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約2週間で生成AIの業務利用を実現
情報漏洩、信憑性、権利侵害リスクへの対応策は

ChatGPTが話題となり、生成AIに対する注目が高まっています。情報漏洩や信憑性、権利侵害といったリスクも指摘される中、NECは、いち早く生成AIの業務利用に踏み切りました。先陣を切って活用に踏み切った狙い、リスクへの対策について、キーパーソンに話を聞きました。

■決定からわずか2週間で生成AIの社内利用を開始

──さまざまなコンテンツを生成することができる生成AIに大きな注目が集まっています。NECは、既に生成AIの業務利用を始めているそうですね。

川戸 5月からNEC国内グループ社員向けに、日本語の質問への回答や、要約といった依頼に応じて文章を生成できる「NEC Generative AI Service(NGS)」というサービスを開始しました。グループ社員の業務効率化と生産性向上を強力に推進することを目的としています。また、このサービスの利用を通じて、イノベーティブな人材の育成と企業文化の醸成も実現していきたいと考えています。

NEC
コーポレートIT・デジタル部門
働き方DX開発センター
Smart Workソリューショングループ
ディレクター
川戸 勝史

──NECが社員向けに提供するLLMサービスということですね。

川戸 はい。NGSの核となるLLM(Large Language Models/大規模言語モデル)には、ChatGPTをリリースしているOpenAI社のLLMとNECが開発したLLMの両方を採用しています。ユーザは、聞きたいこと、お願いしたいことに応じて相手を選ぶことができます。

──なぜ2種類のLLMを採用したのでしょうか。

川戸 2つの異なる価値を提供するためです。OpenAI社の先進的技術を活用していく一方、NECのLLMには、社内での活用を前提に社内情報や特定分野の情報を学習させ、OpenAI社のLLMにはない価値を提供していくことを検討しています。

──注目は高まっていますが、業務利用となると、本格化するのはこれからという印象です。なぜいち早く生成AIの活用に取り組んだのでしょうか。

川戸 生成AIに対する期待を一気に高めたChatGPTのインパクトは、非常に大きなものでした。自然言語処理の精度の高さに驚いた人は多いと思います。それを目の当たりにし、今後、生成AIは、生活やビジネスにおいてなくてはならない技術になる。ならば一日でも早く活用に取り組み、使いこなしておくべき──。NECはそう考えました。

小野 今は目新しくても、いずれ当たり前に身近にある技術になる。NGSを通じて、これから生成AIが社会に定着していくプロセスをいち早く体感しておく。それは、お客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援させていただく上でもNECにとって貴重な経験になると考えています。

川戸 そこで、すぐにエンジニア、セキュリティ担当者、法務担当者など、複数の専門家で構成するプロジェクトチームを立ち上げ、2週間で社員が安全・安心に使える体制と仕組みを構築しました。

──わずか2週間とは、驚きです。

小野 NGSを社内で「使える」サービスに仕上げるにはLLMだけでは不十分です。利用規約への同意と利用の申請、問い合わせ管理、ナレッジ管理、利用状況を把握するためのダッシュボード、利用者である従業員の声を改善につなげる仕組み、多様なサービスと連携するためのAPI管理など、さまざまな機能が必要になります。今回は、なによりスピードを重視し、各機能を一から開発するのではなく、既に利用しているサービスや仕組みをコンポーネントとして組み合わせたり、ローコード開発プラットフォームを活用したりして高速に開発しました。

画面例 NEC社内で提供しているNGSの画面イメージ

■複数の専門家の知見を持ち寄って利用環境を整備

──プロジェクトチームには、なぜセキュリティや法務の担当者の参加が必要だったのでしょうか。

川戸 「社員が安全・安心に使える体制と仕組み」を構築したと表現しましたが、社員向けのLLMサービスを立ち上げるのは我々も当然ながら未経験で、考慮すべき事項の洗い出しから行う必要があり、多様な専門家の視点を持ち寄る必要があったからです。

小野 まず、注意が必要なのが企業の秘密情報などが漏洩するリスクがあることです。誰でも利用可能な一般に公開されているChatGPTは、入力された質問も学習データとして利用される場合があります。そのことを意識せず、従業員が機密情報を入力してしまったために情報漏洩につながった企業があります。

