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群衆行動解析

NECの最先端技術

2015.4

混雑環境で生じるリスクを回避する世界初の映像解析技術

1.個ではなく群衆のままカメラ映像を解析

情報・メディアプロセッシング研究所
主任研究員
宮野 博義

宮野: 群衆行動解析とは、大まかにいうと、人の集まりを群衆のままに捉える解析技術です。従来の映像解析では、一人ひとりを個別にとらえて解析するというのが主な方法論でした。しかし、これだと実際の現場ではあまり役に立たないことが多いんです。人が少ない場所では個別に人物を認識できますが、混雑している場所ではどうしても映像上で人の姿や顔が重なってしまいますから、一人ひとりの認識というのはなかなか有効に機能しません。しかし、実際に解析技術が要求されるのは、むしろこういった混雑した現場というのが実情です。混雑している方が、転倒などの事故は起きやすくなりますし、事件のリスクも高まります。だからこそ、混雑することの多い鉄道や公共施設でも本当に役立つ解析技術をつくりだそうとしたのが、開発のきっかけですね。混雑環境でも、安心で安全な環境をつくりあげたいという社会ニーズに応えて開発されたのが、この群衆行動解析です。

情報・メディアプロセッシング研究所
主任 池田 浩雄

池田: 加えて、この技術では新しく「周囲の人物」の動きに注目しています。たとえば、混雑状況の中で人が倒れたとしても、監視映像の中でその人だけをピンポイントで捉えることは非常に難しいですよね。警備員の方も初動が遅れてしまいます。しかし、人が倒れれば、その周囲には、その人を見守るように人の集まりができるはずです。群衆行動解析では、こうした「群衆」の変化をリアルタイムに解析して、アラートを出すことができます。警告を出すべき一人を特定するのではなく、周りの人に着目するという発想の転換が今回の技術を生み出しました。

2.NECのノウハウが生んだより人間に近い解析システム

――世界初となる技術を開発できたきっかけやブレークスルーは?

 池田: 開発当初、一人ひとりを解析しようと何度も試行錯誤をしながら実験を繰り返していたんですが、やはりうまくいかなかったんですよね。そして、何度も映像を見ているうちに、これは小さな領域での「人の配置パターンから作られる模様」を見た方がいいんじゃないかって思ったんです。それがアイデアの発端でした。

 宮野: これって、実は私たち人間と同じなんですよね。私たちも、短い時間で人を数えようとしたら一人ひとりを数えるのではなく、無意識にかたまりとしての模様でとらえてカウントしているはずです。

 池田: この「人の配置パターンからつくられる模様」という考え方をもとに、映像を格子状に区切った独自の解析エンジンを開発しました。エンジンには、格子と同形状で、人の多様な配置パターンを示す画像サンプルを何十万枚も用意して学習させています。これにより、たとえば3人が映る学習サンプルのうちの一つに格子内の映像が似ていれば、エンジンはその格子内には3人いると効率的に判定できるわけです。

人々のかたまりごとに解析

宮野: この何十万という画像は人工的につくっているというのがもう一つのブレークスルーで、一人ひとりの画像を合成で貼りつけて作成しています。実際に群衆の映像で撮影しようとすると、同じような動きがつづくため、偏ったデータしか撮れないという問題があります。しかし、人工的につくることができれば、ランダムパターンでさまざまなケースをつくり出すことができるので、どんな状態であっても解析できるわけです。さらに、合成された何十万という画像から高精度な解析手法を創出するための学習手法も重要です。ここには、1960年代のOCR解析から世界のトップを走りつづけてきたNECのノウハウが生かされています。

3.正確なアラートと予測によってより安心な社会を実現

――群衆行動解析は、社会でどのように活躍するでしょうか?

宮野: まず言えるのは、警備を効率化できるという点ですね。最近では、公共施設や都市など、あらゆる場所で防犯カメラが数多く設置されるようになりました。しかし、これは同時にモニタリングする映像の数も増えるということです。そのため、近年では映像を確認する方の負担が大きくなっているという問題がありました。群衆行動解析は、異常を正確かつリアルタイムに解析し、アラートを出すことができるシステムです。これによって、警備の方は信頼できるアラートをもとに、数々の映像の中から異常事態をすばやくキャッチすることができるようになります。

池田: 画面上では、ヒートマップ表示で実際の場所との相関関係を示すこともできるので、異常が起きた場所も一目瞭然です。すぐに現場へ駆けつけることができます。より効率的で安心できる警備が期待できるようになりますよね。

また、防犯カメラは常にプライバシーの問題と隣り合わせですが、群衆行動解析では、個人を特定せず、群衆としてとらえるためプライバシーを確保できるというのも大きな利点ですね。

宮野: さらに、ビッグデータを生かした運用もできると考えています。長いレンジでデータを記録していくと、いまの混雑状況から、この次にはどういう状態になって、どういうリスクがあるということが予測できます。これによって、警備員の配置をあらかじめ最適化するというようなことも可能になります。

混雑の起きやすい駅やイベント会場はもちろん、災害時の誘導など、多くの現場で応用していけば、より安心できる社会づくりへ貢献できるのではないかと考えています。

宮野氏インタビュー

4.SNS連携や販売など広がっていく可能性

――これから先、群衆行動解析がめざしていくビジョンはありますか?

宮野: 現在進行中の取り組みとしては、SNSとの連携によって事件や事故につながる異変を早期に発見するシステムを考えています。たとえば事件が起こる場合は、事前にSNSで関連する文言が書き込まれている可能性がありますよね。そういった情報を収集することができれば、より積極的にここを警備しようといった対策や、画像側で兆しがないか重点的に見張るといった対策をとれるようになります。

池田: 警備現場での異常の検知や解析だけでなく、販売やプロモーションといった場でも新しい可能性を切りひらくことができると考えています。たとえば店舗で導入すれば、人が集まっている場所や人の流れを解析して、売れ筋やお客様の動線を把握することができます。デジタルサイネージなどの広告効果の検証に導入すれば、モニターの前で足を止める人を解析して、最適な提示場所や結果のフィードバックを提供することができ、より効果的なプロモーションの展開が可能になります。

宮野: 群衆行動解析は、これまでの映像解析とは異なるまったく新しい技術ですから、社会に役立つ応用方法がまだまだあるはずです。お客様との対話を通して新たなニーズをつかみながら、さまざまな可能性を見出していくことができると思っています。「社会価値共創研究所」として、これからが本番です。このコアテクノロジーを生かし、お客様と議論を交わしながら革新的なサービスを生み出し、社会に新たな価値を提供していきたいと思っています。

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