サイト内の現在位置

全国ボッチャ選抜甲子園で沸いた夏!高校生たちの挑戦と成長の物語

特別支援学校などに通う中学生・高校生がチームを結成し、日本一を目指す「全国ボッチャ選抜甲子園」の決勝大会が2024年8月10日、東京・墨田区のひがしんアリーナで開催されました。ボッチャ甲子園の開催は今回で9回目。NECは、真夏に繰り広げられる熱戦を大会スポンサーとして支えています。それと同時に、ボッチャ甲子園に初参加の学校や生徒たちを応援し、今後もボッチャを楽しみ大会に挑戦してほしいという思いで、初参加の学校を訪問しています。今大会は名古屋特別支援学校が参加してくれました。

NECと日本ボッチャ協会のスタッフが名古屋特別支援学校を訪問。「全国ボッチャ選抜甲子園」に挑戦する参加校の応援企画で、生徒たちと交流しながらボッチャの楽しさを共有した

名古屋特別支援学校の挑戦〜エキシビジョンマッチにかけた思い

ボッチャ甲子園エキシビジョンマッチ。最後の投球、菅田さんの渾身の力が込められた球が、静寂を破りジャックボール手前でストップ。歓声が響く中、チーム全員の顔に喜びが溢れた。練習の努力が身を結んだ瞬間だった

ボッチャ甲子園決勝大会3位決定戦の前に開催されたエキシビジョンマッチ。「火ノ玉よりも熱く燃えろ! NECプレゼンツ 炎のチャレンジマッチ」と題されたこのイベントに参加したのは、名古屋特別支援学校に通う西垣葉太郎さん、奥田凌久さん、菅田雪人さん、松本侑樹さんの4人です。今年、ボッチャ甲子園に初出場したものの、予選で惜しくも敗退しました。ただ、「次年度以降もぜひチャレンジしてほしい」という思いからNECがお声がけをし、決勝大会のエキシビジョンマッチへの参加が実現しました。

ボッチャ甲子園エキシビジョンマッチ。火ノ玉ジャパンが見守る中、名古屋特別支援学校の生徒、松本さん(左)と菅田さん(右)が練習の成果を発揮する投球を披露

試合では、いつものチームメイトが2人ずつ2チームに分かれ、日本代表チーム「火ノ玉ジャパン」の唐司あみ選手や高橋和樹選手らも参加して始まりました。

0対1の1点リードを許す最終エンド、最後の1投を任されたのは、みんなから「キャプテン」と呼ばれている菅田さんです。プレッシャーのかかる場面で彼の放った青色のボールは、相手チームの赤色のボールを弾き、ジャックボール手前でストップ。大逆転の「ビッタビタ」スーパースローに会場から大きな歓声と拍手が巻き起こると、審判が2得点をコール。劇的な幕切れとなりました。菅田さんは試合後、最後の一投を成功させたことを「うれしかった」と笑顔が止まりません。同じチームだった西垣さんも「逆転で勝ててよかった!」と喜びを爆発させました。「これぞボッチャ!」と言える、魅力がたくさん詰まった試合でした。

ボッチャの魅力〜多様性を受け入れるスポーツの力

ボッチャで使用するボール

ボッチャはイタリア語で「ボール」を意味する言葉で、障がいの有無、性別、年齢に関係なく誰でも一緒に楽しめるのが特徴です。ルールが似ていることから「地上のカーリング」と呼ばれることもあります。試合で勝つには、ボールを正確に投げる技術が重要で、また、どこにボールを投げるか、あるいは対戦相手の特徴を見極めてゲームプランを組み立てる能力も重要です。頭脳戦も見どころで、重度の脳性まひ者や同程度の身体障がい者も活躍しています。

