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2019年度(20年3月期)決算概要
19年度の業績に先立ち、一点ご報告させていただきます。
当社は本年3月に、SECにForm 20-Fによる当社普通株式の登録届け出書を提出いたしました。これは、当社株式の米国での売買・勧誘に対する制限の撤廃を目的として行うもので、SECによる審査を経て登録の効力が発生した場合、これらの制限の適用がなくなる見込みです。
また、Form 20-Fの提出と同じタイミングでパブリック事業を分割し、社会公共事業、社会基盤事業をそれぞれ独立した報告セグメントといたしました。今回の決算発表からは個々にご説明いたします。
Ⅰ.2019年度 決算概要
19年度の年間実績の全体像をご説明いたします。
売上収益は、全ての報告セグメントが18年度比で増収となりました。
調整後営業利益は、20年度以降の収益改善に向けた追加施策を実行いたしましたが、全ての報告セグメントで増益となりました。
調整後当期利益は、税引前利益の改善に加え、一過性ではありますが、税金費用が約200億円減少したことにより、増益となりました。
なお、好調であった19年度の業績をふまえ、期末配当は期初の予想から10円の増配となる1株40円とさせていただくことを本日の取締役会で決定いたしました。
19年度の業績はこちらにお示ししている通りです。
売上収益、調整後営業利益をはじめとする全ての指標で期初計画を上回る実績となりました。フリー・キャッシュ・フローは1,778億円の収入となり、18年度に比べて1,903億円改善いたしました。
調整後営業利益の18年度からの増減要因についてご説明いたします。
構造改革や資産クリーンアップ、将来の収益改善のための投資など、18年度に計上した一過性費用500億円がなくなったことに加え、これらの施策の効果として255億円を刈り取り、合計で755億円改善いたしました。加えて、19年度のビジネスPC特需による100億円の増益や、各セグメントにおける350億円のオペレーション改善効果もありました。
この結果、中長期的な企業価値向上に資する追加施策として270億円を計上したものの、期初計画を上回る業績を達成いたしました。
追加施策として計上した270億円の内容について、少し詳しくご説明いたします。3Q決算時に公表した施策分の105億円に加えて、4Qにグローバル事業、社会基盤事業を中心に165億円を追加で実施いたしました。
セグメント別の実績をお示ししています。
売上収益、営業利益ともに、電極事業売却の影響を受けたその他事業を除く全ての報告セグメントで増収となりました。また、期初計画比では、システムプラットフォーム事業、ネットワークサービス事業、社会公共事業の営業利益が上振れました。
国内における年間の受注動向をご説明いたします。18年度の大幅な伸長を考慮すると、総じて高い水準で推移しており、国内事業は良好な状態が継続いたしました。
はじめに社会公共事業についてご説明します。
売上収益は、自治体向けや医療向けのITサービスを中心に増加しました。
調整後営業利益は、売上の増加に加え、収益性の改善により増益となりました。
次に社会基盤事業です。
売上収益は、18年度にXバンド衛星などの大型案件があったものの、その他の航空宇宙・防衛向けの増加でこれをカバーし、全体では増収となりました。
調整後営業利益は、売上の増加に加え、収益性の改善、不採算案件の抑制などにより、増益となりました。
エンタープライズ事業です。
売上収益は、Office365を中心としたライセンスの商流変更による影響が190億円計上されていますが、この特殊要因を除いても、好調であった18年度の水準から1%の増収となっており、金融業向けがこれを牽引しました。
調整後営業利益は、売上の増加により増益となりました。
ネットワークサービス事業です。
売上収益は、5G導入を見据えた固定ネットワーク整備の活発化に加え、子会社のNECネッツエスアイの増加や、企業ネットワーク領域における一過性の大型案件の影響により増収となりました。
調整後営業利益は、NECネッツエスアイで一時費用が発生したものの、売上の増加や、18年度に計上した特定プロジェクトにおける一過性の損失30億円がなくなったことなどにより、増益となりました。
システムプラットフォーム事業です。
売上収益は、更新需要のあったビジネスPCの増加により、増収となりました。
調整後営業利益は、18年度に計上した構造改革費用の減少と構造改革効果に加え、ビジネスPCの大幅増に伴う利益増により、増益となりました。
グローバル事業です。
売上収益は、KMDの新規連結に伴うセーファーシティの増加や、18年度に受注が大幅に増加した海洋システムなどの増加により、増収となりました。
調整後営業損益は、18年度に計上した資産減損や構造改革費用などの一過性費用がなくなったこと、および構造改革効果などにより改善しました。
グローバル事業についてもう少し詳しくご説明いたします。
左の棒グラフは、グローバル事業に含まれる主要事業の売上規模のイメージです。
セーファーシティはKMDの新規連結により、18年度に比べ大幅増収となりました。また、海洋システムとエネルギーは、18年度の受注増を受けて増収となっております。
調整後営業損益につきましては、セーファーシティ、海洋システムが売上増により改善したほか、サービスプロバイダソリューション、ワイヤレスソリューションが収益性の改善により18年度比でそれぞれ改善いたしました。一方、エネルギーは売上が増加したものの不採算案件の計上により、また、ディスプレイも競争環境の激化により、それぞれ減益となりました。
グローバル事業の調整後営業損益の増減要因についてご説明いたします。
18年度に計上した一過性費用200億円がなくなったことに加え、50億円の構造改革効果を実現しました。加えて、オペレーションベースでも90億円の改善となり、18年度比で赤字を大幅に縮小いたしました。
