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「データサイエンティストにも個性を!~唯一無二のデータサイエンティストへのすゝめ~」

データサイエンティスト協会 11th シンポジウム スポンサーセッション

開催日:2024年11月11日
開催場所:ウェスティンホテル東京
登壇者:NEC アナリティクスコンサルティング統括部 新井裕介

データサイエンティストの育成やデータ分析の発展を目指し、AIの最新情報の収集や参加者同士の意見交換や交流の場として、毎年開催されている「データサイエンティスト協会シンポジウム」。

第11回となる今回は、LLMや生成AIが社会に大きなインパクトを与えている時代背景を踏まえて「~データサイエンスの最前線~」をテーマに開催された。

スポンサーセッションに登壇したNEC アナリティクスコンサルティング統括部の新井裕介は「データサイエンティストにも個性を!~唯一無二のデータサイエンティストへのすゝめ~」と題し、気象予報士の資格を持つ自身の経験をもとに個性を活かしたデータ分析についての講演を行なった。

データサイエンティストのなり始めに感じる不安とは

新井はアナリティクスコンサルティング統括部で主に官公庁と製造業の顧客向けのデータ分析を担当している。入社前は機械学習やLLMに関わっておらずほぼゼロからデータ分析の領域に入ったこと、入社1年目に気象予報士の資格を取得して気象データを使った分析に取り組んでいることなど、自己紹介を行なってから講演の本題に入った。

最初に新井は聴衆に向けて「皆さんもデータサイエンティストになり始めの頃を思い出してください」と問いかけた後、自身がデータサイエンティストになった当時に感じたことを3つ紹介した。

第一に、データサイエンスは領域が広過ぎてカバーし切れないのではないかと感じたこと。第二に、身近にいるデータサイエンティストがとても優秀だったこともあり、自身のスキルと比較して引け目を感じていたこと。第三に、日々新しい技術が出現するこの領域で進化についていけるのか不安だったこと。こうしたネガティブな感情が沸き起こり、データサイエンティストとしてのキャリアを歩き始めた当初は不安でいっぱいだったと振り返る。

講演のテーマに掲げた『データサイエンティストにも個性を!』は、自分自身が感じたネガティブな感情や不安に対する1つの解であり、不安を拭う“御守り”のようなものだと述べた。

データ分析に個性は必要か?

「データ分析に個性は必要でしょうか?」と、新井は再び聴衆に質問を投げかける。その上でデータ分析における個性について持論を展開した。

一般的にいう個性とは「得意なこと・不得意なこと・好きなこと・経験に基づくドメイン知識」に個人の「性格」を掛け合わせたものであり、これにデータサイエンスのスキルを組み合わせたものが、データ分析の個性だと新井は話す。ここで「データサイエンティストの個性」ではなく、あえて「データ分析の個性」という言葉を使ったのは、データ分析プロジェクトはデータサイエンティスト1人の個性に頼って成果を出せるものではないとの考えからだ。

「データサイエンティストはデータ分析の専門家ですが、お客様の業務に関するドメイン知識を持っていないことがあります。逆にお客様はデータ分析の専門家ではありませんが、業務のドメイン知識は豊富に持っています。その両者が手を結び、データ分析プロジェクトに関わる全員が個性を発揮すること、それが良い結果を生むポイントだと考えています」

続いて、データ分析に個性が現れる具体的な事例を3つ紹介した。1つは食品スーパーの売上データをベースに需要予測や廃棄量削減につながる分析を行うプロジェクトの例だ。この例では、自分が管理する店舗だけの売上げや廃棄品に注目する店長の視点、店舗ごとの売上げの違いに着目する営業企画部門の視点、ベースとなるデータに加えてチラシ情報やクーポンなどのプロモーション施策と来店者数の関係など追加データを組み合わせるデータサイエンティストの視点、さらに新井の場合は気象予報士の知識を活かして気象データも参照すると、それぞれの視点の違いを紹介した。

「この例のように、分析する主体や目的に応じて異なる着眼点や分析設計の組み立て方があります。当然ながら、このまま分析を進めれば4通りの分析結果とビジネスプランが導き出されることになります。そこにデータ分析の個性が現れるのです」

2つ目に紹介したのは、新井自身が実際に経験した事例だ。ある企業では、顧客側に気象予報士の資格を持つ担当者がいたため、気象データをもとにしたディスカッションでは、同じ目線で専門用語をフルに使いながらプロジェクトを進めることができた。特徴量の作成においてもあたりをつけることが容易で、結果的に精度の高いデータ分析が行えたという例を紹介した。また、ある企業のプロジェクトで顧客からMATLABというプログラミング言語で開発したアルゴリズムを渡された際のエピソードを紹介した。この時のプロジェクトメンバーは誰もMATLABの知識がなく、このアルゴリズムを扱いかねていた。そんなときに、以前MATLABを利用していた新井の経験が活きた。入社1年目の新人ながらメンバーにレクチャを行うなど、思わぬ形でチームに貢献できたという事例を紹介した。

「これらの例からもわかるように、データ分析のアプローチ方法やデータの見方にはその人の個性が現れます。チームでプロジェクトに臨む際には、お互いの個性を活かした多様な分析ができますし、一見データサイエンスとは関係ないと思っている個性が偶然活かせることも多いというのが、私の実感です」

データ分析に個性を活かすため3つのポイント

講演のまとめとしてデータサイエンス領域で個性を活かすための3つのポイントを紹介した。

1点目は、チームの中で何か一つの分野でもナンバーワン、オンリーワンを目指すこと。データ分析のコンペティションで1位を取るという目標を掲げることも良いが、まずはメンバーの中で自身の個性とスキルを認められることが、活躍の場を広げることにつながる。

2点目は、専門特化した武器を持っていなくても、複数の強みを持っていればその組み合わせが個性になるということ。新井自身を例に取れば、気象予報のドメイン知識とMATLABの開発経験、そして人前で話すことが苦手ではない性格、その組み合わせが個性につながっている。

3点目は、興味のアンテナを広げることを怠らないこと。旺盛な好奇心を持ち常にアンテナを高く伸ばし、趣味でもなんでも良いので1つでも多くのことにトライして個性の幅を広げていくこと、それが巡り巡ってデータサイエンティストとしての価値向上につながると、新井は話す。

さまざまな役割が求められるからこそ、個性を発揮しながらデータサイエンティストの道を楽しく歩む

最後に新井は、データサイエンティストになるのは敷居が高いと躊躇している方や、データサイエンティストとしてさらなる活躍を目指す方々に向けてメッセージを送った。

「私自身LLMや生成AIの経験がほぼゼロの状態からキャリアをスタートしましたが、今では個性を活かしてデータサイエンティストの道を楽しく歩めています。これからの時代は、今まで以上にビジネスのみならずさまざまな場面でデータサイエンティストの役割が求められることは間違いありません。

データサイエンティストとして活躍されている方だけではなく、データ分析に関わるすべての皆さんがそれぞれの個性を発揮し、データサイエンスの世界を一緒に盛り上げていきましょう」と会場に呼びかけ、講演を締め括った。