーンサステナビリティ推進グループです。推進の第一歩は、調達取引先向けに定めた基本方針やガイドラインなどを理解してもらうこと。

グループをリードする秋山平は「調達取引先の人権や環境への取り組みを支援し、協働・共創しながらお互いを高め合うことがこの活動のポイント」と語ります。
世の中全体で取り組みへの要請が強まる中、NECの強みとは何か。それは「文書で一方的に依頼するのではなく、双方向でわからないところはフォローする体制」と同グループの橋爪蓮はいいます。実際に現地に出向いたり、ワークショップなど対面での質疑応答の機会を増やしたりと、積極的に巻き込む工夫をしています。
その工夫を具体的にみてみます。
対面でフォロー・現場に足を運ぶ…調達取引先と徹底的に向き合う
工夫のひとつが対面のセミナーです。2024年度は、CO2排出量削減をテーマにしたセミナーを対面で4回、細やかに実施しています。疑問点をその場で解消し、双方向の密なコミュニケーションによってCO2削減活動の理解と促進をはかっています。
1月に開催した「CO2排出量算定ワークショップ」では、社内で専門的な知見を有するメンバーにもサポートしてもらい、「わからないことは何でも聞いてください」と参加していただいた調達取引先の皆さんに声を掛けます。参加者には手を動かしてCO2排出量を算定してもらいつつ、挙がった質問にはNECメンバーが丁寧に回答します。


これまで開催したセミナーの参加者からは「CO2排出量削減に向けて何をしたらいいのかわからなかったので勉強になった」と好評を得ています。
現場に直接足を運ぶ監査にも注力しています。人権や安全衛生などの観点で、サプライチェーンを構成するひとりひとりの従業員が安心して働けるように細やかな点検を行います。
2024年12月に橋爪らが出向いたのは静岡県菊川市の和興産業株式会社。NECグループへ納入する部品を作っています。今回行われた人権・労働安全に関する監査では、強制労働・児童労働・差別・ハラスメントの有無や労働時間、賃金等の取り扱い、生産工場での安全性、従業員寮の居住環境などを網羅的に確認しています。


こうした取り組みを受け入れることは、調達取引先にとっても意義があります。信頼が高まり、国内外での競争力強化につながるためです。今回の監査を受け入れた責任者は「『日本人の当たり前』でやってきたことが多かった。グローバルで求められる基準にも対応できるよう会社の方針を明文化していく」と語っています。
変化に合わせてNECグループ内も啓発 自らをアップデート
社内の調達担当者への情報提供も欠かせません。
今後の取り組みにおいて重要な点は、「グローバルの動向や要求レベルが刻々と変化・進展する中で、自らの取り組みをアップデートしていけるかどうか」 。こう力説したのは、社内セミナーに講師として招聘したビジネスと人権を専門とする外部有識者です。NECグループの調達業務に関わるリーダー層全員を参加対象とし、新しい法規制やリスクなどビジネスと人権に関する最新の情報を学び、意見交換しました。参加したCSCO(チーフサプライチェーンオフィサー)の田熊範孝は、目標をこう語ります。「効率的かつレベルは高く対応していきたい。日本一の会社と言われるように」。


NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現をPurposeに掲げています。こうした社会価値を実現するひとつひとつの製品やサービスはNEC1社だけでは成立せず、調達取引先との協働が必須です。
「サプライチェーン上のサステナビリティ活動は『終わりなき旅(ジャーニー)』。社会や時代の要請に応じて、様々な課題へ対応していくことが求められる。常に時代を先読みしながら、NECがこの領域をリードし社会価値を創造していきたい」とNECの秋山は語ります。
これまでの旅路を歩んできた成果としての知見もたまりつつあります。自分たちがゼロ番目のクライアントとなり社会の変革を目指す「クライアントゼロ」の考え方に基づいてノウハウを社外に伝えることも視野に入れています。NECを起点として社会全体を巻き込み、持続可能な社会の実現をめざしていきます。