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知って、体験して、広げる パラスポーツが広げる人と人のつながり

障がいのあるなしに関係なく、誰でもパラスポーツを楽しむことができる「第2回 神奈川県民パラスポーツ大会 in 横浜 リターンズ」(特別協力:NEC)が11月19日、横浜市役所アトリウムで開催された。会場には、パラリンピックの正式種目である「ボッチャ」のコートが設けられ、総勢18チーム・68人の選手たちが熱戦を繰り広げた。

ボッチャは、脳性まひなど重度の障がいのある人のために考案されたスポーツで、赤と青のボールを6球ずつ投げ合い、的となる白いボールにどれだけ近づけられるかを競う。ボールを投げる技術やゲーム戦略が勝敗を分けるが、簡単なルールを覚えてボールを投げる練習を少しすれば、小学生から高齢者まで一緒に楽しめるのが魅力だ。初心者でも親しみやすいパラスポーツとして、全国各地で大会を開催する動きが広がっている。

この日も、子供たちが大人のチームに勝利する場面が何度もあった。スーパーショットが出るたびに大きな歓声が上がり、敵味方に関係なく拍手が巻き起こった。

4位に入った市立茅ヶ崎台小学校の6年生チーム「HRDM(ハードゥン)」は、学校の休み時間にパソコンルームに簡易コートを設置して練習を重ね、この日の大会に挑んだ。選手として出場した石津さんは「最初は緊張したけど、とても楽しかった。次の大会もまた参加したいです」と話した。

優勝したのは、市立本牧南小学校の教職員による「Team MINAMI」。当初は優勝を目指して出場したわけではなかったが、予選第1試合が延長戦となり、野球経験者の奥野さんが一球勝負のサドンデスに勝利。チームにはバスケットボール経験者など球技を得意とする選手もいて「これで勢いがついていけると思った」(奥野さん)。

本牧南小では、ボッチャを通じてパラスポーツを広める取り組みも進めている。同校の教員で、選手として出場した大谷さんは「学校でボッチャの体験をしたとき、スポーツが苦手な子が、競技を楽しんでいたのに感動しました」とボッチャの魅力を語った。

当日は、本大会に特別協力を行っているNECのボッチャ部が運営スタッフや審判として参加した。NECボッチャ部は、今年4月に開催されたボッチャの東京カップで、日本代表の「火ノ玉ジャパン」を撃破して優勝した実力を持つ。健常者を含む一般のチームが、パラ日本代表チームが参加した大会で優勝したのは初めてだ。

NECボッチャ部が設立されたのは2017年。2016年のリオ・パラリンピックで日本代表が銀メダルを獲得したことで競技の面白さが話題になり、NEC社内で部活動としての活動が始まった。現在の部員は約30人。男女比は半々で、クラブとしては週1回、4時間の練習をする。そのほか、競技の魅力を伝える普及活動にも取り組んでいる。これまでに普及活動に行った学校は15校。この日も、NECボッチャ部の「教え子」の小学生たちがチームをつくって参加していた。荻野部長は、こう話す。

「ボッチャは、初めて対戦した人でもすぐに仲良くなれます。大会や普及活動を通じて、ふだんお会いすることのない方たちと関われるのがとても楽しいんです」

東京カップを制覇したことで、NECボッチャ部は名実ともに国内トップクラスのチームとして認められた。今では他県で開催される大会に招待されて遠征に出かけるなど、活動の幅をさらに広げている。荻野さんは続ける。

「部内には、日本ボッチャ協会が認めた審判員資格を持つ部員が2人います。今後は、もっとボッチャの魅力を広げる活動をしていきたい」

大会を主催したNPO「D-SHiPS32」でNECの社員でもある上原大祐理事長は、「東京オリンピック・パラリンピックを前にいろんな競技の体験会が開催されていたけど、その場限りの1回で終わってしまったことが多かった。体験会を経験した小学生や中学生が目指せる場所を作りたかった」と説明する。

上原はパラアイスホッケーの元日本代表で、2010年のバンクーバー・パラリンピックで銀メダルを獲得した。選手を引退してから、NECに入社し、目指しているのは「パラスポーツの日常化」だ。障がいのあるなしに関係なく、パラスポーツの面白さを体験して、広める人が増えることが大切だと考えている。前出の大谷さんも、「今後は学校主催のイベントなどを通じて、ボッチャの面白さを広めていきたい」という。現在、NECは、D-SHiPS32と連携し、パラスポーツを広める大会を全国展開中だ。

写真/越智貴雄(カンパラプレス)・文/西岡千史

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