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N8370ATM (現金自動預け払い機)

高齢者、視覚障がいのあるかたも共用できる液晶タッチパネル式ATMです。
車椅子使用時の硬貨や紙幣取り出し口の見やすさ、荷物や傘を置くことへの対応など、現実的な利用シーンを想定し、使いやすさを向上させています。スライドモール(凸記号付きの画面外枠)を標準装備し、特別なハードキーなどを必要とせず、視覚に頼らない操作を実現しました。スライドモールは、UDに配慮したATMを実現するひとつの手法として自動販売機工業会の設計指針になりました。

製品写真
N8370ATM(現金自動預け払い機)のスライドモール外観

UD配慮のポイント

利用するうえでの柔軟性

  • スライドモールにより特別なハードキーなどを必要とせず、視覚に頼らずにタッチパネルを操作できる。※自動販売機工業会にて、スライドモールはATMにおけるUDに配慮するための設計指針になりました。
  • 弱視、高齢、白内障、色弱のかたにも見やすい大きな文字、色彩の画面。
  • 硬貨投入口に鏡を配置し、車椅子使用時の硬貨や紙幣取り出し口の位置を見やすくしている。

様々な使用環境や状況への配慮

  • 荷物や傘を置くことができる。

操作のしやすさ

  • 点字が読めない視覚障がいのあるかたも利用できるように、+(預金)、-(引出)などわかりやすい凸記号を設けています。

開発プロセス

ユーザー情報の理解と把握

ATMが利用しにくいことで特に問題になっている視覚障がいのかたや高齢者のかたの疑似体験をし、当事者へのヒアリング、オブザベーションを行いました。

体験写真
インスタントシニア体験
体験写真
車いす体験
体験写真
機器のバリアチェック

目標の明確化

  • オプションや特注品でなく標準装備であること。
  • 視覚障がいのあるかた、肢体不自由のかた、高齢者のかたなど、誰でも使いやすいこと。
  • 身体への負担が少ないこと。
  • 様々な体格や姿勢で使えること。
  • 手荷物なども邪魔にならないこと。
  • 着実に操作できること。
  • 様々な方法で操作に関する情報が知覚(知覚補助)できること。
  • 操作方法の理解が容易であること。

設計による解決

ヒアリング、オブザベーションの結果から、改善案を検討し、プロトタイプ(試作機)を制作しました。

プロトタイプ写真
触覚記号や凸文字などを変えたプロトタイプ

タッチパネルの画面インタフェース

設計段階から重度の白内障シミュレーションゴーグルで見やすさを確認しながら、高齢者のかたや弱視のかたの視認性を考慮して、画面デザインを行っています。大きな文字、高い色彩コントラストや、シンプルな操作の流れによって、誰でも利用可能なインタフェースをめざしました。

画面表示における色覚シミュレーション

色覚シミュレーションは、ソフトウェアを使う方法の他に、色覚シミュレーションゴーグルや、色覚シミュレーションディスプレイなどもあります。デザインを行う際には、配色の組み合わせによって見にくくなっていないか、情報が色に頼っていないかなどをチェックしながら行っています。

画面写真
バリアフリーモードの引き出し画面の色覚シミュレーション(見え方には個人差があります) 左から、第一色覚(緑が見えにくいかた)、第二色覚(赤が見えにくいかた)、第三色覚(青が見えにくいかた)の見え方

ユーザー評価

実際のユーザーによる評価を行い、フィードバックをもとに商品を完成させていきました。

ユーザー評価写真1
ユーザー評価写真2

触覚記号や凸文字のプロトタイプを視覚障がいのあるユーザーが評価している様子

ユーザー評価写真3
高齢者による画面デザインについての評価
ユーザー評価写真4
プロトタイプを使い、視覚障がいのあるかたが操作性を評価している様子

対象ユーザーによる最終商品の評価・改善提案

視覚障がいのあるかたに、画面と音声ガイダンスを含めたATMのプロトタイプ(試作機)の評価、および販売後の最終商品の評価をしてもらいました。

最終評価写真1
最終評価写真2

最終評価の様子

特徴

スライドモール

スライドモールはタッチパネルのボタンに対応して付けられた画面周囲の凹みのことです。
凹みには、点字だけでなく、触って識別できる触角記号が併記されており、ボタンの種類を確認することができます。
ユーザーは、スライドモールでボタンを確認し、そのまま指を滑らせることで、画面上のボタンを押すことができます。また、イヤホンを使って専用の音声ガイドを聴きながら操作することもできます。

タッチパネルの画面インタフェース

1.バリアフリーモード

できるだけ多くのかたが目で見て使えるよう、表示文字はかなり大きくしています。導入される銀行によって画面デザインは変わってしまいますが、基本の考えかたを示す画面として設計しています。主な配慮点は、下記3点です。

  • 画面周囲のスライドモールに対応したボタン配置。
  • 弱視、高齢、白内障、色弱のかたなどの見やすさを最優先にした、大きな文字や、高い色彩コントラスト。
  • シンプルな操作で誰でも利用可能。
画面写真
バリアフリーモードメニュー画面
画面写真
バリアフリーモードの引き出し金額を入力する画面

2.通常モード

通常モードの画面デザインでも、デザイナーは重度の白内障シミュレーションゴーグルを使って見やすさを確認しながら、視認性の高い画面を開発しました。主な配慮点は、下記3点です。

  • 高齢者のかたにも見やすい大きな文字や、高い色彩コントラスト。
  • すっきりした構成と操作のながれ。
  • 白内障シミュレーションゴーグルを使って開発。
画面写真
通常のメニュー画面
画面写真
通常の引き出し金額を入力する画面

使いやすさ向上のための工夫

現実的な利用シーンを想定し、使いやすさ向上の様々な工夫をしています。硬貨投入口に鏡を配置し、車椅子に座っていても硬貨や紙幣取り出し口の位置を見やすくしているほか、タッチパネル面の手前に段を付け、硬貨が転がり落ちることを防ぐとともに、傘の取っ手が掛けられるようにしました。

製品部分写真
紙幣取り出しの鏡に硬貨が映っている様子
製品部分写真
手前の段差に傘の柄が掛けられている様子

受賞、及び、出展記録

受賞歴

このATMで生まれたアイデアが認められ、以下の賞を受賞しました。

  • 1999年度 グッドデザイン賞 受賞
  • 2000年度 機械工業デザイン 特別賞

出展記録

2004年12月 ブラジル リオデジャネイロにて開催されたユニバーサルデザイン展(ATMの操作部のモックを出展)

モック写真
展示会出展用操作部モック

その他

このATMで生まれたアイデアを広く利用してもらいたいということと、様々な触覚記号表現ができることで利用者が混乱することを防ぐため、沖電気工業株式会社と協力して標準化の活動を進めました。現在はATMのバリアフリー基準の一つになっています。

資料写真
ATM触覚記号インタフェースガイドライン
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