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WiDS TOKYO @ Yokohama City University 第3回シンポジウム ライトニング・トークセッション
「SDGsにおけるデータサイエンス×Imagineの可能性」

開催日:2021年3月8日 拠点会場:ウイングアーク1st株式会社(オンライン開催) 登壇者:保坂 真奈美(NEC ソリューションイノベータ デジタルソリューション事業部)

超スマート社会の実現に向け、ビッグデータを分析し、新たな価値を生み出す「データサイエンティスト」の活躍が期待される中、スタンフォード大学を中心として始まった活動がWiDS(Women in Data Science)だ。ジェンダーに関係なく、データサイエンス分野で活躍する人材の育成を目的としたもので、世界各地でシンポジウムなどを実施している。

2021年3月8日、オンライン開催にて日本における第3回シンポジウム「WiDS TOKYO @ Yokohama City University」が開催された(主催:横浜市立大学)。今回は、初の試みとしてスタンフォード大学、アジア・太平洋地域のWiDS関係者をオンラインで結ぶセッションを実施するなど、充実のプログラムで多くの参加者を数えた。

シンポジウムの後半には、「データサイエンス×SDGs」をテーマにしたライトニング・トークセッションが実施された。社会価値の創出によるSDGsの実現に取り組んできたNECは、このライトニング・トークセッションの主旨に賛同。NECソリューションイノベータ デジタルソリューション事業部の保坂 真奈美がパネリストとして参加し、データサイエンティストの立場から普段の行動とSDGsとのつながりについてプレゼンテーションを行った。

保坂 真奈美
NECソリューションイノベータ
デジタルソリューション事業部 第二グループ AIサービスG

データサイエンティスト。これまでにBDP(現AIディスカバリープログラム)支援、NEC the WISEの業務適用支援など数々のAI・アナリティクス業務に携わる。専門領域は、データ活用コンサルティング・定着化支援。

データサイエンスによるSDGs貢献

SDGs(エス・ディー・ジーズ/Sustainable Development Goals)とは、2030年までに持続可能な社会を実現するために掲げられた、17の国際目標とその具体的目標である169のターゲットのこと。貧困や教育、健康、ジェンダー、エネルギー、働きがいなど、地球環境と人間生活にかかわる包括的な目標が設定されている。

今回のライトニング・トークセッションは、「データサイエンス×SDGs×各パネリストによる任意のキーワード」が発言テーマ。7名のパネリストが順にプレゼンテーションを行った。

保坂が選んだキーワードは「Imagine:想像すること」。データサイエンスの活用によって日常の行動を定量化し、その数字から「なぜ?」「では、どうする?」と想像することの大切さについて発表した。

冒頭で保坂は、SDGsというワードを耳にする機会が増えたことに触れたうえで、「SDGsが重要なことだと理解はしていても、自分とはどこか距離を感じるという人もいるのではないでしょうか」と問いかけた。

「私たちが日常できるSDGsへの身近な取り組みとして、マイバッグの使用や食べ残しを減らすことなどがあります。しかし、それらの行動がSDGsに掲げられた目標に対して、『どのように、どのくらい』貢献しているのか実感が伴わなければ、なかなか継続して取り組むことが難しいのではないでしょうか」

そう話したうえで保坂は、企業によるデータサイエンスを活用したSDGs貢献の事例に話題を移した。

「たとえば食品の小売業においては、これまでの販売量などから将来の販売量をデータサイエンスによって適正に予測することで、過剰仕入れによる食料廃棄を減らすことができます。これは、SDGsの目標12『つくる責任 つかう責任 接続可能な消費と生産のパターンを確保する』のターゲット3『2030年までに食料廃棄を半減』につながります。このように、企業においてデータサイエンスを活用したSDGs貢献への取り組みが行われているのは皆様もご存じのことと思います」

一方で、個人レベルでデータサイエンスの視点がどのように活用でき、どのくらいSDGsに貢献していくことができるのか。そのことについて保坂は、身近なものを例に挙げて説明した。

「たとえば水道料金の明細票には、料金や水道使用量だけでなく、前回の使用量や昨年の同じ時期の使用量も記載されています。データサイエンスの知識を活用し、日々の生活にあるこのような数字を ”正しく理解” すること。まずは、それが暮らしの中にある取り組みとSDGsをつなげて考えることのスタートになるのです」

日常の行動とSDGsをつなぐ “Imagine”

水道使用量を減少させることは、SDGsの目標12にあるターゲット8『SDGsおよび自然調和型ライフスタイルに関する適切な情報取得と意識向上』に寄与することになる。そして、水道料金の明細票にある「数字」を正しく理解し、SDGs貢献に向けた「行動」につなげるのが、保坂がキーワードとして掲げた「Imagine:想像すること」である。

「私がデータサイエンティストとして大切だと考えることは、『Imagine:想像すること』。数字を理解するだけでは、水道使用量を減らすことはできません。どのような行動を積み重ねた結果、水道使用量が増えたり、減ったりしたのか ”想像すること” から、水道使用量の減少に向けた有効なアイデアは生まれてきます」

行動を変化させ、その行動によって「数字」がどのように変化したのかを知り、数字の裏にあるものに「想像」を働かせることで、次に起こすべき「行動」が見えてくる。このサイクルを繰り返すことが、日常の暮らしとSDGsとの結びつきを深めていく。

「SDGsが掲げる目標は、スケールの大きな社会課題と思われるかもしれません。しかし、『データサイエンス×Imagine:想像すること』によって、1人1人の行動は具体的な目的に変わるのです。さらに、その具体性が取り組みの継続を後押していくのです」

そのようにメッセージを送った保坂は、最後に、「今後も企業のデータサイエンティストとして、個人・企業の取り組みとSDGs貢献のつながりが見えるような仕組みをご提案していきたいと思います」と決意を示し、4分間のプレゼンテーションを締めくくった。

分野を横断したデータサイエンスが未来を拓く

ほかのプレゼンテーションでは、「子どものメンタルヘルス」「人材戦略」「音楽」など多岐にわたるキーワードが掲げられ、SDGs貢献に対するデータサイエンスの有効性が幅広く示されてライトニング・トークセッションが終了。その後、WiDSの運営者を交えたパネルディスカッションでは、1時間にわたり活発な議論が行われ、保坂のプレゼンテーションに対して次のような意見と感想が述べられた。

「個人が行動を起こすことで、どのようにSDGsに貢献できるのか。その可視化に焦点が当てられた意義のある内容だと感じた」

「見えない部分がどのくらい影響しているのかを可視化していくことが大切。今回の内容を踏まえて、より可視化に取り組んでいけば素晴らしい成果につながると思う」

「定量化は、企業では当然求められるファクター。しかし、個人の行動を定量化するという提言は新鮮だった。個人というと最小単位のように感じるが、SDGsは突き詰めれば70億人の1人1人が取り組んでいくもの。1人の生活から生まれた指標が70億人の指標になれば、それは最も本質を捉えているのかもしれない」

最後にコメントを求められた保坂は、「ほかの方のプレゼンテーションを拝聴して、SDGsに掲げられたどの目標も不可分なものであり、それぞれの領域が連携することの重要性を改めて感じました。また、COVID-19で状況が急変したように、いま起きている変化を数字で捉え、変化に即応することが求められています。これからもさまざまな視点を交えたデータサイエンスを通じて、SDGs貢献に取り組んでいきたいです」と語った。

各分野を横断した自由闊達な議論が行われ、データサイエンスを活用したSDGs貢献の新たな道筋がいくつも示された今回のプログラム。次回開催への期待を残し、盛況のうちに幕が閉じられた。