Japan
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WiDS TOKYO @ Yokohama City University
第4回シンポジウム ライトニング・トークセッション
「データサイエンスとSDGsにおける健康・福祉~OnでもOffでも~」
開催日:2022年3月8日 拠点会場:オンライン開催 登壇者:田仲 理恵(NEC AI・アナリティクス事業部)
超スマート社会の実現に向け、データを分析し、新たな価値を生み出す「データサイエンティスト」の活躍が期待される中、米国スタンフォード大学を中心として始まった活動がWiDS(Women in Data Science)だ。ジェンダーに関係なく、データサイエンス分野に多くの人材をいざない、育成することを目指すもので、世界各地でシンポジウムなどを実施している。
2022年3月8日、昨年に引き続きオンラインにて日本における第4回シンポジウム「WiDS TOKYO @ Yokohama City University」が開催された(主催:横浜市立大学)。後半に行われたライトニング・トークセッションでは、登壇者に中学生から会社員まで幅広く参加。それぞれが思うデータサイエンスとSDGsの融合について独自の発表を行った。
NECからは、AI・アナリティクス事業部の田仲 理恵が、本トークセッションのトリを務めた。データサイエンティストとして、また一人の女性として自身とSDGsとの関係性についてプレゼンテーションを行った。
田仲 理恵
NEC AI・アナリティクス事業部
2008年にNECに入社。入社後は中央研究所を経て、マーケティング戦略本部へ異動となる。現在はAI・アナリティクス事業部に属し、データサイエンティストとして従事。その間に結婚、出産を経験し、仕事と育児の両立に励んでいる。
「今のわたしを作り上げている“OnとOff”」
近年、メディア等で話題になることが多いSDGs。日本語では持続可能な開発目標という意味を持ち、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として、17の目標と169のターゲットから構成されており、日本としても積極的に取り組んでいる。
昨年同様、本年のライトニング・トークセッションでもSDGsの目標の中から一つを自由に選び、「データサイエンス×SDGs17目標中の 1 目標×任意のキーワード」としてそれぞれのパネリストがプレゼンテーションを行った。
田仲が選択テーマは「3 すべての人に健康と福祉を」。現在、ヘルスケアに関するデータ分析に関わっていることからこのテーマを選んだ。そして、仕事とプライベートを切り分け、「Onなわたし」と「Offなわたし」の両面からアプローチを図った。
まずは自己紹介として、「Onなわたし」では、「物心がついた頃から理系に興味を持っていた」という今の田仲を作った根底の話から始めた。そのまま進路を進め、研究者としてNECに入社。マーケティング戦略本部を経て、現在はデータサイエンティストとして働いている。
続いて「Offなわたし」では、奈良県で生まれ育ち、学生時代に祖母が車椅子での生活になったことや、結婚を機に実家を離れたこと、出産を経験し現在はデータサイエンティストと妻と母の3役をこなしていること等人生における生活の変化を語った。
「業界・分野によって異なる情報の扱い方」
田仲がNECに入社した当初は、研究所に属してデータと向き合っていた。そこでは、さまざまなデータを見える化させることで、どのように行動促進につなげていくのかを研究していた。
また、今回のテーマである「健康・福祉」については、その次に配属されたマーケティング戦略本部で、ヘルスケア領域の市場調査を行ったことが最初の関わりだった。今後の日本におけるヘルスケア市場の分析や、IT化やDXが進んでいる領域、まだ調査が進んでいない領域の研究まであらゆる可能性を模索していた。
データサイエンティストとして働く現在でも、ヘルスケアに関するデータ分析に携わっている田仲は、自ら選んだテーマでもある健康や福祉がどのようにデータサイエンスと結びついているのかについて説明した。
「わたしが今仕事で関わっている介護福祉分野では、ヘルパーやケアマネージャー等現場レベルでの膨大なノウハウが蓄積されているのですが、まだデータの形になっていなかったり、データが活かされていなかったりすることが非常に多いです」
スタッフの経験はとても大事な要素だが、その経験をこれからのために活かすにはデータ分析を用いることが必要である。「人のノウハウだけに頼らずにすむよう、データ分析を使ってどのように貢献できるかを考えています」と田仲は語る。
反対に健康に関しては、健康診断や食事、運動、睡眠等多くのデータが存在する。その問題点と今後の展望について解説した。
「健康のためにどういった行動を取るべきか、良好な生活習慣を送るためには何をするべきかと考えることはとても難しいです。そのためには、数も豊富でバラバラに扱われているデータを組み合わせることが大事で、よりよい行動につながると考えています。今後はこれまでの経験とデータ分析の技術を活かして、分析と新たなサービスの提案に発展させていきたいです」
「プライベートでのデータサイエンス×健康・福祉」
ここまでが「Onなわたし」の説明である。「Offなわたし」については、福祉に関することとしてかつて車椅子を使用している祖母と暮らしていたときのこと、健康面では自身の子どもの健康管理のエピソードを用いて語っていた。
「車椅子を使っている祖母と外出していたときは、電車に乗る際に乗換案内であらかじめルートを検索していました。ただ、駅ではエレベーターでしか移動ができないので時間がかかり、案内通りの時間での乗り換えは難しかったです。また、目的地に向かうときには駅やビルのフロア図を確認してルートを自分で考えながら移動していました。身の回りの情報をそのまま使用するのではなく、組み合わせて脳内で最適化することで、スムーズに動けるようになりました」
続いて子どもの健康とデータの関わりについて、この時代ならではの話を交えて説明した。
「まだ幼い子どものことを考えて、他の子と比べて成長曲線からは外れていないかを確認したり、外に連れて行くのに、新型コロナウイルスの新規感染者数と実効再生産数を見て、今は安全だろうかと考えたりとデータと日々向き合っています。子どもを育てるには、こういった統計情報はとても重要です」
「働きやすい環境でこれからもデータ分析に取り組む」
田仲は最後に、働いている環境についても紹介。NECでは、Smart Work2.0という働く場所と時間を自由に選べる制度を採り入れている。その制度と働きやすさについては、「在宅で働くことで仕事も家族との時間も両方手に入れられる環境になりました」と満足そうに語っていた。その他にも、社内にはさまざまなコミュニティで相談しやすい先輩が多く、助かっているという。
「チーム内にも子育ての先輩はいますし、ワーキングペアレンツコミュニティ、女性社員のコミュニティも存在しており、子育てのアドバイスやこれからのキャリアについてなど色々とためになるお話を聞くことができています」
仕事に関することだけではなく、プライベートにも言及した田仲のプレゼンテーションはこれからの未来を担う学生や、社会人にも心に残る内容であっただろう。データサイエンスとSDGsの関わりについて十人十色の意見が発表された意義のあるトークセッションだった。