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成果を上げるAI活用のモデル設計に必要な知識とは― 新講座「パターン認識特論」のご紹介

近年、ディープラーニングなどのAIが大きな進歩を遂げ、社会にさまざまな価値を生み出している。AIを社会実装して価値を生み出すには「課題に対してどのような手法を、どのように適用するか」というAI活用の設計図を書ける人材が必要だ。

NECアカデミー for AIでは、AI活用のモデル設計に欠かせない「パターン認識」の基礎理論を体系的に学ぶ新講座「パターン認識特論」を2021年1月より提供開始する。パターン認識を学ぶことの意義、新講座で学べる内容について、講師を務める佐藤敦に聞いた。

佐藤 敦
NEC バイオメトリクス研究所 主席研究員

理学博士。研究分野はパターン認識、画像処理、機械学習。NEC入社当社に携わった郵便区分機向け文字認識技術の開発では、独自技術GLVQを開発し認識性能の飛躍的な向上に成功。技術研究の傍ら大学で教鞭を執り学生の指導にあたる。

AI活用のモデル設計に欠かせない「パターン認識」の知識

―― そもそも「パターン認識」とはどのようなものなのでしょうか。

「パターン」とは「空間的、時間的な信号の変化」を指します。そのパターンについて、特定のクラスに識別する処理が「パターン認識」です。パターン認識は、食べられる植物を見分けたり、身に迫る危険を察知したり、生命維持に必要な判断をするために、私たち人間をはじめ生物が行うごく自然な処理です。それと同じことをコンピュータに実行させるため、現在に至るまでさまざまな研究がされています。「文字認識」「顔認識」「音声認識」などが、パターン認識の代表的な適用例です。

―― AI活用が進む現在において、パターン認識の基礎理論を学ぶことの意義はなんだと思いますか。

AIのような最先端の技術を活用して課題を解決するには、数ある手法のなかから課題に対して適切なものを選定する必要があります。その過程には試行錯誤がつきものですが、望ましい結果が出るまでやみくもに試すのは現実的ではありません。課題に対して有効な手法はどれであるか、ある程度の見通しをつけることに基礎理論の理解が役に立つのです。

たとえば、モデルの適用フェーズにおいては、予測の精度、計算処理の環境、速度などの要素のうちどれを優先するかによって選ぶべきモデルが変わります。モデル適用後の改善フェーズなら、目標を達成できない原因を特定し、その対策を検討しなければなりません。パターン認識の基礎理論を理解し、手法ごとの特性がわかっていれば、そうした場面において本質を捉え、効果的な対処を導き出すことができます。

―― 成果を上げるAI活用のモデル設計には、パターン認識の知識が必須ということですね。

そうです。機械学習のようなAI技術とパターン認識は切り離せない関係にあります。つまり、AI技術やAI活用について学ぶとなれば、パターン認識の勉強は避けて通れません。特に、業務課題に対してどのようにAIを適用するかという、AI活用のためのモデルを設計する立場にある人には必須となる知識だと思います。

パターン認識の理論を体系的に学びAI活用の素地を作る

―― 「パターン認識特論」ではどのようなことを学ぶのでしょうか。

まずパターン認識の基礎理論であるベイズ決定理論を解説し、識別器の設計方法について説明します。具体的には、最尤推定とベイズ推定、EMアルゴリズム、多層パーセプトロン、深層学習、サポートベクトルマシン、学習ベクトル量子化などを取り上げます。パターン認識の理論を体系的に学び、これまで提案されてきたさまざまなパターン認識手法を俯瞰的かつ統一的に理解することが、本講座の目標です。

数式をメインとした解説になるので、線形代数、微分積分、確率統計などの知識が前提として必要です。パターン認識に関するテキストとしてChristopher M. Bishopによる『Pattern Recognition and Machine Learning』(邦題『パターン認識と機械学習』)が有名ですが、これが読み進められるくらいの数学知識があると、本講座の理解が進むと思います。

―― 受講を検討している方へメッセージをお願いします。

もしかしたら「パターン認識特論」という講座名から、パターン認識の概要を学ぶ入門的な内容を想像されるかもしれませんが、本講座は5回にわたり基礎理論と手法をしっかりと学ぶカリキュラムになっています。入門ではなく、AI活用に必要な素地を作る場として本講座を活用いただければと思います。

講師プロフィール

佐藤 敦
NECバイオメトリクス研究所 主席研究員
関連情報:NECの研究者

略歴
1989年3月東北大学大学院理学研究科博士課程了(理学博士)
1989年4月NEC入社、中央研究所に配属
1994年3月~1995年3月米国ワシントン大学客員研究員
2008年7月~2008年12月米国マサチューセッツ工科大学客員研究員

受賞等
2017年第20回 画像の認識・理解シンポジウム MIRU優秀賞
2016年第19回 画像の認識・理解シンポジウム MIRU長尾賞
2016年FCV2016 Best Paper Award
2014年平成26年度全国発明表彰 発明賞「新しい学習方式によるパターン認識の発明(特許第3452160号)」
2013年第50回電子情報通信学会 業績賞「一般化学習ベクトル量子化によるパターン学習方式の開発と実用化」
2011年第25回独創性を拓く先端技術大賞 フジサンケイビジネスアイ賞「高精度顔認証の研究開発」
2011年情報処理学会喜安記念業績賞「高精度顔認証技術の研究開発」

社外講師
2007年~2010年群馬大学大学院工学研究科 非常勤講師
2016年~2020年東京大学大学院情報理工学系研究科 客員教授
2019年~京都大学大学院情報学研究科 非常勤講師