一方で、期初の計画に対しましては、残念ながら未達となりました。課題事業における収益性悪化に加えて、4Qを中心に中南米での構造改革や資産のクリーンアップなど、収益・体質改善のための施策として約90億円を計上したためです。
最近、当社がM&Aを行ったNPS、KMDのPMI(Post Merger Integration)の状況についてご説明いたします。
NetcrackerでのPMIのノウハウを活用し、この両社のPMIも順調に推移しており、いずれも当社の利益拡大に貢献しております。また、買収した企業が追加的に行うボルトオンM&A案件も増加しており、さらなる利益拡大に期待しています。
フリー・キャッシュ・フローの状況です。
営業キャッシュ・フローは、調整後営業利益が759億円、期末債権残の回収や資産効率化などにより運転収支が約660億円改善しました。加えて、IFRS第16号の適用により約560億円の影響があり、これらを合わせて1,976億円の改善となりました。
一方、投資キャッシュ・フローは、18年度の事業再編の影響により165億円の改善があったものの、データセンター投資や創薬など新規事業への投資により約240億円悪化し、73億円の悪化となりました。
これらの結果、フリー・キャッシュ・フローは、18年度と比べ、1,778億円改善いたしました。
なお、IFRS第16号「リース」の適用により、2020年3月末のバランスシートでは、有利子負債が約1,750億円増加しております。
Ⅱ.2020年度 業績予想
売上収益は、3兆300億円を計画しております。
調整後営業利益は、5Gなどの投資増は見込まれますが、19年度に計上した一過性費用の減少と不採算案件の抑制により、2020中期経営計画の目標として掲げた1,650億円の達成を計画しております。
調整後当期利益は、122億円の悪化を計画しておりますが、19年度に税金費用が200億円減少した特殊要因があったため、実質的には増益となる990億円を計画しております。
フリー・キャッシュ・フローは、19年度には期首債権残高の増加という特殊要因があったため、278億円の悪化となる1,500億円を計画しております。
なお、配当につきましては、中間40円、期末40円で、前年度比で10円の増配となる年間80円を計画しております。
20年度の業績予想は、マクロ環境の変化に対して一定の強靭性を持つものとしております。新型コロナウイルスの影響についても、上期での収束を前提とした場合、一定程度の減収インパクトが想定されますが、各種の施策により、利益予想を達成することができると考えております。
セグメントごとの年間見通しについてご説明いたします。
売上収益は、ビジネスPCの更新需要の一巡が見込まれるシステムプラットフォーム事業と、ディスプレイ事業の非連結化を予定しているグローバル事業で減収を見込みますが、その他のセグメントはおおむね横ばいを想定しています。
調整後営業利益は、一過性費用の減少などにより、グローバル事業を中心に改善を見込んでいます。
フリー・キャッシュ・フローの状況です。
営業キャッシュ・フローにおいては、調整後営業利益の増加を見込むものの、19年度の期首債権残高の増加という特殊要因により運転収支の悪化が見込まれるため、119億円の悪化を計画しています。
また、投資キャッシュ・フローは、設備投資の増加などにより、160億円の悪化を見込んでいます。
これらを総合して、フリー・キャッシュ・フローは、前年同期と比べ、278億円の悪化を見込んでいます。
新型コロナウイルスの感染拡大への対応についてご説明いたします。
当社は現在の先行き不透明な環境をふまえて、キャッシュマネジメントを徹底した上で、費用コントロールと新たなビジネス機会の獲得によって業績へのインパクトを極小化してまいります。
危機下におけるキャッシュマネジメントの考え方についてご説明いたします。
まず、手元資金については、先般の無担保普通社債の発行に加えて、3,000億円を超えるコミットメントラインを通じて、万全の流動性を確保しております。同時に、資金投下先の優先順位付けを行い、不要不急の支出は抑制することを徹底してまいります。既に予算化した支出についても柔軟に対応していく考えです。
加えて、資産処分によるキャッシュ創出についても進めてまいります。政策保有株式を段階的に原則ゼロにする方針を定め、併せて売却可能な資産の洗い出しや債権の流動化を進めてまいります。
新型コロナウイルスの収束後、New Normalな社会に向けた考え方をご紹介いたします。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、現在、世の中ではデジタル化、リモート化、オンライン化、省人化、タッチレス化といった変化が急速に進んでいます。こうした変化は、まさに当社が培ってきた「DX」「生体認証」「AI」「5G」といった技術をフルに活かせる領域であり、これらの技術とお客様へのソリューション提供力を駆使して、New Normalな社会の実現に貢献できると考えております。
具体的な変化は、官公庁や自治体、教育・医療機関など、ここにお示ししている様々な領域において既に始まっており、今後、そう長くはない時間軸で急速に広がっていくと考えております。
New Normalに向けた取り組み例をいくつかご紹介させていただきます。
まずは、テレワークソリューションです。当社ではテレワーク環境の整備にとどまらず、セキュリティやAIを活用した問い合わせ対応ソリューションなど多様なサービスで足元のお客様のニーズにお応えしており、現在多くの引き合いをいただいています。
また、当社の顔認証技術を活かした新たなソリューションとして、マスクを外さずに顔認証が可能なシステムを開発いたしました。既にNECの本社ビルへの導入を済ませており、今年度上期中に製品化します。
さらに、新型コロナウイルスのワクチン開発に向け、当社のAI予測技術を活用して導き出した解析結果を提示し、ワクチンの開発加速を目的とした提携を開始いたします。
当社は、これらの取り組みが世界が直面する新型コロナウイルスという困難な課題を克服し、アフターコロナの新たな時代に貢献するものと信じ、取り組みを加速してまいります。
以上でご説明を終わります。