NEC
コーポレートIT・デジタル部門
働き方DX開発センター
Smart Workソリューショングループ
プロフェッショナル
小野 香織

川戸 情報の信憑性にも注意が必要です。言うまでもありませんが、インターネット上の情報は玉石混交。信頼できるもの、そうでないもの、さまざまな情報があります。

ChatGPTは2021年9月までのインターネット上の情報を学習していますが、そもそも学習した情報が正しいかがわからないこと、またChatGPTなどのLLMは学習した情報を基に正しい見解を述べるのを目的にした技術ではなく、あくまで自然な文章を生成することを目的にした技術なので、出力された内容に間違いや創作されたものが含まれていることもあります。言葉が巧みだからといって、その内容までが信用できるとは限らないのです。また、生成AIが生成した文章や画像の著作権・知的財産権をどう扱うべきかについては議論が続いていますが、うかつに利用してしまうと、他人の権利を侵害してしまう可能性があります。

これらのリスクを考慮し、従業員にChatGPTの利用を禁止している企業もありますが、先ほど述べたとおりNECは、生成AIの可能性を高く評価し、むしろいち早く利用を開始すべきと考えました。ならば、どうすればリスクに対応し、安全・安心に利用できるか──。それを考えるためにセキュリティや法務の専門家が不可欠だったのです。

──具体的には、どのように対応しているのでしょうか。

小野 NECグループの「AIと人権に関するポリシー」、「情報セキュリティ基本方針」や関係する社内規定とも整合性を取りながら利用環境を整備しました。もちろん、今後の社会情勢や利用状況に応じて利用環境も継続的にアップデートしていきます。

具体的な対策としては、一般に公開されているChatGPTに加え、Azure OpenAI ServiceのLLMとNECが開発したLLMを利用したクローズドなNEC社員専用の環境を構築しています。こちらのNEC専用環境なら、入力した情報がインターネット上に流出することはありません。その上で機密性やデータ保護、情報セキュリティなどの観点から、利用ルールを規定しています。

また出力された情報の正確性・信憑性の確認、著作権・知的財産権の侵害の可能性などについては、このようなリスクを理解した上で使用するよう、リテラシー向上のための社内教育を実施しています。

これらの規定や注意喚起は、NGSの利用規約にも反映されており、この規約に承諾した従業員のみがNGSを利用できるようになっている上、利用開始後も適宜、同様の注意書きをポップアップで表示するようにしています。

■成功レシピなどのノウハウを社内で共有

──現在の利用状況をお聞かせください。

川戸 国内のNECグループの約2万人が利用を開始し、1日約1万回の活用が進んでいます。活用方法では、プログラム開発やシステム運用などに関する質問の比率が高いようです。このあたりはNECならではですね。以前は、ChatGPTには怖くて聞けないという思いもあったようですが、NGSなら安心して踏み込んだ質問を投げかけているようです。

次に多いのが文章生成をNGSに依頼するケースです。「この文章を要約してほしい」といったお願いです。ただ、こちらは思ったほどの成果につながらないことも多いようで試行錯誤中です。

小野 このような試行錯誤を従業員全員で効率的に行うために、「この一言を加えると、意図した結果が返ってきやすい」というような成功文例を「NEC Prompt Pad」という社内サイトで共有しあっています。

NEC Prompt Pad のようなNGS活用の高度化と促進、効果最大化に向けた活動の中心になっているのが、新設の「NEC Generative AI 変革オフィス」です。CIO/CISOの直下に位置し、業務領域や部門に関係なくあらゆる部門への活用の働きかけや、社内のほかのサービスとAPI連携させてNGSの高度化を図ることで、生成AIによる生産性向上をリードしています。

──NEC Generative AI 変革オフィスは、NECの経験をお客様に還元していく上でも重要な役割を果たすそうですね。

小野 NECは、自らをゼロ番目のクライアントと位置付けて最先端の取り組みを実践する「クライアントゼロ」の考えのもと、さまざまな課題解決に率先して取り組み、その経験を通じて蓄積したノウハウをお客様に還元していくことを目指しています。NGSに関する取り組みも例外ではありません。社員が安全・安心に使える体制と仕組みづくりのためにNECが考えたことや苦労したこと、そして、NGSの価値を高めるためにNEC Generative AI 変革オフィスが取り組んだことなどを積極的にお客様にお伝えしていきます。既に営業担当者と共に生成AIの活用に興味を持っているお客様を訪問し、NGS立ち上げ時の苦労や活用促進のポイントなどをお伝えしています。

図 NEC Generative AI 変革オフィスの役割

──最後に今後の展望をお聞かせください。

川戸 社員からは、NEC固有の情報も学習データに加えたいという声が上がっており、最適な方法を検討しています。早期に成果が出せそうなものから試してみたいと考えています。

繰り返しになりますが、NECは生成AIの可能性を高く評価し、業務利用に踏み切りました。そこで得た知見を多くのお客様に継続的に還元できるよう、これからも活用と改善に向けた取り組みを加速させます。

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