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動画とAIを活用したトンネル掘削時の地山評価システムを開発
~掘削時の崩れ方に基づきAIが地山の状態を評価~2022年10月11日
株式会社福田組
日本電気株式会社
株式会社福田組(社長:荒明正紀、以下 福田組)は、日本電気株式会社(代表取締役 執行役員社長 兼 CEO:森田 隆之、以下 NEC)と共同で、山岳トンネル工事現場で常時行われている地山(※1)の良否を評価する作業を支援するため、動画とAI(人工知能)を活用した地山評価システムを開発しました。このシステムは、トンネル掘削時の動画をAIが解析して地山状態をレポートすることにより、トンネル技術者の業務を支援するもので、長時間の現場の立会いから技術者を開放し、働き方改革の一助となることが期待されます。
開発背景
トンネル技術者は1日1回の頻度で実施する切羽観察(※2)によって地山の良否を評価して支保パターン(※3)の妥当性や追加対策の要否を判断していますが、掘削後の切羽だけでなく、掘削時の地山の崩れ方や音といった動的な挙動も合わせて観察することで、判断材料となる情報が豊富になり、より的確な地山評価が行えると考えられます。
また、働き方改革や生産性向上が求められる中で、トンネル技術者が切羽に長時間立ち会い、掘削時の地山挙動を直接観察することが困難になってきています。そこでトンネルの掘削状況を自動で観察する方法が効果的と考え、動画とAIを活用して地山状態を判定する技術の開発を目指しました。
技術概要
今回開発したシステムは、従来型画像解析技術(※4)、AI画像認識技術(※5)、および音声解析技術を要素技術として活用しており、市販のビデオカメラ、学習済みAIモデルを搭載した解析サーバ機、および解析結果を可視化する閲覧アプリケーションで構成されます。切羽で撮影した掘削時の動画をクラウドにアップロードおよび解析サーバで解析すると、掘削によって地山の崩れる様子が自動で検知され、これにもとづいて地山状態の良否が評価されます(特許申請中)。解析結果は、動画経過時間と地山状態を評価したレベル表記との関係をグラフ化した経時変化図等、レポートとして自動生成されます。さらに、グラフ上の任意点を選択すると該当する時間の撮影シーンを容易に確認することができます(シーンサーチ機能)。現場のトンネル技術者がこの評価結果と検知箇所の動画を確認することにより、追加対策の要否の判定を容易に行えることが期待されます。
なお、AI画像認識技術にはNECの最先端AI技術群「NEC the WISE(※6)」のひとつである「NEC Advanced Analytics - RAPID機械学習」(※7)を使用しています。
検証結果
施工中の岐阜山県第一トンネル(仮称)東地区工事(中部地方整備局発注)の一部区間で本システムを試行し、有効性を確認しました。なお本システムでは、掘削時のこそく(※8)作業の様子を撮影した動画と地山状態のカテゴリ分類をAI画像認識の教師データとして機械学習させています。
良 ⇦ 地山状態 ⇨ 悪 | ||||
---|---|---|---|---|
Lv.1 | Lv.2 | Lv.3 | Lv.4 | |
こそく | 叩いても崩れにくい | 叩くと狭い範囲で崩れる | 叩くと広範囲に崩れる | 触れるだけで崩れる |
切羽での 現象 |
軽微な肌落ち (パラパラ) |
肌落ち (バラバラ) |
抜け落ち (バサバサ) |
崩落 (ドサドサ) |
(「NPO法人臨床トンネル工学研究所 技術研究部会 トンネル補助工法委員会:平成22年~23年度活動報告書、p.41、2012.」から抜粋加筆)
検証の結果、以下のことが確認できました。
- 掘削時の地山が崩れる様子は、小規模な崩れ方(Lv.1)は坑内照明に起因して検知困難なケースもありましたが、ある程度の規模(Lv.2以上)であれば概ね検知することができました。
- 検知箇所のレポートにおける地山状態のレベル判定は概ね妥当でした。
以上の結果から、本システムは地山状態を容易に把握するために有効と考えます。特に切羽に立ち会うことが少ない夜間における地山状態の把握や補助工法の要否判定において、トンネル技術者への支援が期待されます。
今後の展開
福田組では、更なるシステム改善を加えていくことで全国のトンネル現場に展開することを計画しています。また、将来的に無人化・自動化施工が可能になった場合、人がいなくなった切羽において地山状態の把握を人に代わって行うことも期待されます。
なお、2社は互いの知見による共創により新たな価値創造を継続し、更なる生産性および安全性の向上に努めていきます。
以上
- ※1:地山
人為的な盛土などが行われていない、自然に形成されたままの地盤。 - ※2:切羽観察
切羽とはトンネル掘削の最先端部の掘削面のことであり、切羽観察はトンネル施工中に切羽の状態、ハンマー打撃による割れ方、風化変質、割れ目の間隔、割れ目の形態、割れ目の状態および湧水等の観察を行い、地山状態を評価する坑内観察調査。 - ※3:支保パターン
地山状態に応じて適用される支保部材(掘削後の地山の緩みや崩壊を防止するために設置する支持構造物、一般に吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工等)の組合せ。掘削時の切羽観察の結果、事前に設計された支保パターンが適切でないと判断された場合、支保パターンの見直しが必要となる。 - ※4:従来型画像解析技術
動体検知を行うオプティカルフロー処理、見やすさを改善するコントラスト強調処理などを利用しています。 - ※5:AI画像認識技術
ピクセル単位で画像分類を行うセマンティックセグメンテーション技術、特定物体の位置検知を行うオブジェクト検知技術などを利用しています。 - ※6:
- ※7:RAPID機械学習
人工知能技術「ディープラーニング」を搭載したエンタプライズ品質の機械学習ソフトウェアです。お手本データを学習させることで、判断モデル(法則)を自動生成します。
RAPID機械学習について:https://jpn.nec.com/rapid/index.html - ※8:こそく
発破掘削方式でトンネル掘削を行う場合、発破後の切羽付近に浮きでている岩塊を油圧ブレーカ等により除去する作業。
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
福田組 総務部
E-Mail:kouhou@dws.fkd.co.jp
NEC AIアナリティクス事業統括部 RAPID機械学習担当
E-Mail:rapid@cmg.jp.nec.com
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