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NEC、都市部における複数の道路・ビル等の老朽化検査を可能にする衛星レーダを活用した「2次元微小変位解析技術」を開発

2018年7月20日
日本電気株式会社

NECは、都市部において老朽化する道路・ビル等のインフラ構造物の健全性を診断するための検査手法として、2つの衛星レーダによる変位解析を統合し、水平垂直両方向の2次元変位を高精度に解析する「2次元微小変位計測技術」を開発しました。本技術はインフラ構造物ごとの個別検査を可能とし、コストのかかる詳細検査導入の判断に活用できます。これにより、インフラ構造物における予防保全の効率化に貢献します。

現在、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で行われている衛星レーダ(合成開口レーダ:SAR、注1)による微小変位解析技術(注2)が有望とされ、実用化が進められています。しかし、構造物に当てたレーダの反射点が、ビルなどの密集した場所ではどのインフラ構造物のものか判別しづらく、ニーズの高い都市部での適用が困難という課題がありました。

今回開発した「2次元微小変位解析技術」では、NEC独自の反射点クラスタリング技術(注3)により、この反射点とインフラ構造物の判別を可能とし、個別に高精度な変位解析を可能にしました。
さらにNECは、本技術による解析を都市部埋立地の地盤沈下計測へも適用し、高精度に解析できることを確認しました。手動測量による水準点(注4)の地盤沈下結果をもとに評価し、平地域(郊外)、都市部ともに誤差を40%低減しました。

NECは2020年度までの3カ年の中期経営計画「2020中期経営計画」においてセーフティ事業をグローバルでの成長エンジンに位置づけています。本技術は、「NEC Safer Cities」実現に向けたソリューションやサービスの開発を加速・強化するものであり、安全・安心な街づくりに貢献していきます。

背景

昨今、インフラ構造物の老朽化対策として、その危険個所を検知して事故やトラブルを未然に防ぐ、予防保全への要求が高まっています。しかし、インフラ構造物の詳細検査はコストや、一度に実施可能な数が限られます。都市部のような膨大な数のインフラ構造物の状況を効率的に把握するために、広範囲を網羅的に把握可能な費用負担が軽いスクリーニング検査の実施が望まれています。

現在、衛星レーダを用いた微小変位解析技術がスクリーニング技術として開発・実用化されています。しかし都市部のような、高さの異なるインフラ構造物が複雑に立ち並ぶ場所では、高精度に計測ができず2次元解析結果に大きな誤差が発生するという問題がありました。

今回開発した、「2次元微小変位解析技術」は、NEC独自の反射点クラスタリング技術により、都市部においても数ミリ単位という高精度な変位解析を実現します。これは、詳細検査に進むべきか判断するための一次検査として非常に有効な手段となります。

拡大する図1:「2次元微小変位解析技術」の全体像

2次元微小変位解析技術の特長

  1. インフラ構造物ごとの変位解析を可能にする反射点クラスタリング
    同じ構造物に属するレーダ反射点をクラスタリングすることにより、構造物ごとの水平垂直両方向の2次元変位解析を可能にする新しい手法を開発しました。新手法では、構造物を剛体(コンクリートの塊など)の集合体と見なします。反射点の変化の類似度と位置に基づいて、反射点をクラスタリングすることにより、抽出された反射点を剛体ごとに分離・判別することが可能となります。
  2. 2次元変位解析に適した、地図情報に基づく正しい対応付け
    剛体ごとに分離・判別された反射点クラスタの形を利用すれば、地図情報と照合ができるようになります。これにより、実際の構造物との対応付けが可能となり、異なる方向から観測した反射点解析結果の対応付けも正しく行うことができます。
  3. スクリーニングを容易にする高精度な2次元変位解析
    正しい対応付けに基づく2次元解析結果により、変位解析の精度が向上しました。例えば、図2に示す都市部埋立地の2次元解析結果例において、従来手法で反射点を無理に対応付けた場合、一部の反射点が周囲と異なる上昇方向に変位しているように見えるため、詳細検査をするか検討作業が必要です。これに対して新手法では、正しい対応付けにより解析の精度が向上した結果、全体が均一に沈下し、異常な変位が無いことが分かり、詳細検査は不要と容易に判断できます。

以上のように、本技術による変位解析の精度向上は、スクリーニングの信頼度を高め、IoT、ロボット技術、レーザ計測技術などに基づくさらに詳細な検査技術の導入判断を無駄なく行うことができるなど、老朽化する都市インフラの予防保全を効率化するために大きく貢献します。

*黒い領域が海で、明るい灰の領域が埋立地。運河を隔てて2つの埋立地がある。
図2:新手法により都市部埋立地の変位を解析した例

NECは本技術を、インフラの老朽化診断だけでなく、工事による地盤沈下の監視、大規模プラントの監視など、様々な領域の変位解析に応用するために実証・実用化を進めます。今後もNECは、リモートセンシング技術を含めたインフラ診断技術の開発に積極的に取り組んでいきます。

なおNECは今回の成果に関して、リモートセンシング関連の国際学会「IGARSS (International Geoscience and Remote Sensing Symposium)」(会期:7/22(日)~7/27(金)、会場:スペイン バレンシア)にて発表を行います。URL: https://igarss2018.org/

以上

  • (注1)合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar):
    地球を周回移動する衛星の動きを用いて、レーダアンテナの大きさ(開口長)を実質的に巨大化することにより、高解像度なレーダ画像を得る技術。例えば、NECの小型レーダ衛星ASNARO2では地上数百キロの高さから解像度1m程度の高精細な画像を得ることができる。ただしレーダでは距離のみを計測するため、得られるレーダ画像は光学カメラによる画像と比較すると歪んでいるように見える。
  • (注2)SARによる微小変位解析技術:
    定期周回するレーダで地上をレーダ観測した際に得られる、地盤や道路などの構造物にある反射点(散乱点ともいう)からなるレーダ画像を利用した変位解析技術。定期的に観測した数十枚のレーダ画像における安定な反射点を単一構造物に由来すると見なし、時系列解析することにより、地盤や道路について一年あたりミリ程度の微小な変位を計測することが可能。1つの衛星による変位解析技術は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」開発技術チームにおいて「高精度かつ高効率で人工構造物の経年変位をモニタリングする技術の研究開発」として研究開発され、実用化が進んでいる。
  • (注3)反射点クラスタリング技術:
    レーダの反射点を反射点の性質によって分類しまとめる技術。例えば、反射点が存在する場所の種類、例えば土地利用状況などを推定するために用いる。
  • (注4)水準点:国土地理院、地方公共団体が設置・管理する、標高観測点。

2次元微小変位解析技術について

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