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国内最大規模AIスパコン「数か月かかるところを1日で」 社会価値の創造を加速

NEC執行役員 山田昭雄
NECシニアAIプラットフォームアーキテクト 北野貴稔

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一人ひとりの暮らしを良くするために発展するAI。NECは国内企業では最大規模のAI研究用スーパーコンピュータを構築します。これにより、AIの学習時間を4600分の1に短縮できます。なぜ今、大規模なAIスパコンが必要なのか。高速化で何ができるのか。NECが届ける可能性について、NECの研究開発全体を統括する執行役員の山田昭雄とAIスパコン開発責任者の北野貴稔に聞きました。

NEC自ら構築の意味 データを預かる責任と信頼

──国内企業では最大規模の計算能力を持つAIスパコンを構築し、2023年3月フル稼働の予定です。構築の狙いは。

山田昭雄執行役員:デジタルツインという言葉が近年よく聞かれます。実世界で起きる様々な事象をモデル化し、未来を予測しようという試みです。最近では、さらに踏み込んで、未来予測に基づいて最適なアクション・解決策を提案してほしいというニーズも顕在化してきました。人間にとっては意識せずにやっている意思決定のプロセスそのものですが、その裏には生まれて数十年かけて学んだ知識があります。

AIの活用には、人間と同様に大量の知識をAIに学ばせなくてはなりません。AI普及の難しさは実は活用ではなく、この学習プロセスにあり、莫大な計算能力が必要です。AIスパコンは学習プロセスを効率化する超高速計算システムで、AI構築の時間を劇的に短縮できます。

ここ数年でAIの活用は、環境、都市、決済サービスなど、拡大しています。一つのAIでさえ構築に長期間の学習、すなわち大量の計算が必要ですが、AIニーズが急拡大している今、研究・開発を加速するには、研究者の頭脳だけに頼ったアプローチには限界があります。今回のAIスパコン構築は、高度な社会課題を迅速に解決するために必然といえるものです。

──今回のスケールを実現するために、数十億円を投資しました。NECの通常のAI研究用の投資と比べると桁違いの規模です。自社で開発環境を持つことの意味は何ですか。

外部設備の活用ではなく、自社整備に踏み切った最大の理由は、お客様にデータを預けていただくための「信頼」の担保です。

AIの学習に必要なデータは、企業の秘密情報などの極めて繊細な扱いが必要なものが大半です。自前でAIスパコンを構築することで、機微な情報を含むデータを、NECが自社内の強固なセキュリティ環境で扱えるようになります。お客様のデータを、NEC自身が責任をもって徹底的に守り、開発を行うというデータの安全性に対する信頼こそが、これからAIの共創を拡大していくために大切なのです。

──NECのAI研究の体制は世界有数の規模になりました。

NECは国内外すべての研究所でAIを開発しており、AIの研究者は数百人にのぼります。AIの機械学習における難関学会の論文採択ランキングは企業では世界8位。世界トップレベルのNECの研究者が能力をフルに活かすため、数百人の研究者が常時使用しても耐えうる規模のAIスパコンを追求した結果、今回の構築につながったとも言えます。「国内企業で最大規模」は目的ではなく、あくまで結果です。

NEC執行役員 山田 昭雄

お客様・パートナー×研究者×AIスパコン=社会価値創造

──AI研究・開発をNECが加速することで、どんな社会価値を提供できますか。

山田執行役員:重要な取り組みの例として、カーボンニュートラルの実現のためのグリーントランスフォーメーション(GX)があります。

例えばタクシー運営を考えましょう。効率的な運営には、交通状況や街の混雑、天候など過去・現在のデータを踏まえてAIが最適な配車計画をする必要があります。しかし、どこにお客様がいるかの提案といった最適化だけでは、GXとはなりません。EVなら充電ポイント・タイミングも加味し、社会全体で効率と環境負荷の両方を踏まえた提案が求められます。

交通だけでも、電車・バス・自家用車などを含む都市全体の交通管制において、既存の制御を超えた規模・スピードによる複雑系システムの最適化が重要になります。こうした人知を超えたニーズに応えるAIの実現で、私たちの社会を持続可能なものにすること。今回のAIスパコンは、AI構築の要望に、これまで以上に幅広く応える体制を整えることができます。

──お客様やパートナーとの共創がカギです。

AIスパコンによるスピードアップで、数か月かかっていたAIによる試行錯誤が、1日もあればできるようになります。年間で数件しか受けられなかったお客様やパートナーからの相談に、けた違いに対応できます。社会実装の実例もどんどん増やせます。

AIスパコンとNECが持つ優れたAI研究者、そしてお客様やパートナーとの連携、この三つが合わさることで、社会価値を創り出すことができる。それこそがNECの価値であり、NECがAIの世界でトップランナーになれると確信しています。

社会価値創造のスピード化「計算能力はAI時代の競争力の源泉」

──AIスパコンの性能は、具体的にどの程度上がるのでしょうか。

北野貴稔(開発責任者): 今回のAIスパコンは928基のNVIDIAのハイエンドGPU(画像処理半導体)を搭載しています。これによって、従来のハイエンドGPU1基でAIの学習に4600時間かかっていたものが、このAIスパコンを使えば1時間でできるようになります。

AIの開発ではアルゴリズムやデータなどを変えながら、数千回もの試行錯誤を繰り返す必要があり、この試行錯誤のサイクルをいかに短縮するかが、AIの競争力に直結します。また、最近の大規模なAIでは学習にGPU1基で355年かかるものも登場しています。NECのAIスパコンを使えば、大規模AIも学習が出来、研究者は制約なく先端のAI研究をすることができます。デジタル革命の中心はAIであり、計算能力はAI時代の競争力の源泉となります。

国内企業で最大規模の計算能力を持つことは、NECが先端のAIを創り続けられるということ。お客様やパートナーにとっても、研究者にとっても非常に意味のあることだと思っています。

──性能競争だけではないところがポイントですね。

AIスパコンは、スペックがよければ良い計算機となるわけではありません。良い課題があり、優れた研究者が使ってくれて初めて、良い計算機となります。先進課題を保有するお客様と優秀な研究者の方がいてこそAIスパコンは活きます。

イノベーションはNECだけで生み出すことはできません。国内企業で最高の環境に、お客様と優れた研究者が集い、社会価値を共創する。このようなAIのセンター・オブ・エクセレンスになることでイノベーションを産みだし、社会価値の創造を加速したいと思っています。

NECシニアAIプラットフォームアーキテクト 北野 貴稔

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