日本ボッチャ協会三浦裕子事務局長のポートレート
日本ボッチャ協会の三浦さん、子どもたちにもっとスポーツを
経験する機会を届けたいと思いを語る

ボッチャ甲子園を主催する日本ボッチャ協会の三浦裕子事務局長は、こう話します。

「障がいのある中学生や高校生が参加できる全国規模のスポーツ大会がかなり限られています。そのなかで、子どもたちがスポーツを経験する機会を作りたい。そう思ってボッチャ甲子園を続けてきて、今年で9回目になりました」

「一緒があたり前の社会にする」。それが日本ボッチャ協会の理念で、今大会に出場した学校の数は43校にのぼります。そして、さらにもっと多くの子どもたちに大会に参加してもらうために、全国の特別支援学校に「応援訪問」してボッチャ講座を開催しています。

名古屋特別支援学校に訪れた変化〜NECとボッチャ協会の応援訪問

日本ボッチャ協会の矢作さんが、生徒たちに点数の数え方を教える

今回、エキシビジョンマッチに参加した名古屋特別支援学校は、7月にNECと日本ボッチャ協会の応援訪問を受けました。

講師は、日本ボッチャ協会の矢作公佑さん。スタッフとして、NECボッチャ部からも2人が協力しました。火ノ玉JAPANのキャプテン内田峻介選手は、大会直前の時期にもかかわらずオンライン中継を通じての交流タイムに参加してくれました。生徒たちとの対話では、練習の方法、プレッシャーがかかる場面でどうやって心を落ち着かせるのかのアドバイスを受け、内田さんからは最後に、「仲間と一緒に練習できることはうらやましい。またいつかどこかで会いましょう」とメッセージが送られました。この日の練習試合は2試合。松本侑樹さんは、「1回目より2回目の方が緊張した」と笑顔で振り返り、奥田凌久さんは「試合は最後の最後までわからないので、あきらめずに頑張りたい」と話してくれました。

オンラインで、火ノ玉JAPANのキャプテンの内田選手からボッチャの上手くなるコツを教えてもらう名古屋特別支援学校の生徒たち

名古屋特別支援学校の北島淳校長は、応援訪問の様子を「恥ずかしがり屋の子も、いつもは見せない表情で楽しそうですね」と終始にこやかな表情でした。また、「車いすの子も、そうでない子も、一緒の舞台でゲームを楽しめるのがボッチャのいいところ。普段、この子たちには他人と何かを競う機会が少ないため、スポーツを通じて誰かと一緒に練習し、競い合う楽しさを感じてほしい」と話します。

チームを引率する岡本暁子教諭は、ボッチャを通じた子どもたちの変化について、こう話します。

「今年の4月に(菅田)雪人くんが声をかけてくれて、チームができました。学校以外でも、休みの日にはご両親の協力で一緒にいろんな場所で練習していて、日々成長を感じていました。スポーツの試合ならではの緊張感もボッチャでないと味わえないし、ふだんは話すことが苦手な子も楽しんでいて、私の知らなかった新しい一面を見せてくれています」

NECボッチャ部と日本ボッチャ協会のスタッフが名古屋特別支援学校を訪問。「全国ボッチャ選抜甲子園」に挑戦する参加校の応援企画で、生徒たちと交流しながらボッチャを楽しんだ

NECが支える未来〜一緒が当たり前の社会を目指して

日本ボッチャ協会の三浦事務局長は、NECと共に行う応援訪問について、「私たちだけの力では訪問できない学校を一緒に行っていただき、ありがたく思っています。今後は、もっと障がいが重い子どもにもボッチャ甲子園に参加してほしいと考えています。それに向けてどのような大会運営をしていけばいいのか、次はそれを考えていきたいと思います」と語ります。

名古屋特別支援学校でボッチャコートを作るNECボッチャ部のメンバー

NECがPurpose(存在意義)に掲げる「誰もが人間性を十分に発揮できる社会の実現」。それは、「一緒があたり前の社会にする」を目指す日本ボッチャ協会の想いと共通したもの。NECは、今後もボッチャの応援を通じて、誰もが夢を抱き挑戦できる環境づくりに貢献していきます。

写真/越智貴雄(カンパラプレス)・文/西岡千史